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「第3回関西物流展」注目ポイントはここだ/第4回

2022年6月16日 (木)

話題LOGISTICS TODAYが「第3回関西物流展」の見どころを製品・技術・サービスごとに解説する開幕直前企画。第4回は「物流施設・不動産/建設/誘致」「防犯・防災/リスク対策/BCP推進」の2テーマに迫る。

第1回「搬送/仕分け/ピッキング」「パレット・コンテナ/保管機器」
第2回「保管・輸送・3PL」「AI/倉庫管理/AI・IoT/情報システム」
第3回「産業・運搬車両/関連機器・ソフトウェア」「梱包・包装」
第5回「物流業務支援サービス」「第1回マテハン・物流機器開発展」

テーマ7「物流施設・不動産/建設/誘致」

なぜ、荷物は決められた時間にきちんと配送先へ届くのか。もちろん、運送会社がスケジュールに合わせて運んでいるからなのだが、それだけでは正確に届けることはできない。荷物を納期に合わせて保管し、配送先に応じて仕分けて検品する機能、つまり「倉庫」が必要なのだ。

サプライチェーンの「要」を成す物流倉庫。首都圏や関西圏、中京圏を中心に、全国の拠点都市近郊では物流施設の建設が目白押しだ。2023年以降の稼働を想定したプロジェクトが、高速道路のインターチェンジ近辺を中心に相次いでいる背景にあるのは、EC(電子商取引)サービスの拡大に伴う物量増への対応だけではない。

近年の物流倉庫開発をめぐる話題は、こうした「規模」の追求から、明確な差別化を見据えた「付加価値」へと軸足が移り始めている印象だ。そのベクトルが向いているテーマは「危険物倉庫」と「冷凍・冷蔵倉庫」だ。

危険物倉庫は、法律によって「危険物」に指定された物質を保管する施設だ。爆発を起こす危険性がある物質など「法律により指定された危険性があるもの」を保管するための倉庫。にわかに需要が高まっている背景には、コンプライアンス意識の向上で化粧品など、ほとんど危険物として扱われていなかった商材も明確に基準に応じて適切に保管する機運が高まってきた実態がある。さらには、新型コロナウイルス感染拡大に伴うアルコールなどの保管需要が急増した事情もある。

一方で、冷凍・冷蔵倉庫の需要拡大は、ECサービスの普及など消費スタイルの多様化の産物だ。食品の宅配ニーズが急増していることから、冷凍・冷蔵輸送の需要が急速に拡大。さらに、精密機器や部材、医薬品など供給網のプロセスで繊細な温度管理を要する荷物の輸送機会が増えたことも、こうした低温倉庫のニーズの高まりを招いている。

関西物流展では、こうした施設案件の課題を抱えた来場者が多く詰め掛けると予想される。こうした倉庫など物流関連施設の需給動向は、物流業界全体の方向性を見定める重要な資料となる。施設開発事業者との対話からも、こうしたヒントを引き出せるかもしれない。

テーマ8「防犯・防災/リスク対策/BCP推進」

このカテゴリーの出展ブースを訪れれば、物流という業務がいかに幅広いリスクを抱えているかを実感できるだろう。発送元から倉庫へ運ばれて、仕分けを経て配送先に届く。その過程で、様々な車両や人間が介在して荷物をリレーしていくのだ。まさに、モノが動けばリスクが発生するということだ。

今回の関西物流展では、このカテゴリーで6社が出展ブースを構える予定だ。いわゆる物流事業者ではないが、サプライチェーンの様々な段階における危険を予測して回避を促す仕掛けを、デジタルやアナログの手法を駆使して提供する。ビジネスモデルの創出意欲の高さもさることながら、こうした危険因子を抽出する慧眼にこそ、こうした企業の基盤となる発想力を実感する。

アプローチは実にバラエティに富んでいる。事故の起きやすい箇所に床面サインを施して注意喚起を行う取り組み。検温機を活用した入退室・出退勤管理システム。自然災害から事故、情報漏洩までさまざまな情報を提供することでリスク回避を促すサービス。いずれも、自社が培ってきた技術や知見を物流業界に応用して、こうしたリスク管理につなげるビジネスだ。

(イメージ)

さらに驚くのは、こうしたサービスが既に実用化されて一定の成果を発揮していることだ。物流が社会に不可欠なインフラであるという事実は、東日本大震災をはじめとする災害からの復旧の過程で、国民に広く認識されたとされる。裏を返せば、リスクを適切に回避できない限りこうした物流インフラは停滞を来たし、ついには途絶してしまうおそれさえあるわけだ。

物流業務の効率化・最適化を促す取り組みが各方面で進んでいる。先進機器・システムの活用に象徴されるDX(デジタルトランスフォーメーション)化はその代表例だ。とはいえ、現場のこうしたハイテク化だけで物流課題は解決するものではない。

DX化が「攻め」の最適化だとすれば、こうしたリスク対応策は「守り」の最適化であると言えるだろう。これらは物流というインフラを円滑に動かす「両輪」を構成する。どちらが欠けてもサプライチェーンはおかしくなる。関西物流展も、こうした観点でブースをめぐれば、新たな課題認識が生まれるかもしれない。