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中小荷主事業者の24年問題対策に遅れ、商工中金調査

2024年5月31日 (金)

調査・データ商工中金は、中小企業の景況感をはじめとする実態のタイムリーな把握を目的として、取引先中小・中堅企業を対象にアンケート調査を実施し、分析結果を「『物流の2024年問題』に対する中小企業の動向」としてまとめた。

アンケートはことし2月16日から3月4日まで、商工中金の取引先中小・中堅企業を対象に行った。有効回答数は2026社で、回答企業の内訳は荷主事業者52.8%、運送事業者11.6%、両方9.6%と、トラック運送サービスを利用する側(荷主事業者)の回答が多い結果であった。

荷主事業者の認識・対策遅れが浮き彫りに

まず、事業リスクの認識・対策状況についての施設門では、「対策がおおむねできている」との回答は、運送事業者が41.1%いた一方で、荷主事業者が19.8%にとどまった。

▲運送事業者の方が対策が進んでいる割合は高い(クリックで拡大、出所:商工中金)

運送事業者の方が対策が進んでいる割合は高く、荷主事業者は「事業リスクを認識しているものの、対策には未着手」が3割を占め、両者の隔たりは大きい結果となった。

ドライバー人材確保のため、賃上げの動き広がる

続いて、24年問題による影響を聞くと、運送事業者からは「人件費の上昇」、「受注余力減少」、「管理負担・管理コスト増大」などが上位に挙がった。

▲24年問題による影響の運送事業者からの回答(クリックで拡大、出所:商工中金)

24年問題対策としての取り組み状況を見ると、「運賃引き上げ・業務削減」(52.3%)、「(荷主側との)協議の実施」(45.8%)、「庸車の利用」(42.6%)はすでに多くの運送事業者が着手しており、「ドライバーの給与等改善」については着手済みか、あるいは今後検討するとの回答も比較的多く、賃上げの動きの広がりが期待される。

また、過去5年間のうちに「事業再編」を行った運送事業者は、対策に未着手の事業者と比べ、直近1年間の景況判断指数は高い傾向が出た。

自由回答では、懸念材料として「ドライバーの採用難化」「人件費などのコストアップ」「業務効率化のための設備投資」が挙げられた。具体的な対策としては、「効率化のための横連携(他社との協力体制構築を検討)」「ドライバーの待遇改善・人材確保のために、販路拡大、賃上げ交渉、DXなどによる生産性向上・業務効率化」が挙がったほか、「荷主の認識が高まり、運賃交渉がしやすくなった」との感触も得ている事業者もいた。

荷主は運送事業者との運賃交渉に前向きも、物流コスト上昇に懸念

一方で、荷主事業者が受ける影響は24年問題による影響を聞いたところ、93.8%とほとんどの荷主事業者が「物流コストの上昇」を挙げた。そのほか、「リーダタイムの長期化」(66.2%)や「輸送能力低下」(42.5%)も高い回答率を得た。

▲ほとんどの荷主が物流コストの上昇を懸念(クリックで拡大、出所:商工中金)

荷主事業者のほとんどが物流コスト上昇を懸念する一方で、同じ質問に対する運送事業者の回答を見ると、「運賃引き上げによる収益改善」(26.1%)に対し、「人件費上昇による収益悪化」が上回っているため、荷主側が運賃引き上げに応じたとしても、運送事業者の収益改善には寄与しない懸念があると分析している。コンプライアンスリスクの懸念については、荷主事業者は運送事業者と比べても極めて少なく、荷主側の危機感の醸成がまだ進んでいない可能性を示唆した結果となった。

荷主側の24年問題対策としての取り組み状況は、「運賃・料金引き上げ」、「協議の実施」は多くの事業者が着手済みまたは1年以内に検討すると答え、「発着時間・頻度の柔軟化」や「荷待ち・荷役の削減」の取り組みも実施率が高かった。「共同配送の推進」、「モーダルシフト」、「協力事業者の拡大」も、今後検討する取り組みとして重視されている結果となった。「協議の実施」、「運賃引き上げ」に関する取り組みは、荷主事業者が運送事業者を上回っており、運送事業者との交渉に前向きな姿勢が窺える。

同じ質問で、単に「物流コストが増加する」と考える荷主事業者と比べ、「輸送能力の低下・喪失(荷物が運べなくなる)」まで想定する荷主事業者は、全体として今後新たに各種施策への取り組みを検討する比率が高い傾向にあった。

荷主事業者からの自由回答では扱い商品の特性や業種の違いにより対策の難易度も異なるため、危惧の程度も問題意識にも温度差が見られた。具体的な対策として、「積載率向上でコスト管理」、「『物が運べない』リスク回避のために、複数の運送業者の開拓」、「運送業者との定期的な協議の実施(値上げ実施)」、「両者の効率化の推進、他の運送業者の可能性模索」、「共同倉庫・共同配送の模索」などが挙がった。

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LOGISTICS TODAY編集部
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