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国際物流総合展2022閉幕、会場を席巻した「SDGs」

2022年9月16日 (金)

▲多くの来場者が詰めかけた最終日の会場

話題国内最大の物流関連見本市「第15回国際物流総合展2022」は16日、4日間の会期を終えて閉幕した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京ビッグサイト(東京都江東区)を会場とするレギュラー展としては4年ぶりの開催となった今回は、「ロジスティクスのNew Standard(ニュー・スタンダード)」をテーマに526の企業や団体が計2597ブースを展開する過去最大の規模となった。

物流現場における問題解決策として注目される「DX」(デジタルトランスフォーメーション)をはじめ、「物流の2024年問題」「脱炭素」「SDGs」といった足元のトレンドを取り巻くキーワードを意識した出展や講演が相次ぎ、来場者との活発なやり取りも随所で繰り広げられるなど、業界における危機感の強さを実感させた。北條英・事務局長(日本ロジスティクスシステム協会理事・JILS総合研究所長)に、今回の国際物流総合展における来場者の反応や会場運営における課題について聞いた。(編集部・清水直樹)

来場者は想定下回るも、コロナ禍はプラスのインパクトをもたらした

──今回の国際物流総合展における来場者の動向について。現時点でどう評価しているか。

北條 来場者数についてみると、4年前のレギュラー展と比べてやや少ないペースで推移している。それには、コロナ禍を反映した2つの要因があると考えている。まずは、海外の来場者が大幅に減っていること。さらに、国内でも首都圏以外の地方からの来場者が減っているようだ。ブース出展者からは、これまでは大人数で来場していた地方企業が感染者数の多い東京都への出張を極力減らすため訪問者数を圧縮する動きを指摘する声も上がっている。

──悲願とも言うべき4年ぶりの開催だったが、コロナ禍の影響からは脱却できなかった。

北條 とはいえ、コロナ禍が物流業界にもたらした変革は必ずしもマイナスばかりではないと考えている。コロナ禍という経験は、いわば既成概念の可否を問う「社会実験」の側面もある。コロナ禍がもたらしたインパクトの一例として、物流業界に「商取引」の概念をもたらす機運を呼び起こすきっかけになった可能性もある。

会場における出展者の訴求テーマで際立った「SDGs」

──過去最多の出展者が集結した今回の展示会。会場で最も注目されたテーマは何か。

▲「SDGsは最大の訴求テーマだった」と話す北條英・事務局長

北條 SDGsではないか。足元で最も高いトレンドなのが「持続可能性」という概念であるということだろう。各ブースの展示風景を眺めてみると、訴求ポイントとしてSDGsを明確にうたっているところが予想以上に多い。政府がカーボンニュートラル実現の目標を具体的に掲げるなど、持続可能な社会を意識した取り組みがあらゆる業領域で加速し始めたなかで、各業界に広く関与する物流というビジネスに不可欠な着眼点なのだろう。

──ロボットをはじめとする先進機器のデモンストレーションも目立った印象だ。

北條 物流業界における現状での問題認識と言えば、やはり人手不足ということになるのだろう。先進機器の出展を競う傾向も、それを裏付けている。まさにDXなのだが、出展者と来場者の双方が認識すべきなのは、あくまでもそれは手段であって目的ではないということだ。DXの取り組みは問題解決のために有効な手段を提示しているのであり、それ自体が本質ではないことを踏まえた上で情報共有や商談につなげてほしい。

▲SDGsに関わる取り組みをアピールするブース。今回の国際物流総合展の特徴だ

ブース配置の分類による「見やすさ」追求が課題に

──次回の開催に向けた改善点について、浮き彫りになった課題はあるか。

北條 最初に会場内を巡り歩いて感じたのは、来場者にとって分かりにくいブース構成になっているのではないかということだ。出展者数が増加傾向にあるからこそ、何らかの切り口で「分類」してブースを配置する工夫が必要だ。今回の展示会は、複数の企業が共同で出展ブースを構えて問題解決策をストーリーとして提案する「ソリューション型」の訴求スタイルが注目を集めている。こうしたブースを含めて、カテゴリーをどう抽出して明確に分類するか。検討すべき課題だ。

物流業界の次のテーマを垣間見せた国際物流総合展2022

レギュラー展としては4年ぶりとなった国際物流総合展2022が閉幕した。来場者数は事前予想を下回るなど、コロナ禍が企業活動に暗い影を落としている現実を浮き彫りにした一方で、SDGsを中心とした足元の物流トレンドを背景とした新しい商談機会の創出に寄与したのは間違いないだろう。今回の展示会で浮かび上がった課題を検証し、次回はさらなる効果的なビジネス誕生の場となることを期待する。

まずは知名度向上を目指してブースデザインに趣向を凝らす不動産企業、少しでも新しい「ニュース」の発信に余念がないロボット開発企業、他者との連携によるトータルソリューションを前面に出すシステムベンダー。あらゆる「戦術」を駆使したアプローチで諸問題の解決策を提示する姿は、物流業界の底力を感じさせた。

一方で、出展者のなかには依然として「部分最適」の戦略から脱却できず、来場者の共感を得られないまま会期を終えたブースもあった。社会に不可欠なインフラとしての認知が広がり、あらゆる産業に対して横断的に影響力を発揮し始めている物流ビジネス。もはや参加するだけではその真価を共有するのは困難なところまで来ているのだ。

▲次回開催で何を仕掛けるか、1年後を見据える北條氏

国際物流総合展の北條事務局長は、物流業界における次のキーワードについて「標準化」であると指摘する。DXをはじめとする現場改善策の前提として、プラットフォームにような標準的な基準をベースにモノを考える。「全体最適」の観点から事象を見渡す度量も求められる。

今回の国際物流総合展のテーマも「ロジスティクスのNew Standard(新基準)」だった。ひょっとしたら、今回の展示会で次の段階を見据えたビジネスの種が生まれているのかもしれない。そんな期待をするのも、決して悪いことではない。(編集部・清水直樹)

国際物流総合展2022特集