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「危険物倉庫緊急サミット」迫真レポート/第4回

2022年5月27日 (金)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)が5月19日開催したオンラインセミナー「危険物倉庫緊急サミット」の迫真レポート。第4回は、危険物倉庫が足りない現状に対する方策について考えます。


<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
ここまで、危険物倉庫の不足している原因について、皆様にご意見をうかがいました。こういった原因で危険物倉庫が新しく開発・建設していくのにハードルがある一方、需要は高まっているということがわかりました。

それでは、どうすればいいのでしょうか。再びお手元のフリップを使っていただき、先程みなさんに危険物倉庫の不足の原因をお話しいただきましたが、今度はその対策についてお書きいただければと思います。

LOGISTICS TODAYは危険物倉庫について、ご紹介したアンケートの10倍ほどの質問を用意しております。そのなかで「危険物倉庫は港湾部じゃないとだめ、内陸部はだめなのか」との問いに対し、「そう思う」との回答がたくさんありました。あるいは、新規参入をしたいが事実上、既存で先行している事業者とのパイプがあったりなかったり、いろんなことが障壁になっている面もあるようです。

ではみなさん、どんな対策が必要になってくるかということで一斉にオープンをお願いします。賃貸の活用、連携プレー、シェアリングエコノミー、危険物3PL(アウトソーシング)、マッチング。さまざまなご回答をいただきました。

危険物倉庫の不足に対する対策について、まずは三和建設の松本さん。お答えいただいた「マッチング」とはどういったことでしょうか。

危険物倉庫を「建てたい人」「建ててほしい人」のマッチング

<三和建設の松本孝文・大阪本店次長兼設計グループグループリーダー兼リソウコブランドマネジャー>
「用地がなかなか見つからない」というお話が出てきました。5年ほど前の例として、政府のお米を預かる倉庫業をされている会社さんは、木造の古い倉庫を持たれていました。だんだん預かる荷物も減ってきて、古い倉庫2棟が空いていると。それをなにか他の用途に使いたいと相談をいただきました。

一方、医薬部外品を物流されている会社さんからは、危険品倉庫を建てたいけど自分のところではしんどいので、どこか貸してくれる人か建ててくれる人がいないか、といったご相談を受けました。その2社を紹介させていただいたところ、倉庫業の方が「それならうちのほうで建てて、一部運営もやらせてもらえれば、うちのほうで建ててお貸ししますよ」と。

こうした、うまくいった事例もあります。ちょうどそこが工業地域だったということもあって、うまくマッチングできたわけです。

一般の倉庫を持たれていて、老朽化が進んでいるとか、満床にならず、空いているところは探せばあるのではないのかなと思います。そういう方々と、危険品を預けたい、建てたい、借りたいという方々を結びつける仕組みがあれば、解決していくのではないでしょうか。今回いらっしゃるプロロジスさんも、そうした自らの余剰スペースも、マッチングはいい解決策かなと思います。

<赤澤氏>
すでにたくさんの物流倉庫が全国に建っていますが、物流の需要は時期や地域によって増えたり減ったりといった波動が発生します。それに対して、ある程度しばらくの期間、このスペースが空きそうだなといった場合に、ひょっとしたら、いまニーズが高まっている危険物倉庫として衣替えができる可能性もあるということですか。

<松本氏>
既存の倉庫を危険物倉庫に変えるとなれば、先程の消火設備や規模、保有空地の話があるので、やはり建て替えにはなると思います。

<赤澤氏>
保有空地について、視聴者さんの中には耳慣れない言葉かもしれないので、ご説明いただけますか。

<松本氏>
危険物倉庫を建設するにあたり、危険物倉庫の周囲に「指定数量の倍数」がありますが、その倍数によって空地を持たないといけない。その空地に限っては、駐車場としても使えず、通過導線としてなら可能だ。例えば1000平方メートルの倉庫つまり20メートル×50メートルの倉庫があるとすれば、その四方全体にわたって、10メートルの空地を設けないといけません。安全性を確保するため、また消防の活動地域としても必要になってきます。

「シェアリングエコノミー」の創設によるプラットフォーム化がカギ

<赤澤氏>
続いて、日立物流の鍋島さんは「シェアリングエコノミー」とお書きいただきました。

<日立物流の鍋島敦・営業開発本部サプライチェーン・ソリューション1部部長>
松本様がおっしゃったように、我々の物流業界ではまだ少ないが全国に危険品倉庫がありますが、それではお客様の要望にお応えできないと思います。

大手の物流会社も新しいセンターを造ってきましたが、実際に対策になっているかというと、まだまだお客様からいろんなニーズが出てきます。一方で、お客様のご要望をリサーチしていくと、意外と同じようなニーズが増えてきています。例えば今までのように保管だけではなく、いろんなラベルを貼って市場を広げていきたいといった場合、同じような案件であれば少しシステム的な管理機能をつけることにより、もしかすると1社だけのソリューションだけでなくそのエリアで危険品ビジネスとして業界をまたいだ新しい形ができるのではないでしょうか。

工業製品だけでなく、EC(電子商取引)や通信事業、医療、化粧品といったさまざまなニーズに対して、お客様のエリアでどのようなことができて、我々物流業者も一緒になってこのエリアで貢献できるような仕組みやシステムを、デベロッパーやゼネコンを含めた拠点をうまく活用できないか。一社だけでなく、いろんなシェアリングをしながら、お客様と我々現場側が一緒にやっていく形を広げていかないと限界が来ると思います。

地域性などの問題のプラットフォーム化を考えておくことで、最終的には民間でいろんな官庁への交渉をする時にも具体的な対策施策として受け入れられるのではないかと思います。

<赤澤氏>
3PLを日立物流様は中核としていますが、そうした観点からすると今の鍋島さんのお話は非常に説得力のあるお話だったと思います。


第5回は、登壇者が次々と考案する危険物倉庫不足の「効果的な解決法」を紹介します。

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