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21年死傷者14万超、16%と大幅増

「陸上貨物運送」労災死傷高止まり、荷役作業が7割

2022年3月8日 (火)

調査・データ2021年の1年間の労働災害による死傷者数が14万3156人にのぼり、新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年比16%の大幅増となったことが、厚生労働省の速報値で明らかになった。なかでも、物流関係者が多くを占める「陸上貨物運送事業」における死傷者が1万6171人で6.4%増と、全産業9業種のうち3番目に多く、高止まりしていることが分かった。厚労省などは、陸上貨物運送事業における死傷者の7割を占める荷役作業での安全対策を呼びかけるポスターを作製し、災害防止を呼びかけている。

▲陸上貨物運送事業における労働災害発生状況の推移[出典:労働者死傷病報告(休業4日以上)、死亡災害報告※2021年のみ速報値]

ポスターは2021年1月、同省と陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)が、陸上貨物の荷主や配送先、元請事業者などを対象に作製。労災の傾向として、過去10年間で増加の一途をたどっているほか、陸上貨物運送事業での発生率が他業種の4倍であること、荷役作業中に墜落(転落)するなどして、死傷者の半数が休業1か月以上を強いられるなど、重篤に至るケースが多いことを説明。また、陸上貨物運送事業における労災発生場所のうち、7割が荷役作業場所で起きていることも分かった。

ポスターでは、こうした災害防止のためには、陸上貨物運送事業者だけでなく、荷主などの取り組みが不可欠であることを明記した、13年作成の「荷役作業の安全ガイドライン」に基づく、荷役作業における安全対策について3つの重点ポイントで改めて説明している。

1つ目のポイント「貴社の荷役場所を安全な状態に」では、荷物の積み降ろしや運搬機械、用具などを使用するための十分な広さを確保することや、十分な明るさで作業すること、到着時刻の分散など混雑緩和の工夫を行うこと、荷物や資機材の整理整頓を図ること、風や雨が当たらない場所で作業することを呼びかけている。

2つ目の「墜落、転倒、腰痛等の対策」では、手すりやステップ、墜落制止用器具取り付け設備の設置などといった墜落や転落を防ぐ対策を図ること、つまずきやすかったり滑りやすかったりする場所の対策を図ること、人力で荷物を扱う作業では、できるだけ機械・道具を使用することとしている。

3つ目の「陸運事業者との連絡・調整」では、荷役作業を行わせる陸運事業者には、事前に作業内容を通知すること、荷役作業の書面契約を行うこと、配送先における荷降ろしの役割分担を安全作業連絡書などで明確にすること、安全な作業を行うことができるよう余裕をもった着時刻を設定することを求めている。

(出所:陸災防)

さらに、東京・亀戸労働基準監督署の管内における労災防止に向けた取り組みの好事例として、墜落・転落防止として昇降台を導入したり、三点支持を徹底したり、腰痛・転倒防止として準備体操を取り入れたりしている事業所を紹介。

労災が最も起きやすい荷役作業場所での安全点検を行い、作業場所の改善や作業者への指導に役立てられるようチェックリストも添付。荷主などに活用を呼びかけている。

陸災防チェックリスト