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三菱倉庫、検品効率向上「倉庫DX」訴求/国際物流展

2022年9月15日 (木)

▲「倉庫DX」を訴求する国際物流総合展の三菱倉庫ブース

話題カメラ画像で荷札と複数のバーコードを読み取りデータを突き合わせることで、検品や出荷後の「追跡」を効率化――。三菱倉庫は15日、「国際物流総合展2022」の出展ブースで、社外のIT企業とともに独自開発した画像認識の先端技術を活用した倉庫DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを披露。物流現場における業務効率化を模索する来場者の強い関心を集めた。

パレット上に積まれた個別の荷物を検品する作業は、多岐にわたる倉庫業務の中でも人手と時間を割く負担の大きな作業だ。作業員がハンディーターミナルを使って、個々の荷物に貼られた荷札とバーコードを読み込んでいく必要があるためだ。倉庫業務の効率化策としてさまざまな先進機器・システムが普及してきているものの、荷物の適切な輸配送に欠かせないプロセスである検品作業における負担は軽減されていないのが実情だ。

三菱倉庫はこうした倉庫現場の課題に着目。精度を維持しながら効率化を進めるという、いわば“二律背反”の取り組みが求められる検品作業について、荷札とバーコードの判読にかかる手間をなくすことで関連する業務全体の効率化・最適化につなげる。こうした着想に基づき、出庫検品業務の効率化システムの開発に着手した。

▲荷物の荷札やバーコードを撮影するカメラと関連機器

システムは3段階で構成される。まず、カメラで複数の荷物を同時に撮影。その際に、荷札と商品バーコード、シリアルバーコードが貼られた状態で画像を撮影するのがポイントだ。

続いて、検品用パソコンの画面に映し出した画像から荷札とそれぞれのバーコードを自動で認識するとともに、出荷情報と照合して正しく検品がなされているか否かを確認する。ここで重要な役割を果たすのが、独自開発のアルゴリズムで「一つの荷物に紐づいた荷札とバーコードの情報」であることを自動で認識する機能だ。

最後に、検品結果を画面に表示。検品情報を出力するとともに、その結果をデータベースで集積するほか、WMS(倉庫管理システム)と連携させることにより、倉庫全体の業務の効率化につなげることも可能だ。

▲荷物に貼られた荷札とバーコード

こうして荷札とバーコードを自動で認識することにより、短時間で出荷先を確認するとともに、そのトレース情報を取得。さらに、シリアル情報を基に荷物の追跡も可能。商品に問題が発覚した際の回収や、盗難時における荷物の所在を確認する材料としても活用できる。

倉庫事業者ならではの物流DX、人手不足に悩む現場の問題を解決に導けるか

「物流の2024年問題」も見据えたドライバー不足を巡る議論が業界の内外で広がりを見せている。その影に隠れている感もあるが、決して見過ごせない深刻な問題なのが倉庫現場における人材難だ。

免許が必要なドライバーと比べて、比較的幅広い年齢層の従業員を集めやすいとされてきた倉庫の現場。しかしながら、EC(電子商取引)サービスをはじめとする消費スタイルの多様化を契機に、倉庫で取り扱う荷物の量や種類が一気に膨れ上がった。その結果、倉庫業務に従事する作業員の負担が急速に高まった。もはや、倉庫業務の効率化は待ったなしの問題として浮上してきたのだ。

さらに、倉庫という機能がサプライチェーン全体の円滑な動きを左右する事実が、東日本大震災をはじめ列島で多発する自然災害をきっかけに顕在化。倉庫DXが注目されるようになった背景には、こうした事情もある。今回の国際物流総合展では、倉庫を対象とした先進的な取り組みを紹介するブースが目立つのも、こうした動きを象徴している。

三菱倉庫の先進的な検品システム。当面は自社内で試行しながら実用化を目指すとともに、将来的には外販も検討する方針だ。倉庫事業者が考案した倉庫DXは、倉庫業界の抱える問題を解決する主導者となるか。今後の動向に注目だ。(編集部・清水直樹)

国際物流展2022特集、現地取材記事を随時公開