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「危険物倉庫緊急サミット」迫真レポート/第5回

2022年5月30日 (月)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)が5月19日開催したオンラインセミナー「危険物倉庫緊急サミット」の迫真レポート。第5回は、登壇者が次々と考案する危険物倉庫不足の「効果的な解決法」を紹介します。


「専門性」「受託期間の短期化」に対応した「賃貸」という発想

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
3PLを日立物流様は中核としていますが、そうした観点からすると今の鍋島さんのお話は非常に説得力のあるお話だったと思います。しかし、同時に日立物流様単独ではこの高まっていく需要に対処できないのではないかとも考えております。すると、伸びている需要に対応できないとなれば、無理やり保管をしないといけないのに、イリーガルな状態で保管してしまったり、マーケットが健全に成長できなかったりといったことも考えられるのではないでしょうか。プロロジスの佐藤さん、どう思われますか。

<プロロジスエグゼクティブ・ディレクターの佐藤英征営業部長>
賃貸を活用されてみてはいかがかなと思っています。理由としては2つあります。まずは、先ほど三和建設様や弊社の小出からもお話がありましたが、危険物倉庫を建てるのにも専門性や手間がかかることがありますので、プロに任せてみてはいかがでしょうか。

あとは、特に3PL会社に言えることですが、お客様から受託される期間が短くなってきていることがあります。契約期間が前は長く契約されていたり、あまり期間がないお話もあったと思いますが、最近は入札をかけられてお客様から受託される期間が3年や5年といった期間になることがあります。そうなると、自社で投資されるよりも賃貸を活用される方がメリットはあるのかなと思います。

<赤澤氏>
賃貸でも3年や5年というスパンが出てきているということですね。

<佐藤氏>
そうですね。危険物倉庫については、もう少し長い期間が一般的ですが、少し市場性が出てくることによって3年や5年といった例が増えてくると思っています。

<赤澤氏>
3年というと、物流倉庫の契約でいくとかなり短い期間かなと思います。それから長期に渡って利用する場合には自己所有という選択もあるのかなと考えます。あるいは業務委託。危険物倉庫の保管そのものを専門の物流企業に委託してしまうのも然り。それぞれいろんなメリット、デメリットがあると思います。現在、危険物倉庫の不足に対してどういったことができるのかと話しておりますが、続いて日立物流ファインネクストの篠塚様は、「危険物3PL(アウトソーシング)」と書いていただきました。

危険物倉庫も3PL方式で考える時代?

<日立物流ファインネクストの篠塚武人・営業企画本部営業開発部長>
先ほど、マッチングや賃貸、シェアリングとのお話がありましたが、危険物3PLということで、マッチングや賃貸、シェアリングのコーディネートを日立物流グループとして提供していく。そのなかで建設する選択肢もありますし、賃貸を借りるまた弊社のパートナー会社と連携することもできます。荷主さんの方で建設する選択肢もあると思いますが、危険物3PLというのもあるのではないかと思っています。

<赤澤氏>
普段、実際に危険物の保管事業をお持ちの荷主と接する機会がおありと思いますが、委託や荷主から見た選択肢の広がりに変化があるのではないでしょうか。

<篠塚氏>
そもそも荷主さんの業界が広がってきていると、この5年の中で実感しています。特に、私の方でも「え、」と思ったのですが、医薬や化粧品とか香水もそうですが、成分的にいろんなアルコールやいろんなものが含まれているなという認識があります。3か月くらい前には食品会社から相談がありました。荷主さんの幅も広がっていますし、ただ調べると食品の中に香料が入っていたり、原材料として危険物を活用するというのもあったりして、潜在的に危険物を取り扱う需要が幅広いと実感しております。

<赤澤氏>
食品メーカーで、香料が危険物に該当するということなんですね。荷主さんの中でも、ひょっとしたら気づいていないところもあるのではないでしょうか?

<篠塚氏>
危険物としてきちんと工場の中で管理されていますが、例えば今コロナ対応だとか世界情勢によって在庫を一時的に持たないといけない時に、既存の倉庫では足りないことがあったりします。また、危険物3PLを私が造語としていますが、一般物の3PLが先行して25年くらい前からやってると思うですが、危険物はまだそこまでいっていないと実感しています。それは大変申し訳無いですが、我々のサービスレベルや対応力、二重作業といったものへの対応が構築中であるというのも理由です。そういうニーズがどんどん高まっていますし、危険物倉庫が不足している状況なのだと実感しています。

