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物流現場を熟知した創業者が生んだ「スムーズ」な機能で待機車両をなくす

ロジクリエイト、コンサル発のバース管理システム

2022年4月19日 (火)

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話題東京都江戸川区。荒川の東岸に広がる船堀地区の一角にあるオフィスビルに、その会社はある。中に入ると、コンパクトな事務所の会議室で商談が繰り広げられていた。「我が社の物流センターで、荷待ちのトラックが敷地外にあふれて困っています。近所の住宅地から何度も苦情が来ているんです」「まずは、物流センターの抱える課題を抽出することが先決ですね」――。

物流コンサルタント事業を手がけるロジクリエイト(東京都江戸川区)。設立は2015年6月、大手物流企業で20年にわたって主に3PL事業の営業畑を歩んだ武田浩一社長が、荷主と物流事業者の双方にとって最適な物流現場を作りたいとの思いから、物流コンサルタントとして起業に踏み切った。

コンサル発で「新しい風を巻き起こせ」

ロジクリエイトは、新物流センターの全体設計や改善を得意とする物流のコンサルタント企業である一方で、ITベンダーとしての側面も持ち合わせている。武田社長は、倉庫やマテハン、作業だけでなく、システム設計、物流ネットワークなど物流拠点に関わる全体の設計を担った経験をもとに、ロジクリエイトの信条として定めたのが「荷主と物流事業者の双方にとって最適な物流を構築したい」。そのためには、物流技術力をもったエンジニアリングコンサル企業がその役割を果たせると信じた。

▲ロジクリエイト社長の武田浩一氏

実際、荷主や小売業の物流部門は頻繁に物流センターを構築することがないため、ロジクリエイトのような全体設計をサポートできる企業を必要とする声は少なくない。創業して8年目を迎えたロジクリエイトは、同志である社員も10人を超え、依頼する企業も年々増加傾向にあるという。「泥臭く現場感をもって、こうした物流部門の皆様の下支えになっていきたい」(武田社長)

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起業して間もなく、物流センターの課題として、入荷車両のコントロールが難しく待たせたくはないが相当なトラックを長時間待機させてしまっている現状に着目。「外食チェーンのような予約システムで、早いもの勝ちの商習慣を打破できないか」。調べてみると、そのようなシステムは存在しないことがわかった。それならば、これは自分たちで開発するべきだと決断。信頼できるシステムエンジニアとタッグを組み、3年間の歳月をかけて2018年9月の「国際物流総合展2018」で初公開した。

システム名は「Li-SO」(リソ)。ロジスティクス・イノベーション-スムース&オペレーションの略称で、スペイン語で「スムーズ」を意味する。「この業界に新しい風を巻き起こしたい、物流現場やトラックの動きをスムーズにしたい、との思いを込めました」(武田社長)

開発コンセプト

開発に着手したはいいが、当時は前例のないシステムであることもあり、設計には時間を要した。「物流の現場を熟知していても、なぜこの時間にこの納品車両をこのバースに荷下ろしさせるのか、どんなロジックで車両を誘導しているのか、はたまた予約する側はどんな予約を誰にしてもらうべきなのか、など当たり前に動いている現場状況のロジックを解明できず、開発は難航しました」。ここを乗り越えるのが最も難しかったと、武田社長は振り返る。

また、物流センターのWMS(倉庫管理システム)の機能次第で作業生産性が大きく影響をすることを経験した武田社長は、機能不足で現場に迷惑を掛けるシステムであってはならないとの信念から、「Li-SO」のコンセプトを決めた。「様々なセンター運用にシステムが合わせられること、センターごとに出来るだけカスタマイズできること。契約企業ごとにサーバー区分けし、URLを個別に設定する新しいSaaS型のシステムとしました」。結果としてユーザー固有仕様変更の制限などSaaS型の弱点を払拭することで、カスタマイズ等の拡張性が高いシステムサービスを実現した。

▲「Li-SO」のサービスフロー

物流センター、荷主、運送会社の情報連携がLi-SOの真髄だ

バース管理システムにおいて、武田社長が配慮しているポイントがある。納品される物流センター、そこに商品を納品する荷主、その荷主から運送を委託された運送会社の3社の情報連携と共有だ。

Li-SOは、物流センター側が予約IDを荷主(プライマリユーザー)に付与し、荷主が運送会社(セカンダリユーザー)へ予約IDを付与する。このように2階層の予約IDの活用により相関関係を持たせ、予約情報や納品状況を共有できるように構築している。

