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街の変化支える脈動〜物流施設・座間エリア特集〜

2023年6月26日 (月)

話題立地や周辺インフラ環境などのさまざまな要因により、物流集積地として注目されるエリアがある。前回、編集部では「物流の要衝」として、1つの地域を掘り下げて特集する企画の第1弾として厚木市を取り上げた。

その東側に、相模川を隔てて市境を接するのが座間市であり、座間市もまた、物流拠点として厚木に匹敵する魅力的な街として多数の物流施設が拠点を構えている。物流の中枢としての座間の魅力とは。エリア別にその魅力に着目する物流施設特集、第2回目は座間と、その周辺エリアに着目してみる。

巨大商圏と連結する物流拠点・座間

東京都心から50キロメートル、横浜から20キロメートル、神奈川県のほぼ中央に位置することなど厚木市との類似点も多い座間。古くより街道が発達した街であったこともあり、現在も物流拠点として大型倉庫や配送施設が集まる。

総人口は13万2000人、世帯数6万1790世帯。人口では厚木市より1万人弱少ないが、人口密度では1平方キロメートルあたり7500人と神奈川県でも上位に位置し、厚木市の3倍近い人口密集地帯と言える。

周辺の大和市、綾瀬市、海老名市と合わせ、横浜・川崎など神奈川県内の巨大商圏の結節点となっていることが物流拠点としての大きな魅力となっており、消費商材の周辺地域配送の拠点としての重要性も大きい。商圏へのアクセスの良さはベッドタウンとしての人気にもつながり、同時に域内産業へ豊富な人材を提供できる環境を作り出している。

▲海老名駅東口の風景。商業施設と交通インフラが充実し活気に満ちている

歴史に裏打ちされた物流基地の魅力

もともとは八王子街道の宿場町として栄えた歴史を持つ座間。旧街道が多く残り、南北に鎌倉街道や藤沢街道、東西には江戸街道などが走るなど人々の往来の中心地として栄え、1927年(昭和2年)になると小田急電鉄の開業に合わせて都市化が進んだ。現在も、圏央道(圏央厚木IC)、東名高速道路(横浜町田IC、綾瀬スマートIC)、国道16号線、246号線へのアクセスの利便性による広域輸送での利点に加え、横浜・川崎市内など神奈川県内の配送拠点として、都心も加えた大規模商圏への物流サービスで重要な役割を果たしている。

(出所:日産自動車)

近代、陸軍士官学校や海軍工廠などが設置された軍都としても発展。高度経済成長期には企業誘致が積極的に行われ、1965年に日産自動車の主力生産工場として日産自動車座間工場が稼働したことから市内の産業もさらに発展。工業地区を取り囲む形で市内経済の基盤が整えられた。また、軍都としての基盤はキャンプ座間の基地経済へと引き継がれる。

また、市内には小田急小田原線・相武台前駅、座間駅、JR東日本線相模線・入谷駅などの鉄道駅が人流を生む。市内従業者の通勤利便性も、雇用確保において有利となり、物流事業者にとっては魅力的なエリアとなる。小さな面積に対して宅地開発が進む地域特性から厚木市に比べて公示地価平均もやや高い水準となってはいるが、それも巨大商圏により隣接する街の特性であるとも言えよう。

バブル崩壊後、多くの企業が撤退し、日産自動車座間工場も座間事業所へと大きな変化を迎えたが、2006年以降「新工業団地」が開設され、市内外の複数の企業が集積。製造業では「生産用機器」や「輸送機」、「電気機器」などの分野が大きな割合を占有し、市内産業の新たな基盤を担うことになる。

座間の変化を支える大型施設

日産の工場撤退と、跡地再開発、2013年の圏央厚木IC開設に合わせて、新たな大型物流施設の着工・竣工も増えた。

▲イオンモール座間の屋上からのぞく物流施設群。右手前から「GLP座間」「プロロジスパーク座間1」「プロロジスパーク座間2」

09年と12年にプロロジスパーク座間1と2(プロロジス)が相次いで、15年にはGLP座間(日本GLP)が、日産の工場跡地の一部で竣工した。続く綾瀬スマートICの供用開始を機に、ロジクロス座間小松原(三菱地所)が昨年3月に、今年に入ってランドキューブ座間(CBRE)の竣工も続く。MFLP座間(三井不動産)もことし9月の竣工を控えるなど最新の設備を整えた新しい基地の稼働が相次ぎ、ロジクロス座間(三菱地所)も年内の竣工を待つ状況となっている。

