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「危険物倉庫緊急サミット」迫真レポート/第1回

2022年5月26日 (木)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)が5月19日開催したオンラインセミナー「危険物倉庫緊急サミット」。物流業界で注目を集める危険物倉庫ビジネスをめぐる最新の動きや今後のあるべき方向性について、登壇者が白熱した議論を繰り広げました。

輸送・保管サービスの多様化・高度化を背景に、国内の物流業界で注目を集めている危険物倉庫。新型コロナウイルス感染拡大によるアルコール消毒剤など危険物保管需要の高まりを契機として、こうした施設の整備を検討する動きが急速に広がっています。企業のコンプライアンス体制の強化を図る意味合いもあり、危険物倉庫の新設・増設が全国的に相次ぐなど、物流業界における「空前のブーム」になっているのです。

こうした動きを背景とした物流業界の取り組みに焦点を当てながら、危険物倉庫ビジネスの最新動向や課題、その対応策について検証する緊急企画。ここでは10回に分けて、サミットの内容を「迫真レポート」します。


危険物倉庫ビジネスは「儲かる」のか

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
どうぞよろしくお願いいたします。LOGISTICS TODAYは先日から、読者に対して「危険物倉庫」をテーマとしたアンケート調査を展開しておりました。その集計結果がまとまってまいりましたので、その結果を元に、LOGISTICS TODAYの企画編集委員の永田利紀とともに結果を分析します。

最初に、危険物倉庫の調査レポートにおける回答者の内訳を示します。全体の3分の2が物流企業。それから2割近い18.4%が、いわゆる荷主企業。それ以外の方が13.7%となっています。

「危険物倉庫の需要が高まっており、法令に則った保管スペースが不足している」と回答したのは、実に全体の66%にのぼりました。こういった業界状況にあることを踏まえて、危険物倉庫の需要や課題、対策について話していきます。

危険物倉庫の需要は高いけれども、事業者として儲かるのかどうか。これは非常に重要なことだと思います。「儲かるのか」との問いに対して「そう思う」と半分近くの47%が回答しているのに対して、「そう思わない」「わからない」の回答を合わせると半分を超えています。「本当に儲かるの」といった気持ちがにじみ出ているように思います。現場でたくさんのコンサルティング経験のある永田さん、これは本当に儲かるのでしょうか。

<永田氏>
結論から言うと、儲かると思います。ただし、条件があります。手短に言うと、PL(損益計算書)的には儲かりますよ。ただ、BS(貸借対照表)的に許容できるかどうかが、分かれ目になります。

大きな投資額になるので、それを許容できるのなら、単年別のPLではおそらく利益を生むと推察されます。

「とにかくわかりにくい」危険物倉庫への参入

<赤澤氏>
「危険物倉庫は儲かる」という、非常に重要な証言が飛び出しました。今視聴いただいている物流企業の方々はたくさんいらっしゃると思いますが、儲かるそうです。

ただし、実は気になる回答結果もありました。「どうすれば新規参入できるかがわからない」という問いに対して「そう思う」が42%、「そうは思わない」が36%、「わからない」が22%。要するに、どうすれば新規参入できるかがわからないが「そう思う」「わからない」を合わせると3分の2を超えます。

永田さん、どうすれば新規参入できるかわからない方が多いようです。

<永田氏>
まず、書いている本がなく経験者や専門の事業者も身近にいないので、入り口がわからない現状があると思っています。

管轄省庁がどこなのか、何となく消防庁だということは漠然とおわかりなのですが、「倉庫だということで国土交通省が関わらないのか」との質問を受けることがあります。

<赤澤氏>
要するに、危険物倉庫は儲かるけれども、新規参入の仕方があいまいなところがある。なぜかと考えたときに、行政の方にわかりにくさの可能性がある、と。こういう問いもあります。

「国土交通省と総務省のどちらを向けばいいのかわからない」との問いに対し「そう思う」が48%にのぼりました。それに対して「そうは思わない」は29%、「わからない」が23%でした。永田さん、この結果をどう思われますか。

<永田氏>
国土交通省と厚生労働省のどちらを見て仕事をすればいいかわからない。化粧品や医薬部外品、医薬品などを取り扱う薬事倉庫も同じ状況になっています。外側は倉庫だけど、中身は消防であったり薬物や薬品であったりと、二重行政や二重運用になっていることが否めないのかなと思います。

<赤澤氏>
非常に複雑でわかりにくさがあることは事実だが、参入が不可能ということでもないのかな、と思います。そのあたりについて、このあとパネルディスカッションで物流業界の中で危険物倉庫に携わる専門家の方々にお越しいただいています。

LOGISTICS TODAYは、この危険物倉庫に対するアンケート調査に多彩な質問項目を設けて紙面上でも展開しているので、そちらでもご参照いただければと思います。


第2回は、専門家の皆様によるパネルディスカッションが始まります。まずは危険物倉庫の需要動向について考えます。

次>>第2回

■危険物倉庫特集