ファーストユーザーとなった中京圏基盤の大手小売業バロー社を例にすると(図A)、IDを付与された荷主(メーカー)は、委託している複数の運送会社の予約から納品までの進捗を閲覧できる。運送会社はドライバーへ予約IDを付与することも可能で、もちろんドライバーが予約した状況を運送会社や荷主も把握することができる。

▲バロー社の事例

さらに、予約IDを持ったユーザー(荷主、運送会社、ドライバー)全員が予約をすることができ、物流センター側はだれが予約をしたのかを把握し、トラブル時の円滑な連絡体制を取ることができるのも特徴だ。

「近い将来、物流センター側はLi-SOによるピラミッド型の情報ネットワークを手に入れることで、伝票レスなどさらなるDX(デジタルトランスフォーメーション)化を目指せる」と武田社長は構想する。

物流センターが「主役」となるシステム

「Li-SOを利用する主役は誰か。それは物流センター側であるべきだ」。開発にあたり、武田社長は物流センターを運営する方々にとって必要な機能は何か、どのようなシチュエーションがあるかを徹底的に洗い出した。

荷受けしたいバースへ車両を誘導するキーは「商品の種類」「荷物の降ろし方」「車種」「荷受けの時間帯」の4つだ。荷下ろし時間も無制限で予約をされることがないよう、その制限をかけることが必要だ。もちろん曜日によって、荷受け時間帯やバース数を変えることも想定している。

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さらに、早いもの順で予約を取られないように予約開始日時を設け、逆に早く予約をとってもらいたいユーザーへは、優先予約権や専用バース設定も搭載した。

ほかにも、複数の荷主を積載する共配便への対応や、物量が多くなる年末年始などの期間だけ納品可能なバースを増設し、閑散期にはバースを絞れる機能も採用するなど、あらゆる場面を想定した数多くの機能を実装している。

開発者としてあらゆる物流現場ニーズに対応したシステムに仕上がった。「導入の際は、ロジクリエイトのコンサル部隊が物流センターの実情や運用を把握し、初期のマスター設定やパラメータの設定などLi-SOの活用における手厚いサポートを行っているため、納得の導入成果が得られると考えています。何よりも大切なのは、導入数よりも導入企業様の満足度。本格的なバース管理システムの導入を検討した場合には、是非ロジクリエイトに声をかけていただきたいですね」(武田社長)

Li-SOはさらに進化する

物流のプロとしてこだわって開発したLi-SO。しかし、企業規模から販売力に劣るため、現時点では知名度が決して高いとは言えない。とはいえ、バース管理システムの導入はこれから加速すると武田社長は考えている。システムの利用度や知識が増えることで顧客の機能要求が高まり、Li-SOの機能を求める企業も増えてくると分析。個別な要求に対応したカスタマイズを行い、運用方法まで設計できる事ができるのは当社の強みだと自認している。

武田社長が描く、ロジクリエイトのビジネス展開におけるLi-SOの位置付けは異なる。「Li-SOで入手した貴重な納品実態データは、導入頂いた企業の固有の財産。その企業の益になる生かし方をするべきであると思います」。ロジスティクスDX関連企業のようなデータプラットフォーマーになることが目的ではなく、あくまで物流現場のスムーズな運用を進めるためのコンサルティングが本来の仕事なのであり、その手段の一つにLi-SOが存在するのだ。

実際、大手通信企業とタッグを組み、物流センターのWMSとの連携や、トラックの積載荷物に関わる情報をLi-SOに反映させることで、トラックごとに検品できる新機能を模索しているという。

武田社長には、将来の夢がある。「どうしたらこの世の中から『もったいない物流』を無くせるか。それは物流リテラシーを上げ、商流との領域を分かち合う(融合する)物流の仕組みを構築すること」だと断言する。そのためにも、開発したいテーマは無限にある。自社物流なのか、委託物流なのか。物流サービスとは何か。必要な自動化、システムはどのようなものか。そもそも物流コンサルティングとはどうあるべきか――。思案は尽きない。

Li-SOも、こうした目的を実現するための一里塚であり、このような夢のある企業が、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化をより実効的なものとすることで、サプライチェーンを支えていくのだ。

ロジクリエイト会社HP
Li-SOサービスページ
■トラック予約受付システム特集