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「危険物倉庫緊急サミット」迫真レポート/第8回

2022年5月31日 (火)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)が5月19日開催したオンラインセミナー「危険物倉庫緊急サミット」の迫真レポート。第8回から第10回までは、登壇各社が取り組む危険物倉庫ビジネスをめぐる最新の動きを紹介していきます。まずは三和建設から。


危険物倉庫の開発で欠かせない「消防法」の理解

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
各社の強み、どういうことができるのかについて、しっかりと深みのあるお話もできればと思います。事前に、お寄せていただいているアンケート結果から、各社に質問をぶつけさせていただいている面もあります。その話の後にまだ時間があるようでしたら、質問に戻らせていただければと思っております。

まずは三和建設様に対して「危険物倉庫を開設する際に、留意しなければいけないポイントについて」うかがいます。これまでのお話にもありましたが、改めて整理してお話をしていただければと思います。それからこの質問も多かったのですが、「業者選定をする上で、注意しなければならないこと」「自社開発する選択肢についてもう少しメリットやデメリットを教えてほしい」、さらに「温度管理を求める商品の増加があります。あるいは経済合理性のある開発方法があれば」といった質問が届いています。すべてではないでしょうが、ある程度整理した質問をあげさせていただきました。松本様、お答えいただく準備はどうでしょうか。

<三和建設の松本孝文・大阪本店次長兼設計グループグループリーダー兼リソウコブランドマネジャー>
すべてという風になるのかはわかりませんが、危険物倉庫を開発する際に留意することについて、お話をさせていただきます。都市計画法や消防法とか、特に危険物に関わってくる法律がいろいろとありますが、一般的な建物と違うのは消防法です。我々が設計していく中で、重要視しているのは安全性です。

お客様にとってはコストや機能性があるし、これらの3要素をどうバランスを取っていくかということです。特に危険物倉庫については安全性に対し、事業主様にとってもその先の荷主様、周辺の方々にどう担保していくのかが重要になってきます。「危険物施設設置許可申請」も、危険物倉庫の開発にとってはキーになります。危険物倉庫を何棟もされている会社にとっては専門的な方がいらっしゃったりしますし、メーカーでも危険品を中心に取り扱っているところもあります。例えば港湾のコンビナートにあるような化学関係の会社さんは、消防とも常にコミュニケーションをされているので、我々が入るよりもより高度なレベルでされているかと思います。

今日のお話では、業界が広がっている、新規参入の話を検討している方もいる中で、一番置いていかれがちになるのが許可申請のところでしょう。一般的な建設会社、特に設計者はここをどれだけサポートできるか。実績がないと、この許可申請にすら気づいていないだとか、存在を知っていても、協議するタイミングがいつなのかあまり理解できていないこともあります。先程もありましたが、消防法の条文の中身というのはほとんど具体的には書かれていないので、実際には所轄の消防にある程度委ねられています。

消防との協議を経て、詳細を突き詰めて決めていくことになります。消防によっても、例えばコンビナートを抱えている消防の場合、危険物倉庫の許可を数多く経験してきており、所轄の中に蓄積されていったものがあります。今まで危険物倉庫の設置許可をおろしたことのない、消防の経験もないような場所で、開発をしていくと思います。そこを誰がつないでいくのかというと、我々のような設計者やプロロジスさんのような開発を担当されている方々がその場所だけでなく日本全国いろんな場所で開発をしています。消防に精通されているところでやっていることが全国的に標準になってきています。そういったものを、1棟だけでなく複数棟、いろんな地域でされてきた設計者を探すことが、危険物倉庫のプロジェクトをスムーズに進める大きなテーマかと思います。それにより、コストも適正なものを選定できるようになるでしょうし、大きなキーになるかと思います。

危険物倉庫の適正な整備に欠かせない「消防とのコミュニケーション」

<松本氏>
自社開発の話についてです。我々は、製造業、特に食品工場さんの工場内でいろんな物流をするところで危険物倉庫の経験を積み上げてきました。自社開発は、メーカーや物流会社さんもそうですが、メリットをあげるとすると、荷物をある程度特定できること。種類や、消防で言うと類とか量とか。特定できるのであれば、消防法も、類とか量によっては、消火設備がそれほどコスト高くないものでいけるとか。保有空地でも、量によっては先程10メートルといいましたが2~5メートルになるとか。そういったこともあるので、高さも6メートルとありますが、4類とか特定できるのであれば、もう少し高く建てられるところもあります。なにか特定をできれば、よりそれに合わせた建物ができるかと思います。なかなか物流会社さんでも将来性を見越してとなると、できるだけ汎用性をもたせた建て方になります。汎用性を持たせようとすると、コストは上がっていく傾向にあります。

それは先程の温度管理でもそうですが、冒頭に出てきた山九様の8棟のを施工させていただくことがあります。8棟中4棟が温度管理で、かなりの設備を持っています。普通の倉庫でも温度管理をするのはコストが上がることはありますが、なぜ危険物倉庫だとさらにコストが上がるのかというと、まず空調機を防爆仕様にしないといけないからです。また、危険物倉庫は換気を求められます。その換気は、機械で常時換気としないといけないのか、自然換気でいいのか。ガスが出た場合に、そのガスを排出させる設備。一種の強制的な換気設備で、それで常時換気を取っている場合もあります。そこも消防さんとのコミュニケーションになります。

常時換気については、ガスが発生したときだけ、センサーで稼働させるようにしておけばいいかと。せっかく温度を管理しているのに、どんどん空気を外に出すと、空調の能力が上がっていきますから、イニシャルコストもかかりますがランニングコストもかかってきます。危険物倉庫で温度管理をするというのは、それについても消防とのコミュニケーションが大切になってきます。

あとは空調機自体に電気の仕掛けがあるので、それに対しての防爆が必要になってきます。例えば機械自体は外部に設置して、庫内はダクトだけで回して空気を吹くだけにするなどの方法があります。そうすると、規模や温度にもよりますが、コストを下げられるかなと思います。例えばお客様から「20度以下にしないといけない」といわれたりすることがあります。その20度以下が、年間通してずっと20度以下なのか、多少暑い時期は超えてもいいのかなど、そういった数字の根拠をもう少し示してもらえればと思います。設計者の立場からすると、年間ずっと20度以下を守ろうとする場合、どうしても過剰になってしまいます。深掘りした情報をもらえると、より適正な設備を入れてコストも抑えることができます。

<赤澤氏>
今の松本様のお話は、物流会社さん、あるいは荷主企業さんが危険物を保管するにあたって、いろんなご要望があります。そのご要望を一つずつ分解していくと、それが変数になり、対策、改善策が複数考えられることになるわけです。その組み合わせによっては、松本さんは「高い高い」とおっしゃっていましたが、意外とリーズナブルにできたりすることもあるのではないか。そうしたヒントに富んだ話だったのかなと思います。


第9回は、プロロジスの危険物倉庫開発の最前線に迫ります。

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