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foodpandaの日本事業売却へ、業界再編に発展も

2021年12月23日 (木)

フードフードデリバリーサービス「foodpanda」(フードパンダ)を展開する独Delivery Hero(デリバリーヒーロー)は22日、フードパンダの日本事業(foodpanda Japan)を2022年第1四半期にも売却すると発表した。

デリバリーヒーローは、グローバルに展開していたフードパンダ事業の方向性を見直し、首都ベルリン中心部を除く事業の縮小を決定。日本事業も売却することとした。代わりに、クイックコマース事業などに経営資源を集中させることで、成長戦略を再構築する。

デリバリーヒーローのフードパンダ事業をめぐっては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配需要の高まりを反映して事業を拡大。国内外の主要都市を中心に、宅配対象地域を広げたが、宅配ビジネスの競争激化に伴い、配達員の確保を含めた課題も顕在化。収益を拡大できる見通しが立たなくなったことから、事業の縮小とポートフォリオの刷新に踏み切った。

デリバリーヒーローは、日本におけるフードパンダ事業を20年9月に開始。日本法人のDelivery Hero Japan(東京都港区)が、全国の政令市や県庁所在地を中心に事業を展開。飲食店のメニューを自宅に届けるサービスを前面に出すとともに、食品・飲料や生活必需品など幅広い宅配需要に対応した「q(キュー)‐コマース」で他社サービスとの差別化を図ってきた。1年半での撤退となる。今後は、事業の売却先の選定や展開地域の見直しなど、曲折も予想される。

業界再編の呼び水になるか、フードデリバリー事業が成熟する契機に

消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズが生み出したフードデリバリーサービス業界で、いよいよ淘汰が始まった。フードパンダがビジネスの大幅な縮小に踏み切った背景には、参入者が急増する一方で市場がそれほど拡大しなかった事情がありそうだ。

日本でも、ピザなどの宅配サービスはすっかり定着している。そもそも、そば店や中華料理店の「出前」は、古くから存在する定番のサービスだ。しかし、レストランメニューのデリバリーは、衛生観点が極度に敏感な日本の消費者には広く普及しなかったのではないか。あくまで緊急事態宣言の発令時など「一時的」なニーズにとどまった印象もある。

(出所:Delivery Hero)

フードパンダは、飲食店のフードメニューだけでなく、生活必需品など幅広いラインアップで他の宅配サービスと差別化を図り個性を出そうとした戦略も、結果的には特徴を明確に打ち出せず不発に終わった感が強い。「なんでも頼める」はずが、逆に「何を頼めるのか分からない」サービスになってしまったのであれば、何とも皮肉な話だ。

フードデリバリー業界は、今回のフードパンダの事業縮小を契機として、業界再編の動きが一気に加速する可能性もある。過当競争気味な市場の一角が崩れ始めたことで、ドミノ式に撤退や買収に踏み切る事業者が続出する可能性もある。

フードデリバリーは未だ未成熟な市場であり、「新しい生活様式」のなかで成熟していく過程で、プレーヤーの合従連衡やサービス内容の取捨選択がさらに進むことで、消費者とプレーヤーの需給が引き締まっていくのが理想の姿だ。そこで初めて、新次元のビジネスが生まれるであろうと考えるからだ。(編集部・清水直樹)