もう少しエリアを広げて見てみると、座間の東端に接する大和市は横浜市と市境を接する利点が魅力。ソシラ中央林間(住友商事)が昨年8月竣工し、横浜・川崎や、県内陸部へのアクセスに優れた消費地近接型物流施設として稼働している。

座間の南に位置する綾瀬では、前述の綾瀬市スマートIC開設により利便性が大幅に向上。T-LOGI綾瀬(東京建物)が綾瀬工業団地の隣接地に構え、MFLP東名綾瀬(三井不動産)もスマートIC隣接地に昨年8月竣工して、有名ドラッグストアチェーンの拠点となっている。

人口の増加が著しい海老名市にも、大型施設の建設が進められ、20年以降だけでもソシラ海老名(住友商事)、プロロジスパーク海老名2(プロロジス)、海老名ICに隣接するMFLP海老名Ⅰ(三井不動産)の竣工が続くなど、いずれの施設も周辺商圏へのアクセスの利便性で人気があり、テナント入居率も高い水準を保っているという。

このように、工場跡地の再開発と、道路網へのアクセス面での改良などが契機となり、大型商業施設などの開店と足並みをそろえるように、大型物流施設も再開発の中心プロジェクトとして進出し、そこには1つの巨大企業の城下町から変貌する街の姿を見てとることができる。各物流施設とも、市内の雇用においても大きく貢献するなど、新たな座間の創造の一端を担っているのだ。

座間・大和・綾瀬・海老名…エリア総合力で存在感

座間の街の利点に、そのコンパクトさが挙げられる。隣接する厚木に比べて面積は19パーセント、それ故、県でも上位に位置する人口密度の高さがにぎやかさを演出する。夏の風物詩、ひまわり畑や豊かな湧水に代表されるように雄大な自然も残り、多くの史跡も趣深い。

ことし1月時点での調査では、県全体は2年連続での人口減少が続いており、県内人口の4割を占める横浜市でも少子高齢化の影響により、死亡数が出生数を上回る「自然減」は、転入数増加による「社会増」を上回る流れとなっている。座間市、綾瀬市も同様の流れにより、人口減に転じてきた状況にあるが、そのなかで海老名市は2000人以上の人口増、大和市でも人口増加となっているなど、人口密集地への結節点としてのエリア全体は、まだまだ大きなポテンシャルを秘める。交通の利便性が向上し、マンションや分譲住宅ほか、商業施設の開発が進んだことが奏功した海老名市の成長をエリアの象徴として、ベッドタウンとしての地位を確立したとも言える。

企業城下町からの変革

座間市内でもっとも乗降客数が多い小田急線相武台前駅からは路線バスやコミュニティーバスが、また近隣の相模原や、相模鉄道本線各駅からの市内アクセスの便も良いため、市内各所のショッピングモールには近隣の市からの来訪客も含めたファミリー層で賑わう。


▲市街地である相武台からはバスが通じており座間市内各所へのアクセスが良好

なかでも、かつて座間市の経済をけん引した日産自動車工場の跡地にオープンした、イオンモール座間は人気が高い。その周囲を、同じく、工場跡地に建設されたGLPやプロロジスパークが囲み、運送トラックが行き交う様などを見ると、ここを拠点にした物流の脈動を感じる。

サニー、ダットサンなど、かつてこの地で30年間に渡り累計1000万台以上の車を送り出した日本屈指の工場跡地の一部は、今ではこれらショッピングモールや大型商業施設、そして物流拠点に生まれ変わり、今は別の姿で街を活性化させる主役となっている。

▲GLP座間(左)など大規模物流施設に隣接するイオンモール座間

このイオンモール座間内には「日産座間インフォメーションセンター」が開設されており、昔と今の座間事業所を実車や写真、パネルなどで知ることができるなど、日産を中心に発展した街の歴史を感じ取れる施設となっている。

この街の一つの時代を記録した展示場所から、少し外に出て街を俯瞰すれば、そこには生まれ変わろうとする街の姿が背中合わせに登場するのも興味深い。

やがて、この街の象徴としてこれらの新しい物流施設群をイメージする人の方が多くなるのだろうか。