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Landport(ランドポート)・Techrum(テクラム)から見えた、次世代の物流施設

物流施設のイメージを塗り替える、野村不動産

2024年8月20日 (火)

拠点・施設9月10日-13日までの4日間、東京ビッグサイト(国際展示場)で「国際物流総合展2024」が開催される。物流にとってなくてはならない存在である倉庫。近年では冷凍冷蔵など利用目的を絞ったり、物流業務の自動化を前提とした倉庫も登場し、単に「モノを保管するだけ」の倉庫はその役割を終えつつある印象だ。

大手デベロッパーの野村不動産は「貸して終わり」ではなく、継続的な運営を視野に入れた物流施設の開発に力を入れている。建築費の高騰などにより、大型の施設開発ができる資金力を持つデベロッパーの存在感が増しつつあるなか、野村不動産はどのような未来図を描くのか。

引き出しとマッチング力が強みの、企業間共創プログラム「Techrum」

野村不動産の物流施設を特徴づける要素の一つとして、企業間共創プログラム「Techrum」(テクラム)の存在が挙げられる。Techrumは「荷主や物流事業者の課題解決」という共通目的のために、複数企業が協働する取り組みだ。庫内のDX(デジタル)化を中心に業務支援を後押しし、作業効率のアップや庫内の省人化を得意とする。その旗振り役であり、まとめ役でもあるのが野村不動産である。

▲「Techrum」の概要(クリックして拡大)

参加企業は間もなく100社を超える圧倒的な勢い(2024年8月現在)で、提供できるソリューションも多種多様だ。マテハン機器の提供はもちろん、庫内システムや監視カメラまで手がける。テナントごとに異なる課題にリーチできるだけの提案の引き出しの多さと、課題に見合った提案のマッチング力が強みだ。

テナントからすると窓口を一本化できることも大きい。通常、マテハン機器をレンタルしたり、システムを導入したりするにはそれぞれのメーカーと個別にやりとりする必要がある。しかし、メーカー各社との折衝はTechrumを通して野村不動産が代わりに引き受けてくれる。

また、機器のレンタルも可能なので、十分な検証やトライアルを重ねた上で導入するかどうかを決められる。似たようなソリューションを持つ企業の製品を横並びにして、最適なものを選ぶことができるのだ。テナントにとって、これほど贅沢なこともないだろう。

野村不動産はTechrumにおいて、企業イノベーションの潤滑油の役割も果たしている。Techrumには、競合同士のメーカー企業が集まったときに起こりがちな摩擦現象は今のところ見られない。むしろ、きっかけさえあれば協働化が進む気配があるという。「われわれが間に入らなくても、ユーザー企業は商品やサービスを比較する。参加企業はむしろ、比較検討の場に出られることを喜んでくれている」と野村不動産の担当者は語った。またTechrumを間に挟んでいることが安心材料になり、企業同士の共存・協調に向けたコミュニケーションが活発になることも想定される。

野村不動産の担当者も「Techrumを認知してもらうフェーズは終わった。ここからは参加企業の協働を促し、荷主・物流事業者にいかに具体的な活用例を示せるかの段階にきている」と話す。

自動倉庫シェアリング・地域共生を掲げる、「Landport横浜杉田」

そんななか、自動化機器の導入が完成前から決まっている物流施設がある。2025年3月末に完成するLandport横浜杉田(横浜市金沢区昭和町)だ。

▲Landport横浜杉田の完成イメージ

今までは、自動化機器検討はあくまでオプションであり、「倉庫が先、自動化が後」というのが物流拠点立ち上げの通例だ。しかし、Landport横浜杉田にはビルトインによる立体自動倉庫がはじめからついてくる。

飲料水や衣料品は季節ごとに需要が変化し、在庫の増減も大きい。テナントからすると在庫が多いときに合わせて倉庫を借りるのは非効率的だ。そこでLandport横浜杉田ははじめから一部を「シェアリング式の立体自動倉庫」にし、テナント側に貸し出す。在庫の増減に即応できるよう3期制を採用。1-10日、11-20日、21-30日というように1カ月を3分割し、短いスパンでの利用を可能にしている。

▲自動倉庫シェアリングのイメージ(クリックして拡大)

野村不動産がこういった倉庫の貸し方をする背景には日本の労働事情がある。日本は周辺各国と比べて人件費が安い。そのため倉庫を完全に自動化するよりも、一定数以上人を雇った方がコストパフォーマンスが良い。自動化機器と人間をどちらも活用する「半自動化」が、今の日本には合っている。

とはいえ、たとえ半分でも自動化を進めるにはテナント側にかかる負担が大きいのが実情だ。「立体自動倉庫をシェアリングする」という発想は、こういった実情に対する野村不動産なりの答えでもある。ユーザー企業に代わって物流施設を開発する、デベロッパーらしい取り組みといえるだろう。

▲「オープン・シェア型物流施設」概要(クリックして拡大)

またLandport横浜杉田は「地域共生」を掲げる物流施設でもある。施設の北側と東側には誰でも自由に出入りできる広場をつくった。ベンチやテーブルを設置し、周辺の地域住民の方々が憩い、集える場を提供したい考えだ。

