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【年頭所感】苦境の原因、直視せよ[商船三井]

2013年1月4日 (金)

話題商船三井の武藤光一社長による年頭挨拶は次の通り。



■苦境の原因直視せよ
昨年度の史上最大の赤字に続き、今年度もそれと同規模の赤字を計上する見通しとなっている。欧米、中国の経済減速、円高、バンカー高など外部環境が海運業にとって厳しいものであったことも要因ではあるが、このような苦境に陥った原因は何か、冷徹に現実を直視せねばならない。

最大の原因は、未曾有のドライ市況・タンカー市況の低迷によって同社のフリー船隊が大幅な赤字運航に陥っていることだ。2012年の新造船竣工量は過去最大であった前年を上回るペースで推移したのに対し、中国の経済成長の鈍化によって資源・エネルギーの海上荷動きが伸び悩んだ結果、船腹需給ギャップが拡大し、海運市況が歴史的低水準で長期間推移した。

これで、市況高騰時には大幅な利益を上げた同社フリー船隊も、これまでの営業努力で積み上げた安定利益を大きく毀損する損失の発生を余儀なくされ、会社全体の損益は赤字に陥った。

今年の後半あたりから、新造船供給量が減少する一方、新興国を中心に堅調な荷動きが見込まれ、需給ギャップの改善で海運市況は回復してくると思うが、近年大幅に規模を拡大してきた中国の造船所などが操業維持のために今後も新造船をハイペースで建造し続けた場合には、市況回復の足枷となる可能性もある。

2013年の経営環境も引き続き「大変厳しい場合も有り得る」というストレスシナリオをベースとして、黒字化必達のために、市況回復頼みではない事業構造への転換が求められている。

■次元を異にしたコスト削減を
この状況にどのように対処すべきか。

まずは、赤字の元凶となっているフリー船のマーケットエクスポージャーを縮小する必要がある。一般論としては、マーケット低迷時は競争力のあるフリー船を仕込むタイミングではあるが、当面マーケットの変動による損益の下振れリスクを小さくするため、タイミングを見計らいながら、できるだけ貨物を取ってマーケットエクスポージャーを縮める努力をしなければならない。

そのためには、アンテナを高く張り変化の兆しをいち早くつかんで顧客のニーズを的確に捉え、当社の信用力と技術力を活用し、一人ひとりの営業力を十二分に発揮して、安定収益の上積みに取り組んでほしい。さらに、フリー船の隻数そのものを削減するために、スクラップ、売船、返船、竣工遅延など、取引先からの協力を得ながら、できることをすべて実行して、市況リスクへのエクスポージャーを抑え、耐性を高めることが必要だ。

これまでの営業活動のスタイルから新たなビジネスモデルへの変革も必要。既に同社では定航部門の本社機能の香港への集約、バルカー・タンカー部門のシンガポールでの拠点拡充などを進めており、今後さらに海外のシッピングセンターで顧客志向の営業展開を急ピッチで進めることが重要だ。創意工夫で同社ならではの事業形態を追求してほしい。

さらには、次元を異にしたコスト削減を実行せねばならない。目の前にあるモノ、一つ一つの自分のアクションを指差し確認してなぜそうしているかを見つめ、あらゆるレベルでコストの棚卸し、業務プロセスの改善を押し進めてほしい。これまでコスト削減は減速航海の深度化などで一定の成果を出しているが、私の目から見てもまだまだ余地はある。私自身も意識してあらゆる出費を見つめ直していこうと思う。

平常時であれば、今年は新たな3カ年中期経営計画のスタートを切る年だが、これまで話してきた具体的なことすべてを実行プランとして盛り込んだ2013年度の単年度経営計画を策定し、黒字化必達のために集中力とスピード感を持って進めていきたいと考えている。

長期低迷する市況の回復を期待する気持ちも正直なところあるだろうが、マーケットを作っているのは日々のビジネスを決めているわれわれ自身であることも認識してほしい。コンテナ船事業では、厳しい環境下でもアライアンス再編による船腹調整、減便、消席率追求の自制などで昨年前半には運賃修復が図られた。このように、事業環境に対して決して受け身にならず、自ら主体的にマーケットをリードする気概をもって正々堂々と市況に対峙してほしい。