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商船三井、優良企業とイメージされる存在に

2024年1月5日 (金)

話題商船三井の橋本剛社長による年頭所感の要約は以下の通り。

(以下要約)

▲商船三井代表取締役社長執行役員の橋本剛氏(出所:商船三井)

まずはじめに令和6年能登半島地震の被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地域の皆様の安全と一日も早い復興をお祈り致します。

2023年を振り返って

昨年は、世界情勢の混迷が進み、地政学リスクが当社グループの事業に与える影響を改めて認識する1年となりました。ロシア・ウクライナ紛争は未だ終息の見通しが立たず、戦闘の長期化が懸念されます。昨年11月にはイスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突が発生し、フーシ派が紅海で商船を拿捕(だほ)する事件も起きました。米中関係は冷え込んだ状態が続いており、国際秩序や国際協調への影響が懸念されています。

経済面では、世界的なインフレ・金利上昇が進み、当社グループの事業では、船価の高騰、造船キャパシティーのひっ迫、コンテナ船市況の軟化などにより影響を受けました。

また、昨年は世界的に異常気象に起因する災害が多く発生し、地球環境の悪化を感じた1年でした。各国のGHG排出削減への取り組みは順調ではなく、国連気候変動枠組条約における目標達成が難しい状況にあると言われています。世界の代替エネルギーへの転換には依然として多くの課題があり、海運業に携わる私たちの責任も大きくなってきています。

事業環境は不安定な状況が続きましたが、ケミカル船・自動車船では好調な市況が続き、また円安の恩恵もあり、今年度の当社グループの業績は期初の想定を上回る見込みです。昨年4月に発表した経営計画「BLUE ACTION 2035」の初年度として順調なスタートを切ることができ、記念すべき140周年を良い形で迎えることができそうです。全グループ会社役職員の皆さんの努力に、改めて感謝の意を表したいと思います。

一方、昨年は残念ながら、3件の重大な事故・コンプライアンス事案がありました。当社グループは、外航海運事業に加え、クルーズ、フェリー事業を成長分野と位置付け投資を推進しています。安全と法令順守は事業活動の原点であり、事業規模の拡大ペースに安全、コンプライアンス対応が遅れをとることがあってはなりません。昨年明らかとなった課題としっかり向き合い、グループ一丸となって改善を進めていきます。

次に、今年度よりスタートした「BLUE ACTION 2035」について触れたいと思います。2023年の投資案件では、ダイビルによる不動産投資、クルーズ事業への投資、新ブランドの発表、日本初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリーの就航、風力をはじめとする脱炭素事業への投資など、非海運事業の話題が目立ちました。また、LNG船事業・海洋事業への投資も積極的に進めることができ、事業ポートフォリオの変革が進んでいます。海運事業においても、ドライバルク船、タンカー、自動車船で環境対応船の発注を着実に進め、またMOL Chemical TankersによるFairfield Chemical Carriers買収の道筋を付け、他社との差別化につながる投資を積み上げました。

2024年の展望

ことしの事業環境ですが、昨年に引き続き地政学リスクの動向に注目しています。米国をはじめとする主要な国・地域の政権を決める選挙が多く予定されており、世界情勢はより複雑化し、不確実性を増していくものと想定しています。

経済面では、欧米のインフレの鎮静化、利下げによる投資の回復など、徐々に成長軌道に戻っていくと期待しています。インド、東南アジア地域では、堅調な内需と政府主導のインフラ投資、それに伴うエネルギー需要の増加が見込まれ、事業機会は拡大していくと考えています。一方、中国経済は、不動産問題や個人消費の低迷により、安定した成長軌道に戻るにはもう少し時間が掛かるでしょう。海運業界は世界情勢に影響を受けますが、私たちは開かれた貿易を通じて世界の人々の生活を豊かにするという理念の下、地政学リスクや経済の動向を織り込みながら、最適な戦略を定め、しっかり取り組んでいきたいと思います。

また、環境戦略の推進も重要です。既存技術の活用による環境対策に加え、早期にゼロエミッション船の実現に目途をつけ、技術革新で業界をリードしていきたいと思います。さらに、今年は経営管理の高度化の一環として国際会計基準(IFRS/International Financial Reporting Standards)導入に向けた準備が本格的に始まります。経営の透明性向上とグローバル化に向けた大変重要な取り組みです。

ことし4月から、「BLUE ACTION 2035」の2年目に入ります。引き続き変革に向けた取り組みを進め、グループ全体を成長軌道に乗せていくための基盤を固める重要な1年となります。変革推進に必要な3つの重要ポイントについてお話します。

はじめに、人財です。「Human Capitalビジョン」の精神と基本原則に沿って、一人一人が強みを伸ばし能力を最大限発揮できるよう、人事制度の改革に取り組みます。次に、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。昨年「DXビジョン」を策定し、ビジネス・カルチャーの両面で徹底的なデジタル化を進めていますが、早期に業務・組織の最適化を実現し、新たな価値の創造と社会課題の解決に挑戦する企業グループにしていきたいと思います。そして、安全です。ことしは、商船三井グループの新「安全ビジョン」を発表します。安全を実現するための人財育成、DX推進、テクノロジーの導入、安全管理体制の見直しなど、海運業に留まらず大胆かつ戦略的に取り組み、世界最高水準の安全品質を社会に提供していきます。

優良企業とイメージされる存在に

昨年12月、私はドバイで開催されたCOP28に出席しました。COPや世界経済フォーラムに参加することで、世界での当社グループの認知度・ブランド力を高めたいと考えています。環境政策をはじめとするサステナビリティ課題に積極的に挑戦する企業イメージをアピールし、世界の重要なプロジェクトへの参画など、新たなビジネス機会の創出につなげていくため、今後も積極的に取り組んでいきます。

私はこれまで、「商船三井グループをあらゆる面で優良企業とイメージされる存在にしたい」と述べてきました。サステナビリティ課題への対応、サービス品質の向上、収益力、人財力、技術力、従業員のエンゲージメントなどあらゆる面において、全てのステークホルダーから評価・信頼される企業グループを目指していきたいと思っています。

多くの難しい課題がありますが、皆さんが健康で当社グループで働くことの誇りを常に感じられる企業グループに成長できるよう、私も全力で挑戦していきます。

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