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神奈川労働局の働き方改革取組企業訪問、現場取材

2023年11月22日 (水)

ロジスティクス神奈川労働局は、厚生労働省の定める11月の「過労死等防止啓発月間」の一環として、「過重労働解消キャンペーン」を展開、時間外労働の削減など働き方の見直しに積極的に取り組んでいる事業者を「ベストプラクティス企業」として、広く周知する取り組みを行っている。

▲左から、日産自動車グローバルサービス部品物流部部長・瓜生厳太郎氏、神奈川労働局長・木塚欽也氏、神奈川運輸支局長・尾林信二氏、フジトランスポート社長・松岡弘晃氏、久留米運送神奈川支店支店長・高辻忠治氏、フジトランスポート取締役・加藤篤男氏

21日には、初めての試みとして、神奈川労働局長と神奈川運輸支局長が合同で「ベストプラクティス企業」を訪問し、物流業界における2024年4月の上限規制適用に向けて、運送事業者と初着荷主が連携した事例を公開した。

受付システムはHacobuのムーボバースが使用されている

今年度のベトプラクティス企業には、荷主会社として日産自動車の相模原部品センター(神奈川県相模原市)、運送会社として久留米運送神奈川支店(同伊勢原市)と、フジトランスポート野田支店(千葉県野田市)が選ばれ、訪問場所として日産自動車相模原部品センターでの、荷主と運送会社共同の取り組みの様子が視察された。

日産の同センターは、日本全国への部品供給をこの1拠点から行っている。遠距離への配送では、フェリー便を主力とする北海道・九州地区への配送に比べて、中四国方面への配送は長距離トラック便にのみ依存している状況だった。中四国エリアまでは主に直行かつ、複数店舗へ立ち寄る運用でドライバーの負担も大きく、直行便では9時間以上、なかには10時間を超える配送エリアもあり、改善が求められていた。

今回、3社共同の取り組みとして運送会社からの提案でドライバー交代による運用を導入。ドライバーは、道中の交代地で運転を交代し、別トラックで出発地である相模原に帰ることで、ドライバー1人の輸送範囲を削減して労働負荷を削減した。改善後は中四国方面への遠方直行便をすべて廃止し、ドライバー交代による運用に移行しており、1人あたりの運転時間を8時間前後まで削減することに成功している。

ドライバー交代による運用には、運転手と車両を毎日確実にマッチングさせる高度な運行管理の課題があるが、運行管理に関してはGPS技術を利用したトラックGPSシステムの導入により、走行状況をリアルタイムで追尾してドライバーの労働環境を見える化、トラブルへの柔軟な対応も可能とした。

▲日産自動車・相模原部品センターでの荷積み

また、起点となる同センターでは、敷地内の駐車スペースやコンビニ、仮眠室などの厚生施設を全て開放し、ドライバーの快適な休息環境を提供するとともに、出荷製品の荷揃え完了後にトラックをSMSで呼び出すシステムを導入して待機時間をゼロ化するなど、効率化DXツールの活用も含めた運用改善の取り組みとなっている。さらに改善ルートにおいては通常より大型の10メートルボディ車両の活用などで積載量の増加、トラック台数とドライバー数の削減にも取り組む。

企業訪問にあたり、神奈川労働局長の木塚欽也氏からは「ベストプラクティス企業」のさらなる周知から過重労働解消の促進を目指すこと、神奈川運輸支局長の尾林信二氏からは省庁間や官民の連携を通じた24年問題対応の意義が語られた。また、物流の現状や効率化の取り組みについて質疑が行われ、現場課題を共有するとともに、実際にドライバーの休憩所や積み込み現場など運用の様子も視察された。

24年問題で特に焦点があてられる物流業界において、労働行政と運輸行政共同で働き方改善に臨む姿勢が強く打ち出されるとともに、事業者サイドも個社ではなく共同の取り組みによって、より実効性のある改革を実現できることが再確認された。