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川崎市、建築物への再エネ発電義務化の素案公表

2022年8月1日 (月)

行政・団体川崎市はこのほど、市内の建築物に太陽光発電など再生可能エネルギー設備の設置を義務付ける条例改正の素案を公表した。世界的なエネルギー需給バランスの不安定化やそれを受けて東京電力管内で電気料金の値上げが続いている事態を受けた取り組みで、早ければ年度内に条例改正を実現し、2023年度中の施行を目指す。同市内で施設開発を実施または検討している物流や不動産企業にも少なくない影響を与えそうだ。

条例改正の素案は、市が7月27日に開催した環境審議会脱炭素部会で公表した。

それによると、まず、延床面積2000平方メートル以上の建築物を新築・増築する建築主に対し太陽光発電設備や太陽熱利用設備、バイオマス利用設備、風力発電設備などの設置を義務付ける。設備の能力は、年間に延床面積(平方メートル)に30を乗じた数のメガ・ジュール以上とする。

ただ、「義務量の詳細は条例制定後に別途定める」とし、「制度開始当初は過度な負担にならないよう配慮し、必要に応じて義務料の見直しを図る」と、柔軟な運用を目指すとの要素も盛り込んだ。

(イメージ)

2020年の同市内の建築実績に照らすと、市内で56件の建築物が影響を受ける事になる。この年は、延床面積が2000平方メートル以上の新築・増築物件では、倉庫など非住宅が21件、共同住宅が32件、その他(寄宿舎など)が3件あった。

次に、延床面積2000平方メートル未満の建築物に対しても、それらの物件を複数供給する大手不動産事業者などに設置を義務付ける。市内の新築建築物を年間5000平方メートル以上供給する事業者を対象にし、義務設備は太陽光発電設備とし、それ以外の再エネ電力調達は認めない。義務量は、年間受注棟数に要求下限量(2キロワット程度)と設置可能率(85%程度)を乗じた値とする。大手不動産会社など23社が対象になると想定している。この23社の年間受注数の合計が、市内新築建築物の半数以上を占めるという過去の実績も参考に素案に盛り込んだ。

市はこうした義務化により、30年の再エネ導入目標である発電量33万キロワットに対し、その約43%分を得られると試算している。

ただ、多額の設備投資を強いる民間事業者などへの支援策などの具体化はこれからで、審議会に続いて市議会での議論も待ち受けており、なお曲折もありそうだ。