「負のスパイラル」回避策として、単独ではなくシェアリングや3PLはやはり有効な選択肢だ

<赤澤氏>
同じく日立物流の鍋島様、日立物流グループ全体として見た時に、危険品そのものを保管したいという形の需要はわかりやすくていいと思います。一方、そうじゃない場合、主力の製品や原材料といったものをたくさん取り扱っております。そこで適切なタイミング、分量、スペースを提供していくことができるのかと考えると、やはりお書きになっていただいているようなシェアリングエコノミーだとか、サードパーティロジスティクスというのは有効な選択肢になりそうですよね。

<日立物流の鍋島敦・営業開発本部サプライチェーン・ソリューション1部部長>
そうですね。やっぱり今、篠塚がいったように、環境の変化ですね。中国・上海でのロックダウンもありますが、いろんなところで材料が滞ってしまうとか。本来であれば製造メーカーさんは、倉庫内でそのへんの製品を一時保管してその日のうちにトラックでお客様に納品するのが今までの形でした。

今だと、いろんな意味で納期遅延を起こす可能性があるので作りだめをしないといけません。でも、工場には敷地がこれだけしかありません。だけど扱っているものが危険品なので今まで外に出したことないけど、外に出さないといけない、エリアがありません。こうした「負のスパイラル」がずっと回っている状態なんですね。

それがずっと続くかというと、意外とこの需要とニーズというのは一度回ってしまうといろんな意味で消費者も含めて、これが当たり前の形になってしまう可能性も出てきます。それであれば、売り手にせよ、我々物流企業にせよ、このサイクルをキープしないといけないとなると、企業プレーでは立ち行かなくなるような形がいつか来ると思います。

それならば、マルチテナント型を活用して賃貸を活用したり、長期レベルでいろんなエリアにこういった危険品を作ることで地域エリアの産業がどういう風に進化していくのだろう、といった動きをもっと大きくしてアピールする必要があるでしょう。

<赤澤氏>
荷主企業の立場で危険物倉庫を考える場合、どうしてもコンプライアンスを意識するならば、コストとして捉えがちです。コストであるのは間違いないですが、冒頭の松本さんからの話にもあったように、そこにきちんと対処をしていこうと思えば、ハード面で通常の倉庫と比べると高コストになってしまうというところから、尻込みされるようなお客さん、荷主さん、物流企業が出てくるのかなと思います。

今のお話ですと、そこにきちんと向き合って対処するほうが、製品サイクル全体、サプライチェーンの中では効率が上がり、結果的に高コストを吸収し、最終的に効率のいい物流を構築できる。そういった考え方ということでしょうか。

<鍋島氏>
そうですね。決して危険品だけを作っている製造企業様もいれば、もともと違かったけれど加わってしまったお客様をどうミックスして高パフォーマンスを出せるかということを、できないではなくどうやったらできるんだということを考えていくタイミングだと思います。

「荷主」から「開発事業者」「建設会社」への連携プレーが危険物倉庫不足を解決に導く

<赤澤氏>
最後に、危険物倉庫の不足に対する対策として、プロロジス小出さんの「連携プレー」。こちらはどういったことでしょうか。

<プロロジスエグゼクティブ・ディレクターの小出敦子コンストラクション・マネジメント部長>
我々は物流施設、危険物倉庫の併設ということで開発実績がございます。ニーズがあるものの、果たして作って、借りて、お使いいただけるかというところが大事なところかと思います。箱はどんどん作っていこうという中で箱を生かしていただけるお客様がいて、作ったものが満床になっていってまた次の開発につなげていくのが我々の会社のスタイル。単独で作るだけ作っても、なかなか増えていかないなというところで、連携プレーが大事だと考えております。

先ほどの規制のところにもありましたが、早い段階で物流施設様や荷主様がどういうものがどれに該当するのかといった情報を開示していただき、我々や建設会社様がどういうプランニングをして、あとは消防の規制に対して基準に適合する建物を作れるか。こういったところは、計画の最初の段階から連携が大事だなと感じます。また、連携して作っていくことで次の開発につながっていくなと考えているため、連携プレーと書きました。

<赤澤氏>
危険物倉庫は需要の高まりに対して、いろんな原因があり、ここにいる3社からいくつかの対策をお示しいただきました。具体的に踏み込んで頂いたのではないかと思います。ここまでのお話で、危険物倉庫がいかに事業としても魅力的だし、荷主企業にとっては対処しなければいけないところで、昨今の日本社会の中ではコンプライアンスの順守が欠かせない要素になっております。
そういった事業環境にあり、この危険物倉庫に対してどうすればいいのか、選択肢も示していただいたのではと思います。

パネルディスカッションの後半は、皆様から質問をお受けして答えていく形で進めていきたいと思います。


第6回は、パネルディスカッション後半戦、視聴者の鋭い質問に登壇者が独自の持論で切り返していきます。

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