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オフィス移転に84%「満足」、コロナ禍特有の理由も

2022年3月29日 (火)

調査・データオフィス移転に84%「満足」、コロナ禍特有の理由も――。アート引越センターがまとめた「新型コロナウイルス禍のオフィス移転にかかわる実態調査」によると、コロナ禍に移転した企業のうち84%が「オフィス移転に社員は満足している」と回答した。理由として、以前と比べたオフィスの広さやきれいさ、通勤時間の短縮に加えて、在宅勤務の普及や非対面コミュニケーション機会の増加などコロナ禍ならではの回答もあった。

感染症拡大を契機に従来の働き方にとらわれない勤務形態が広がるなか、オフィス機能に対する従業員のニーズも多様化している傾向が浮き彫りになった。同研究所は「企業は多様化する働き方に柔軟に対応していくことが、アフターコロナの移転でも重要視される」と分析している。

(出所:アート引越センター)

オフィス移転について、全体の47.5%がコロナ禍の影響があったと回答。84.0%が「オフィス移転に満足していると考えていると思う」とした。その理由をみると「オフィスが広くなったから」が50.0%で最も多く、「オフィスがきれいになったから」(46.4%)、「通勤時間が短縮したから」(25.0%)との回答が上位を占める一方で、「テレワークが浸透・普及したから」(25.0%)、「社内コミュニケーションの機会が増えたから」(14.3%)など、コロナ禍をきっかけとした変化を挙げる回答も目立った。

移転した理由に関しても、家賃削減(38.0%)やオフィス環境の整備(31.0%)だけでなく、多様な働き方に適した職場づくり(26.5%)やテレワークの普及による空きスペースの解消(19.5%)といったコロナにかかわる回答が散見された。さらに、移転をきっかけに新たに整備した設備や制度について尋ねると、社員同士のコミュニケーションを活性化させるフリースペース(38.0%)が最多で、テレワーク導入(35.5%)、オンライン会議専用スペース(29.0%)が挙がった。

「テレワーク率が現在60%以上」と回答したのは全体の15.0%にとどまった一方で、将来的にテレワーク率を増加させたいとしたのは33.0%と多数を占めるなど、アフターコロナ後もニューノーマルが定着していく可能性を示唆する結果となった。

調査は、同社のシンクタンク「0123引越文化研究所」がことし2月上旬に実施。コロナ禍の2020年1月以降にオフィスを移転、または移転が決まっている企業の総務や人事の担当者計200人に尋ねた。

就業スタイルの変化、それは引越業界のビジネスモデルを変革する“好機”に

新型コロナウイルス禍は、多様な働き方の可能性を一気に広げた。その象徴が、いわゆる「オフィスにこだわらない就労スタイル」の定着だろう。「従業員がオフィスに集まらなければ、コミュニケーションが取れず業務の遂行が難しい」という固定観念は、コロナ禍による在宅勤務などテレワークの導入で打破された。引越業界は、こうした「新しい生活様式」の時代を迎えて、新たなビジネスを創出できる余地が生まれたと言える。

(イメージ)

生活様式の変化に応じて生じる欲求、それは「住環境」「職場環境」のリニューアルだ。在宅勤務を前提とした住環境や職場のレイアウトを考案するには、当然ながら従来と異なる発想が必要となる。そもそも、室内の模様替えだけでは対応できないケースも出てくる。引越事業者のなかには、こうした就業環境の変化に対応したレイアウト変更や、移転の相談に応じるコンサルタントサービスに取り組む動きも広がってきた。

引越業界は、ともすれば大手から個人経営まで多くの業者が入り乱れ、サービス品質だけでは差別化を打ち出せず価格競争の卓越する状況が続いていた。しかし、コロナ禍を契機として、業界が提供できる「価値」を見直す好機となったのは間違いないだろう。裏を返せば、新たな環境下での企業間競争が始まったとも言えるのだ。引越ビジネスは「就業環境改善ビジネス」として、新たな需要に対応していく。そこで新規参入を含めた活性化が進めば、適正価格に基づく成熟した差別化競争が展開され、必然的にサービス水準の安定化につながると期待したい。(編集部・安本渉、清水直樹)