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物流ロボ焦点は「足」から「手」に、育成視点が不可欠

2025年7月31日 (木)

ロジスティクスファーストライト・キャピタル(東京都港区)は28日、早稲田大学の尾形哲也教授を招き、「ロボットAIの第一人者と語る、世界競争の最前線と日本の戦略」と題したセミナーを都内で開催した。AI(人工知能)とロボット技術が融合した「フィジカルAI」の分野で、巨額投資を行う米中が先行する中、日本の進むべき道筋が示された。

▲尾形哲也教授(早稲田大学理工学術院基幹理工学部)

セミナーでは、物流分野におけるロボットの進化が重要な論点として示された。倉庫内での自動搬送(AGV)や配膳ロボットに代表される「移動(足)」を主とするロボットは、すでに技術的に成熟段階にあると指摘。今後の焦点は、この「足」の機能に、商品をつかみ、仕分けるといった精密な作業を担う「手」の機能をいかにして加え、新たな付加価値を創出できるかに移っている。

しかし、この「手」の機能を高度化する上で、尾形教授は「データ不足」がボトルネックだと指摘した。特に、ロボットが現実の物理空間で自律的に作業するための「動作データ」は、テキストや画像データに比べて圧倒的に不足しているという。この課題に対し、米中の企業はすでに、人間が実際に作業する訓練施設を設け、100万件規模の学習データを収集するなど、大規模な投資で対抗している。

こうした状況下で、日本が取るべき戦略として、資金調達から基礎研究まで取り組む「オールジャパン」体制の必要性が強調された。尾形教授は、米中と同じ土俵で大規模な開発競争を挑むのではなく、日本独自の戦い方が必要だと分析する。具体的には、特定の用途に特化する、あるいは世界的に評価の高い「高品質なものづくり」とAIを組み合わせるアプローチを提言した。物流施設など、日本が強みを持つ「現場」で培われた緻密な作業ノウハウをデータ化し、ロボットに学習させることが、独自の競争力につながる可能性を示唆した。

また、国内産業の育成も急務だ。日本でも優れた技術を持つスタートアップが生まれているが、海外企業によるM&Aの対象となるケースが少なくないのが現状だ。日本の強みを生かせる領域を見極め、国内の有望な技術や企業へ戦略的にリソースを投入し、産業として育てていく視点が不可欠だと結論付けた。

▲モデレーターを務めた頼嘉満氏(ファーストライト・キャピタルマネージング・パートナー)

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