行政・団体国土交通省道路局は7月31日、新たな物流形態として道路空間を活用した「自動物流道路」の構築に向けた最終とりまとめ案について議論するため、第10回検討会を開催した。同省は物流危機への対応と温室効果ガス削減に向け、道路空間をフル活用した自動物流道路の実現を目指す。

▲検討会の様子
検討会の冒頭、委員長を務める東京大学大学院工学系研究科の羽藤英二氏は「このプロジェクトは新幹線や東名高速道路の建設に勝るとも劣らないプロジェクトだ。この物流危機だからこそ、魂を込めて議論し、ぜひ良いプロジェクトにしていきたい」と抱負を語った。
検討会では、自動物流道路が将来不足する輸送量の8%から22%をカバーできることを明らかにした。ドライバーの労働時間削減効果は約2万人日から5万7000人日に達し、削減可能なCO2排出量は240万トンから640万トンに及ぶ。同省は「我が国の技術力を活かし、荷物が自動で輸送される世界を実現」を掲げている。
自動物流道路の対象区間は東京・大阪を基本とし、関東・東海関東や兵庫などへの拡大についても検討する。搬送速度は70キロから80キロを目指し、技術開発により実現を図る。標準仕様パレットに統一し、高さ2.2メートルまでを基本とする。インフラ整備では地上部は施工上の課題が大きく、地下部はコスト高と残土処理などの課題があるとした。
実証実験は7月31日から9月3日まで実施者を公募し、11月から25年2月を目処に筑波市内のトンネル設備で実施予定だ。26年以降は新東名高速道路の未開通区間を活用した実証実験も検討する。ケーススタディー区間として、東名厚木IC周辺(伊勢原JCTなど)から東名駒門PAまたは愛鷹PA(沼津IC)、東名厚木IC周辺(伊勢原JCTなど)から新東名駿河湾沼津SA、名神養老JCT周辺から名神関ヶ原IC周辺、新名神城陽ICから八幡京田辺ICの4区間を選定した。
委員からは「自動物流道路は道路の枠を広げる取り組みであり、耐久性が重要」との意見が出た。幹線ドライバー不足を自動化で補うことの重要性や、需要成立のためどのような荷物を集めるか分析の必要性に関する指摘があった。パレットサイズの統一は重要だが、ほかの需要も考慮すべきとの声もあがった。
事業実施では民間資金を想定し、民間の活力を最大限活用する方針だ。デジタルツインでの事業シミュレーションは検討中で、東京大阪間の一部区間での運用開始は2030年代半ばを目指す。同省は物流全体の最適化と物流モードのシームレスな連絡により、カーボンニュートラルの実現と災害時の安定物流確保を図る。
今年度は搬送機器の走行性能などの6つのユースケースについて実証実験を実施する。他モード結節などをシミュレーションし、新東名高速の建設中区間などでの2027年度までの実験を経て、2030年代半ばまでに小規模な改良で実装可能な区間での運用開始を目指す。制度を含めた事業環境整備を促進し、他モードとの適正な競争環境を整備していく方針だ。
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