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ブランド刷新後初開発、東急不動産が総力挙げたLOGI’Q南茨木の実力

できることはすべてやる、未来への扉を開く新理念

2023年7月31日 (月)

▲「LOGI’Q南茨木」の完成イメージ

話題「未来への扉を開く」物流施設を創出する――。社会に不可欠なインフラである「物流」だからこそ、社会の動きや方向性を的確に反映したサービスを提供すると同時に、次の時代への「あるべき姿」を提示していく役割も求められる。こうした「未来への扉」への道筋を促す取り組みを、物流施設開発の観点から推進しているのが、東急不動産(東京都渋谷区)だ。

「LOGI’Q」(ロジック)シリーズで首都圏を中心とした物流施設ネットワークの構築を急ピッチで進める東急不動産は2022年8月、5年前に定めたブランドのリニューアルに踏み切った。新型コロナウイルス禍も契機とした社会動向の変化に伴う物流サービスの在り方を再定義することで、LOGI’Qシリーズの歩むべきコンセプトを刷新する狙いだ。

こうして再出発したLOGI’Qシリーズ。それを象徴するフラッグシップ物件として2024年1月の完成を目指すのが、「LOGI’Q南茨木」(大阪府茨木市)だ。物流施設ネットワークの構築において首都圏に続く注力エリアに掲げる関西圏で、東急不動産は新ブランドに基づく新境地を開拓しようとしている。


▲(左から)南西風除室、南東エントランスホール

ブランドコンセプト刷新、その狙いは「急速な環境変化への対応」

同社は「Deliver future and smiles」(デリバー・フューチャー・アンド・スマイルズ)のブランドコンセプトでLOGI’Qシリーズを展開してきた。物流施設開発ビジネスへの本格的な参入に合わせて、長く培ってきた街づくりのノウハウを生かした開発を進めるとともに、永続的に愛される存在となることを目指してきたが、社会は予想を上回る速さで変化を遂げた。

コロナ禍に加え、急激なデジタル化の加速や脱炭素社会の進展で、生活スタイルの多様化が急速に広まった。いわゆる「新しい生活様式」の発想が浸透するなかで、不確実で先が読みにくい時代が加速しているのだ。

▲船山淳氏

「そのような環境認識のもと、LOGI’Qに入居するテナント様をはじめとするステークホルダーの持続的な成長を実現するには、提供する施設自体も変化し、進化し続けなければなりません。こうした背景から、ブランドリニューアルを決めたのです」(戦略事業ユニット インフラインダストリー事業本部 インダストリー事業部 リーシンググループ 上席主幹の船山淳氏)

LOGI’Qの新ブランドは、東急不動産ホールディングスの長期ビジョンスローガンである「WE ARE GREEN」(ウィー・アー・グリーン)に込めた思いを踏襲して、「NEXT GREEN LOGISTICS」(ネクスト・グリーン・ロジスティクス)をコンセプトに設定。「人、モノ、自然を、次につなぐ。」のステートメントに基づき、環境に配慮するとともに人にも優しい物流施設のあるべき姿とは何かを追求する。「同時に、次の時代を先駆ける形で、顧客と社会のためにサプライチェーンの中で担うべき物流施設の新たな役割と価値を探索し続ける意思も込めています」(船山氏)

「新ブランドコンセプト第1号」と位置付けられたLOGI’Q南茨木

新ブランドコンセプトを掲げて、物流施設開発ビジネスを再定義した東急不動産。それを具現化する1号案件が「LOGI’Q南茨木」だ。首都圏でのプロジェクトに強い印象があるが、あえて新たなブランドコンセプトでのフラッグシップ案件を関西圏で始動させたところに同社の強烈な意思を感じずにはいられない。

同施設が位置する大阪府北部のいわゆる「北摂」エリアは、大阪や京都といった大都市の後背地として目覚ましい発展を遂げている。名神高速道路や新名神高速道路といった幹線道路網の大動脈が貫き、さまざまな産業の活動拠点が進出。さらに住宅地としての抜群の利便性から安定した居住人口も確保されるなど、街としての成熟度は全国でもトップクラスだ。

▲伊藤かさね氏

「LOGI’Q南茨木は、シリーズで初めての大型マルチテナント型物流施設として開発した物件です。新たなブランドコンセプトを反映した実験的な取り組みも含めて、東急不動産の今までにない物流施設を提供していく考えです」(戦略事業ユニット インフラインダストリー事業本部 インダストリー事業部 リーシンググループの伊藤かさね氏)

東急不動産は、ここLOGI’Q南茨木を先進的な物流施設として提供するだけにとどまらず、自社の事業展開を関西圏で訴求する発信拠点と位置付けている。ここに、新たなブランドのステートメントである「人、モノ、自然を、次につなぐ。」を意識した施設運営の理念を垣間見ることができる。

関西圏でトップクラスの物流適地

LOGI’Q南茨木の具体的な特徴について見ていこう。最大の強みと言えるのは、新ブランドコンセプトでのフラッグシップ物件にふさわしい好立地だ。

「1時間当たりの配送可能人口は1370万人。京阪神に加えて奈良県や滋賀県の産業中心エリアまで網羅できる立地は、関西圏でもトップクラスを誇る好立地といえるでしょう」(船山氏)

北摂エリアは、大阪だけでなく京阪神からさらに関西圏の全域、さらには東海や北陸、中国・四国などと広域輸送拠点としても有効であろう。高速道路をはじめ国土軸を形成するあらゆる交通インフラが、この北摂エリアに集まっているからだ。物流施設におけるこうした立地は、輸送インフラの充実度にその機能が大きく左右される性格を考慮しても、優位性が高い。

