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建築工事が始まった「固定観念を覆す」物流施設の青写真にキーワードで迫る

価値空間を創造する「アライプロバンス葛西A棟」

2023年1月16日 (月)

▲「アライプロバンス葛西A棟」完成イメージ

話題東京都の東端に位置する江戸川区東葛西。千葉県と境をなす旧江戸川の西岸に広がる広大な敷地の一角で22年11月、しめやかに神事が執り行われた。アライプロバンス(東京都墨田区)が2024年8月の完成を予定する大型物流施設「アライプロバンス葛西A棟」の着工に先立ち実施した地鎮祭だ。新井嘉喜雄・代表取締役社長ら幹部をはじめ、多数の関係者が出席。東京23区の市街地における「最後の大型物流施設」とも称される巨大プロジェクトが動き出した瞬間だった。

アライプロバンス葛西A棟の特徴をワンフレーズで表現するならば、「『物流施設の固定観念を覆す』価値空間の提供拠点」といったところか。

”HYPERSPACE/LOGISTICS”(ハイパースペース・ロジスティクス)をコンセプトに掲げて「物流をはじめとする多様な用途に適応した新しい拠点」の提案を目指すと聞けば、物流業界にとどまらず高い関心を集めるのも、もっともだ。

いよいよ始動した、アライプロバンスによる第2弾となる物流施設開発プロジェクト。ここでは、4つのキーワードでその全容を紹介する。

その1「用途に応じた『小分け区画』」

ワンフロアで1万3000平方メートル規模の広さを誇るアライプロバンス葛西A棟。その広さとは対照的に「小分け区画」を設定しているのが機能面での特徴だ。

それを象徴するのが2階部分だ。実に最大で9区画に分割できる仕様とする計画だが、その最小面積は1157.81平方メートル、わずか350.24坪というから驚きだ。

「都心のラストワンマイル配送事業者が過不足なく活用できる最適な広さ。それを思い描きながら考案したスペース構成です」(青柳慶賢・不動産営業部長)。都心に近い立地ならではのニーズを反映したフロア設定。それがアライプロバンスの提示する「大きな施設を小さく使う」発想だ。

▲アライプロバンス不動産営業部長の青柳慶賢氏

その2「地域共生の空間を演出する『外構デザイン』」

アライプロバンスが総合不動産業に業態を転換して最初に手がけた物流施設「アライプロバンス浦安」(千葉県浦安市)。新規参入者の立場であるアライプロバンスが並み居るデベロッパーと競うには、圧倒的な差別化を図る必要があると判断した。そこで着目したのが、「ランドスケープ・デザイン」という発想だった。

▲地域共生を意識した外構デザインが評価された「アライプロバンス浦安」。その精神は葛西にも受け継がれる

自然と文化を組み合わせて景観を描くことで、物流施設と地域が共生できる空間を創出できないか--。こうした取り組みが評価され、アライプロバンス浦安の外構部分におけるデザイン構築案件「浦安物流倉庫プロジェクト」(バス待合所、ランドスケープ)が22年度「グッドデザイン賞」に選ばれた。

こうしたランドスケープ・デザインの精神は、アライプロバンス葛西にも引き継いでいく。A棟におけるランドスケープデザイナーに、アライプロバンス浦安に続いてSUGAWARADAISUKE建築事務所の菅原大輔氏を選定。「旧江戸川の河岸や隣接する商業施設といった環境にも配慮しながら、職場や地域の憩いの場を創出していく」(青柳氏)考えだ。

その3「都心部での配送を支える『冷凍・冷蔵』機能」

一般道路を経由した都心へのアクセス、さらに首都高速道路による広域配送。アライプロバンスが、新型コロナウイルス禍も契機に拡大するEC(電子商取引)ビジネスへの対応策として着目するのが、冷凍・冷蔵機能だ。

「アライプロバンス葛西A棟の1階部分に、冷凍・冷蔵倉庫スペースを設ける検討を進めています。ラストワンマイルにとどまらず、様々な輸配送ニーズに対応できる小回りの利いたサービスを提供できる拠点設定を進めています」(青柳氏)

いわゆるドライ倉庫に冷凍・冷蔵設備を据え付けて貸し出すサービスは、市場ニーズの高まりもあって広がりを見せている。コスト負担など解決すべきハードルもあるが、ここも差別化を示すキーワードになりそうだ。

その4「想定する入居者を限定しない『多様性』」

最後に、アライプロバンスが葛西プロジェクトで挑戦する”HYPERSPACE/LOGISTICS”の真骨頂と位置付けるキーワードだ。青柳氏が描くのは、都心に至近でありながら中心街でない「絶妙な立地」だからこそ実現できる、様々な用途に対応した空間だ。

▲「国際物流総合展2022」アライプロバンスブース。300インチ大画面で来場者を引きつける戦略で葛西プロジェクトの魅力を訴求した

「いわゆるビジネス街にある画一的な仕様のオフィスに満足していない企業に提案できる、あらゆる活用方法を試せる空間。それが我々の創造する物流施設ならではの強みです」(青柳氏)

高い天井と広い間口、それに頑丈で災害に強い構造。研究開発やスタジオ、現場と併設するフレキシブルな事務所など、既存のオフィスでは対応できなかった潜在的なニーズに光を当てることで、新たな物流施設のあり方をも示す。それがアライプロバンスの葛西プロジェクトの持つ最大の強みなのかもしれない。

かつてアライプロバンスの前身である新井鉄工所が80年近くにわたって操業してきた金属加工工場の跡地で、先進的なマルチテナント型物流施設の建設工事が始まった。24年8月、この地からどんな「驚き」が社会に発信されるのだろうか。アライプロバンス葛西A棟はどんな斬新な価値空間を提供するのか。今から目が離せない。

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