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物流スタートアップ・ベンチャー特集/第13回

自動トラ幹線輸送の夢に「仲間必要」/T2・下村CEO

2023年1月10日 (火)

話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第13回は、T2(千葉県市川市)の下村正樹CEOです。

ラフな紺色のフリースに、履き慣らしたジーンズと白いスニーカー。幹線輸送の自動運転の実現を目指すT2の下村CEOは、軽い足取りで特殊な装置が搭載された“特別仕様”の大型トラックに近付くと「この1台に荷物とともに、『日本の物流の未来を支える』という夢を乗せたい」と目を輝かせて語る。

2022年8月に「自動運転技術で次世代の物流を支える」というビジョンを掲げT2は創業したばかり。目指しているのは、主要物流拠点間を往復する、自動運転トラック幹線輸送サービスの提供だ。社名の「T」の文字には「Transportation(輸送)をTransform(変革)するという思いをシンプルに表現したかった」と話す。

一方で「現状を変えるということは、決して既存の事業者から仕事を奪うということとイコールではない。いま物流を支えている皆様の力もお借りしながら、同じ志を持つ仲間を集めて夢をやり遂げたい」と物流事業者からエンジニアまで幅広く賛同者を募っている。

商社パーソンとして長年、ICT(情報通信技術)および自動車領域を専門とし、インドの物流会社で3年半にわたり社長を務めたことで物流業界にのめり込んだ。「インドもドライバー不足という社会問題に直面していた」といい、運転手の環境改善に向けて運行管理システムを導入するなど、テクノロジーを駆使した労働環境や安全運行の仕組みの構築に奔走した。

日本でも、いわゆる「物流の2024年問題」が目前に迫るなか、物流インフラの根幹を担う幹線輸送に注目した。「持続可能な物流網を構築するため、自動化という価値創造でソリューションを提供したい」と一念発起。目標として、東京・大阪間での自動運転による幹線輸送の事業化を掲げる。来春には、人工知能の画像認識の領域で国内トップ級の技術を誇るPreferred Networks、三井物産の協力を仰ぎ、国内初となる高速道路での大型トラックの「レベル4」走行実証を予定する。


▲大型トラックに装着された自動運転をコントロールする装置

国内では23年4月、特定条件下でシステムが車を動かすレベル4による公道走行の解禁が目前に迫る。T2は既に、乗用車を使った高速道路での走行は成功済みで、トラックでもテストコースで実証を続けているが、「乗用車に比べてトラックは車体が大きい分、同じステアリング操作時の動きなどが異なるように、走行や制御の挙動をコントロールする難易度は格段に上がる」と課題は少なくない。公道では、予期せぬ割り込みや他の車両の接近などが起こり得るため、安全確保を大前提にプロジェクトを指揮する。

時速80キロで20トンのトラックが高速道路を頻繁に走る光景を、どのように運送事業者や一般ドライバーに浸透させていくのかというのも大きなテーマだ。「自動運転の実現には技術面だけでなく、新たな輸送形態に対する社会の受容性も不可欠」と指摘する。「例えば、自動運転トラックの車体を派手な蛍光色に塗装することで、『ただいま自動運転中』という認識を持ってもらうというのも一案」と自動運転に対する社会の意識醸成を図る取り組みにも意欲を見せる。

T2は幹線輸送の自動運転システムを開発販売するのではなく、あくまで輸送事業者として物流業界への参入を目指している。その理由について「当初は、自動運転に起因する事故などの責任の所在を切り分けるのが難しいと思う」と挑戦に伴うリスクは覚悟の上だ。

現在、T2のメンバーは下村氏を含めて14人。「幹線輸送の自動運転化という夢を一緒に追いかけてくれる、柔軟な発想を持ったエンジニアの力が必要」と語り、2年後には100人規模まで組織を拡大させる方針だ。

自動運転に対する物流事業者の反応はというと、「前向き」「様子見」「否定的」と三者三様。それでも「ラストワンマイルを担う物流事業者にとって、どのような形がベストなのか。集出荷から輸配送まで全体のバリューチェーンの最適化という視点を大切にしたい」と物流事業者にもプロジェクトへの参画を呼び掛ける。

▲T2のメンバーたち

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