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「物価高倒産」最多は運輸業、TDBの22年調査

2023年1月16日 (月)

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調査・データ帝国データバンク(TDB)が13日発表した「物価高倒産動向調査」で、2022年(1-12月)に物価高倒産した320件のうち「運輸業」が64件となり、全49の業種詳細別のなかで最多になったことがわかった。運輸業の物価高倒産は21年の16件から4.0倍と大幅に増えており、燃料費の高騰や価格転嫁の未実施が、運送業者の経営を強く圧迫している実態を裏付けた形だ。

TDBによると、物価高倒産は、原油や燃料などの仕入れ価格上昇や取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかったことが原因で、収益が維持できず倒産した企業を対象としている。

TDBは「人手不足の問題も相まって、運輸業は他の業種に比べて倒産の動きが早かった」(担当者)と指摘。価格転嫁が十分に進まない環境下で、物価高が「最後の追い打ち」となっているとみられ、今後も中小事業者を中心に物価高倒産は増加傾向で推移するとみている。

業種詳細別でみると、物価高倒産は運輸業に続いて、総合工事業が39件、飲食料品製造が28件と多かった。

全業種の物価高倒産件数は21年比で2.3倍増。詳細業種別よりも大きなカテゴリーの業種別でみると、「運輸・通信業」は「建設業」(70件)に続いて2番目に多かった。負債規模別は「1億〜5億円未満」が146件と最多だった。

22年12月単月の物価高倒産件数は48件となり、同年11月の46件を上回り6か月連続で過去最多を更新。建設業が12件、運輸・通信業が10件とともに2桁を超えた。

物流サービスは適正なコスト負担と価格設定が確保されて初めて機能する、こうした認識を共有すべきだ

物価高に悩まされた2022年。生活必需品から産業資材まで、値上げに踏み切るメーカーが続出し、家計や企業経営を圧迫した。地政学リスクをはじめとするさまざまな要因で燃料や原材料が高騰したことが、こうした値上げラッシュにつながった。とはいえ、運輸業の倒産件数を引き上げた原因は、こうした市場環境だけにあるのだろうか。

企業は、コスト負担が高まった場合に、おおよそ決まった対応策を講じる。まずはさらなるコスト削減に踏み切るよう努める。より安い原材料を調達するか、人件費を圧縮するか、または資産を売却したり貸し出したりする方法もあるだろう。つまり、経費を切り詰めることで支出を抑えて値上げをカバーするのだ。

それでも限界はいずれ訪れる。必要最低限のコスト負担は避けられない上に、従業員や不動産などの資産は事業運営に欠かせないからだ。そこで、やむなく選択せざるを得ないのが価格への転嫁、いわゆる商品やサービスの値上げだ。

企業にとって価格とは、提供する商品やサービスの価値を示す尺度であると同時に、競合事業者との差別化を図り顧客獲得につなげるための有効な戦略でもある。

宅配をはじめとする運輸業界は、荷主であるメーカーやEC(電子商取引)事業者などによる熾烈(しれつ)なサービス競争のあおりを受けてきた。こうした事業者が質の高い商品やサービスをできる限り安い価格で提供することで、顧客の継続的な支持を得ようとする動きが強まるなかで、収益を確保するためには、どこかでコストを圧縮せざるを得ない。その格好の対象となってきたのが物流費だ。

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さらには、輸送業界でもこうした価格競争を巻き起こして値下げ圧力に“対応”する動きさえあった。こうした消耗戦の様相を呈する業界環境のなかで、適切な輸送サービスを提供するために必要な適正運賃の設定に踏み切る事業者も出始めているものの、やはり価格転嫁は全体として思うように進んでいない。それが、運輸業の倒産件数の示唆する実情なのだろう。

物流が社会に不可欠なインフラとして認識されるようになってきたことは、歓迎すべきだ。しかし、物流にも適正なコストと価格が存在し、それが確保されない限りは最適なサービスを継続できないという事実も、明確に理解されるべきであろう。(編集部・清水直樹)

「優越的地位」巡り13社が価格転嫁の協議なし

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