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いすゞなど5社、大型商用車向け水素エンジン研究

2022年7月8日 (金)

(イメージ)

環境・CSRいすゞ自動車とデンソー、トヨタ自動車、日野自動車、Commercial Japan Partnership Technologies(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ、CJPT、東京都文京区)の5社は8日、カーボンニュートラルの実現に向けたさらなる内燃機関の活用を目指して、大型商用車向け水素エンジンの企画・基礎研究を開始したと発表した。

カーボンニュートラルへの道のりにおいて、各国のエネルギー事情の違いや顧客の使い道の多様化により、車両のパワートレーンはHEV(ハイブリッド車)やBEV(二次電池式電気自動車)、FCEV(燃料電池自動車)など多岐にわたっており、水素エンジンもその選択肢の一つだ。

2021年5月には水素エンジンの「カローラ」がスーパー耐久シリーズに参戦するなど、水素エンジン技術が進化するとともに、水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」仲間が広がるなど、水素社会実現に向けた取り組みがさらに加速。大型商用車による運送・物流領域におけるCO2削減も、カーボンニュートラル社会実現に向けて取り組むべき社会問題の一つだ。

いすゞ自動車など5社はこのたび、こうした問題の解決策の一つとして水素エンジンに着目。これまで各社が積み重ねてきた技術やノウハウを活用しながら、大型商用車における水素エンジンの可能性を検討していく意思を確認した。

5社は今回の水素エンジンにかかる企画・基礎研究の開始を契機として、カーボンニュートラルの実現に向けた選択肢を広げることで、より良い社会づくりに貢献していく。

5社による水素エンジン研究、物流現場における「実用化」を意識したテーマ設計に期待

いすゞ自動車など5社が、大型商用車向け水素エンジンの企画・基礎研究でタッグを組むことになった。トラックをはじめとする大型商用車の環境対応策は、今後のさらなる物流サービスの高度化・最適化を推進する上で、欠かせない取り組みだ。しかしながら、具体的に自動車メーカーが単独で取り組むには、開発費用や人材などリソースの確保が難しかった。それであれば、ライバル企業が手を握ることで、各社の強みを組み合わせて化学反応を起こすことができれば、画期的な新技術が生まれるかもしれない。そんな期待も抱いてしまう。

モーダルシフトをはじめとする様々な環境負荷低減策が進められている物流業界だが、トラック輸送の大幅削減は現実的に難しい。物流という社会インフラを持続可能なものとするためには、環境対応策とともに効率的なルート設定や業務遂行を支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)などの取り組みも欠かせない。むしろ、これらが連携することにより、最適な物流サービスの形が出来上がるのだ。

その文脈で考えれば、水素エンジンは環境負荷低減効果だけでその成果が論じられるのは、実用化につなげるには説得力が弱い印象だ。むしろスーパー耐久シリーズへの参戦など、エンジンとしての機能性も訴求することで、実務に十分対応する新技術であることを実証できるからだ。

5社の連携による水素エンジン研究は、こうした物流現場における実用化を意識した成果を示せる設計で進めてほしいと期待する。(編集部・清水直樹)