さらに屋上には菜園をつくる計画がある。こちらでは定期的に訪れる専門スタッフの指導のもと、農作物を育てることができる。利用は会員制で、はじめのうちこそテナント従業員に限定するが、定期的に開催されるイベントでは周辺住民の方々にも開放する予定だ。

地域とのつながりを語る上で特に象徴的な存在となるのが、敷地内に植える杉田梅。杉田梅は地元杉田に由来する梅で、品種改良を一切加えていない日本古来の貴重な品種だ。Landport横浜杉田には地域共生の象徴として成木を植えるほか、苗木から地道に育てる計画もある。

 
▲屋上菜園(左)と憩いの場(右)完成イメージ

地域とのつながりを絶たないために、定期的に交流を促すイベント開催も予定している。野村不動産としては、かつてはネガティブな印象が付きまといがちだった物流施設のイメージを一新したい考えだ。

「地域のシンボルとして、働いている人たちが誇りに思えるような施設をつくりたい」という野村不動産の担当者の言葉も、どこか熱を帯びていた。

シリーズ至上最大規模・SCの中核担う、「(仮称)Landport東海大府」

さらに野村不動産は、愛知県大府市と東海市にまたがる物流施設「(仮称)Landport東海大府」を2025年10月末に完成させる見通しだ。

▲(仮称)Landport東海大府完成イメージ

(仮称)Landport東海大府は5階建て、延床面積は24万6538平米にのぼる。Landportシリーズ至上最大規模の施設の広大さはもとより、あらゆる物流ニーズに応えられる立地条件や施設スペックなど、マルチな魅力からサプライチェーンの中核を担う施設運営を後押しできることがこの施設の強みだ。

▲狭域図(クリックして拡大)

物流施設の価値はロケーションが決めるといっても過言ではない。その点、(仮称)Landport東海大府の立地は絶妙である。名古屋の中心地までは車で30分ほど、最寄りの伊勢湾岸自動車道「大府」IC(インターチェンジ)、知多半島道路・名古屋高速3号大高線「大高」IC(インターチェンジ)からはそれぞれ0.5kmの好立地だ。

このポイントからだと関東・関西のどちらにも効率的にリーチできるが、特に注目したいのは東京までの所要時間だ。渋滞にはまらなければ、東京までの所要時間は3時間半ほど。ドライバーは原則、4時間ごとに30分の休憩をとらなければならない。これはドライバーの労働環境を改善するためのルールだが、その一方でSA(サービスエリア)にトラックが過剰に集中するという問題も引き起こしている。停まる場所がないドライバーは、やむをえず一般車両の駐車マスをいくつも占有する形でトラックを停める。結果、一般車両が駐車できるスペースが減るだけでなく、SA全体の見通しが悪くなり、歩行者にとっても危険な状態になっている。しかし、(仮称)Landport東海大府を利用した場合、拠点間を一気に駆け抜けることができる。

▲免震装置イメージ

施設の強固さもアピールポイントの一つだ。(仮称)Landport東海大府は揺れに強い「免震構造」を採用しているため、大きな地震が起きても落下などによる荷物の破損が起きにくい。停電時に72時間運転可能な「非常用電源」もあり、有事に対する備えは万全だ。

「危険物倉庫」も設置され、近年、ニーズが高まりつつある危険物の保管も請け負う。コロナ後に需要が高まったアルコール、堅調な需要を誇るリチウム電池なども保管することができる。危険物の保管を許可しない自治体も少なくないなか、この情報が持つバリューは高い。

「国際物流総合展2024」の野村不動産ブースでは、「Landport横浜杉田」・「(仮称)Landport東海大府」の2大物件を中心とするシリーズ紹介や、「Techrum」参加パートナー企業の様々なソリューションを連携させたデモ展示を目の前で体感ができるそうだ。

野村不動産は「Landport」の開発・運営を通じて、テナント企業やドライバーの働く環境、周辺の地域住民などとの関係を重視し、物流施設そのものの価値を大きく変えようとしている。かつてはネガティブな印象が付きまとっていた物流施設。野村不動産はそのイメージをどう塗り替えていくのか、次の時代の物流施設の在り方について、「国際物流総合展2024」ではその片鱗を目撃することができるはずだ。

国際物流総合展2024 「Techrumスタンプラリー」のご案内

野村不動産はTechrumの参加企業とともに、各社の出展ブースを巡るスタンプラリーを実施する。各ブースで押してもらえるスタンプを集めると、さまざまな景品を受け取ることが可能だ。

当日、約20社におよぶTechrumの参加企業のブースのうち、5社以上を回ってスタンプを集めると、野村不動産ブースにて抽選に参加できる(※スタンプ取得には、名刺交換またはバーコードの読み取りが必要)。抽選はハズレなしで、お肉のセットやケーキ、デジタルギフトなどの豪華景品が用意されている。

スタンプラリーの台紙はTechrum参加企業が会期前から配布予定。「LOGISTICS TODAY」を見てスタンプラリーに参加された方には、「LOGISTICS TODAYを見た」ことを伝えると、もう1回抽選ができるチャンスがある(※1名につき1回限り)。多くの読者の方にこのチャンスを活用していただきたい。