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山陽道トラック火災、最高裁がメーカー責任認める

2022年4月20日 (水)

(出所:東和運送)

事件・事故大型トラックで高速道路を走行中にエンジンから出火したのは車両の欠陥が原因だとして、東和運送(大阪府寝屋川市)が車両を製造したいすゞ自動車などに総額1億円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁は19日、いすゞ自動車側の上告を棄却する判決を言い渡した。運送事業者が車両メーカーの責任を追及する裁判を起こす事例は極めて珍しい。さらに、運送事業者の主張がほぼ認められる形で判決が確定するという異例の事態で終結したことで、業界に衝撃が広がりそうだ。

火災は広島県東広島市の山陽自動車道で2012年7月に発生。走行中だった東和運送の所有するトラックのエンジンが突然破損し、漏れ出したエンジンオイルに引火して車両と積荷が全焼した。

(出所:東和運送)

東和運送は、エンジントラブルを誘発した車両の欠陥が火災の原因だと主張し、いすゞ自動車の責任を追及。一方のいすゞ自動車は、車両の使用状況やオイルの劣化など整備・点検に問題があったことが出火原因であり車両の欠陥ではないと反論した。

双方の主張は平行線をたどったことから、東和運送は14年4月に製造物責任法に基づきいすゞ自動車を相手取り提訴。1審の大阪地裁は、整備不良が火災の原因として東和運送の請求を棄却した。

ところが2審の大阪高裁は21年4月、東和運送の訴えを退けた1審の大阪地裁判決を棄却し、一転していすゞ自動車に9400万円の支払いを命じる判決を出した。いすゞ自動車は2審判決を不服として上告したが、最高裁は2審判決を支持し上告を退けた。

社会に不可欠なインフラの現場を守る画期的な判決だ

運送事業者にとって、まさに画期的な判決だろう。トラック輸送業者がメーカーに欠陥を指摘し、それが司法の場で認められたのだ。車両メーカーは、こうした判決を重く受け止めて、顧客の要求により真摯な対応を求められることになる。いわば、今回の最高裁判決は、顧客である運送事業者と車両メーカーの「適正な関係」を求めたと言える。

物流事業者が車両の不具合で損害を被ったとしても、それをメーカーに訴えることはタブー視されてきたのが実情だ。なぜなら、たとえ司法の場で争ったとしても、その争点が車両の専門的な構造面に及んだ場合、車両のすべてを把握するメーカー側に分があり、運送事業者側の言い分が通るのは難しいためだ。物流事業者は決してトラックという「精密機器」の専門家ではないのだから、当然なのだ。

「その結果、大半の事業者が泣き寝入りのごとく和解に甘んじてきた。今回の最高裁判決を契機として、車両トラブルの責任をメーカーに求める機運が生まれる可能性もある」。ある運送会社のトップは、今回の判決がもたらす成果についてこう指摘する。

車両を提供する立場である自動車メーカーは、ともすれば優位な立場で運送事業者のこうしたトラブルの指摘を受け止めてきた印象もぬぐえない。資本力の違いは大きく「身の程知らず」と揶揄されるケースだったはずだ、今回の判決までは。

東和運送が果敢にも争訟に持ち込んだ背景には、社会に不可欠なインフラを担う物流事業者としての矜持があったのだろう。それは、物流現場を担う従事者の総意である。自動車メーカーの真摯な姿勢が問われることになる。(編集部・清水直樹)