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船上でオンライン服薬指導、薬は寄港地で受け取り

2022年5月31日 (火)

メディカル全国で調剤薬局を展開する日本調剤は30日、病院向けコンサルティングなどを手がけるゼクト(東京都千代田区)と共同で、内航船員が船上でオンラインの服薬指導を受け、寄港後に薬局に行かずに処方薬を受け取れるシステムを開発したと発表した。現在、海運会社を通じて利用する船員を募っており、近くサービスを開始する。

このシステムではまず、船員が航海中の船上でオンラインで医療機関の診察を受ける。薬の処方せんは医療機関から日本調剤の薬局に通信で送られ、その後、船員はこれもオンラインで薬剤師の服薬指導を受ける。薬局は調剤した薬を船の寄港前日までに寄港地の受け渡し場所に送る。船員は寄港後、空いている時間に受け渡し場所を訪れ、薬を受け取る——という仕組みだ。受け渡し場所には、海運会社が指定する事業所などを使う。

一連のやり取りを支えるのがゼクトの「ゼクト・メディカル・オンライン」(ZMO)システム。もとは在宅医療や離島・へき地などでのオンライン診療を提供するシステムで、画像撮影ができるのが特徴。処方せんについても、撮影した画像を医療機関から薬局へ送信する。2020年に海上で電波強度を確認する実証実験を行い、陸地からおよそ40キロほど離れた海域でも通信が可能であることを確認した。

▲船上でのオンライン診療・オンライン服薬指導実施フロー(出所:日本調剤)

日本調剤によると、内航船の中には3か月ほど航海を続けるものもあり、その期間中に医療機関受診を希望する船員は少なくないという。船上でのオンラインによる診療や服薬指導、処方薬を届ける仕組みへのニーズが高まり、中でも海上で薬が不足した場合や処方量の調整が必要になった際の速やかな対応が求められていた。日本調剤は「長期間の乗船であっても船員が安心できるようサポートしていく」としている。ゼクトも、内航海運での船員の高齢化や健康不安、過重労働などの課題を重視し、船員向け服薬指導システムの開発に取り組んだという。