そしてこの北摂エリアのさらなる強みは、関西圏でも有数の人口集積地であることだ。「LOGI’Q南茨木の徒歩20分圏内の人口は、実に3万人を超えています。JRと阪急電鉄の計3駅を最寄りに使えることから、従業員の通勤利便性は極めて高いと言えるでしょう」(伊藤氏)



(クリックで拡大)

こうした産業・人口集積地に位置する茨木市だが、こうした企業立地に追い風となる制度も活用できる。企業や人口の集まる都市が広く導入している、公共の設備や施設に充てられる事業所税が、ここ茨木市では課せられないのだ。

「やれることは全部やる」新発想の物流施設

もちろん、LOGI’Q南茨木の強みは立地面での優位性にとどまらない。新たなブランドコンセプトに基づく、今までにない物流施設の「あるべき姿」を反映した機能。それこそが、東急不動産がLOGI’Q南茨木を舞台とした挑戦でもあるのだ。

「やれることは全部やる。これが、LOGI’Q南茨木の開発におけるキーワードです」(伊藤氏)。いわば新コンセプトを実践する場でもあるLOGI’Q南茨木では、東急不動産が将来の物流施設開発におけるスタンダードとしたい挑戦的な取り組みを大胆に取り入れている。

まずは、マルチテナント型施設としてのフロア提供力だ。「4階建て延べ16万1538平方メートルのフロアで、最大で40分割が可能な構成としています。多様な用途に対応したフロア構成は、LOGI’Q南茨木の特徴と言えます」(船山氏)。延床面積の広さはともかく、最大で40区画に分割して提供できる対応力。全国でも有数の水準であることは間違いない。

▲最大40区画への分割が可能

さらに、2〜4階の西側小分割対応区画には歩行者用デッキを設置。ダブルランプウェイを両端に従えた中央車路と動線を明確に分けることで、従業員の安全な歩行空間を確保し、就労環境に配慮している。

各フロアで特徴的な新施策を展開

各フロアに特徴的な機能を採用しているのも、LOGI’Q南茨木の特徴だ。1階西側には、冷凍冷蔵設備の導入に対応できる区画を設ける。「地中断熱工事を施しているほか、重量設備に耐えられるよう床荷重を1平方メートル当たり2.0トンに高めています」(伊藤氏)。同じく東側の低床区画は、重量貨物にも対応して床荷重を業界最高水準の規格である1平方メートル当たり2.5トン、天井高も6.5メートルとする。

▲倉庫内部

2階に上がると、ここは「少量危険物庫対応エリア」と位置付けて、全12区画にそれぞれ75平方メートルの専用スペースを設ける。「危険物の取扱ニーズの高まりを意識しました。引火性のあるアルコール類やスプレー缶、リチウムイオン電池などを安全に保管できるようにしています」(伊藤氏)

4階は、物流施設の将来像を明確に意識したフロア構成が印象的だ。南西端の1区画に、R&D(研究開発)スペースを設置。東急不動産がパートナー企業と共同で、ローカル5G(第5世代移動通信システム)を含めた物流DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスを検証する。さらに、東急不動産の物流をはじめとする各種ビジネスを紹介するショールームも開設するなど、物流施設としては異色な構成とする。

「隣接する西側3区画は、ローカル5G対応スペースとします。高速かつ低遅延で通信可能な利便性を生かして、より多様な物流サービスを提供するため取り組みの検討をさらに進めていきます」(伊藤氏)

「自然と都市が共存する」茨木市を意識したカフェテリア

最後に、物流施設における従業員の就業環境の確保に欠かせない共用部分についても、独自の発想で充実を図る計画だという。

1階北東端と4階南西端にそれぞれ設置するカフェテリア。それぞれ「原風景」と「近未来」をイメージした仕様とすることで、「自然と都市が調和した茨木市の姿をイメージ」(伊藤氏)する。何ともユニークな演出だが、こちらも地域との共生を意識した取り組みであることは間違いないだろう。ここにも、新たなブランドコンセプトの精神が息づいている。


▲(左から)1Fカフェテリア、4Fカフェテリア

さらに東急不動産がLOGI’Q南茨木における提供サービスとして注力するのが、環境負荷軽減の取り組み。「屋上に設置したソーラーパネルと、全国の発電所で生産されたクリーンエネルギーを100%使用することで、脱炭素経営を支援します」(船山氏)。東急不動産の再生可能エネルギー事業「ReENE」(リエネ)を活用した取り組みで、物流施設における環境対応策として、今後の動向に注目したい。

地域とともに発展していく物流施設がどうあるべきか。LOGI’Q南茨木こそ、その答えを導くための大いなる実験のひとつだと感じた。その発想は、24年にも着工を予定している物流施設の新プロジェクト「LOGI’Q神戸新長田」(神戸市長田区)にも受け継いでいく。

「LOGI'Q南茨木」概要

所在地:大阪府茨木市蔵垣内1-53
敷地面積:6万4509.91平方メートル(1万9510坪)
延床面積:16万1538平方メートル予定(4万8870坪)
構造:S造、地上4階建
交通:名神高速道路「吹田インターチェンジ」2キロ、近畿自動車道「摂津北インターチェンジ」3キロ、JR京都線「千里丘駅」1.5キロ
竣工:2024年1月予定
物件ページ:https://www.tokyu-logiq.com/kansai_minamiibaraki.html