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請求作業を自動化し、物流現場のDX化を促進

2024年10月21日 (月)

話題コマースロボティクス(東京都港区)はEC(電子商取引)物流の効率化や物流現場のDX(デジタルトランスフォメーション)化推進につながるさまざまなソリューションを提供するスタートアップ企業だ。同社が開発・販売する「SALESGRAM」(セールスグラム、旧名:サブスクビル)は、荷主への請求作業を自動化することに焦点を当てたソリューションで、ユーザーは煩雑な日々の業務から解放されるという。同社の代表取締役である伊藤彰弘氏に、SALESGRAMの強みや物流業界のDX化の現状を聞いた。

引き出しの多さが強み

(イメージ)

2013年に設立されたコマースロボティクスは、物流現場での多岐にわたる業務をカバーするソリューションを複数用意している“引き出しの多さ”で注目されている。同社の代表的なソリューションの1つである、OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)が一体となったRPA内蔵型EC自動出荷システム「Commerce Robo」(コマースロボ)は、受注処理から在庫管理、出荷管理といった業務を自動化する仕組みだ。Shopify(ショッピファイ)や楽天といったショッピングモールやショッピングカートと連携が可能なシステムで、すでに導入社数はことし1月時点で950社、年間出荷件数は3000万件を超えている。

手間の掛かる物流業務の1つに請求作業を挙げる物流事業者は少なくない。取引先(荷主)との契約に基づき、入荷、保管、出荷、配送、返品といったアクティビティーごとに請求データを記録することが求められるケースが多いからだ。しかも現場から寄せられる記録データは一様ではなく、WMSによってデジタルで管理されているものもあれば、手書きの日報に記載されているものもある。また、下請け事業者から形式不問のデータが送られてくることも珍しくない。こうしたフォーマットが統一されてないデータを自動処理し、これまで紙ベースが中心だった請求作業を効率化する目的で開発されたのが、同社のSALESGRAMだ。

(クリックで拡大)

言うまでもなく、物流事業者は荷主ごとに契約条件や料金体系が異なっている。SALESGRAMの最大の特徴は、複数荷主の見積もりベースの料金体系を柔軟に設定できることにある。物流現場の実態に即した機能を提供することで、管理者の業務負担を軽減する。

データ管理機能の利便性も高い。物流現場では、Excel(エクセル)やCSVなど、さまざまな形式のデータが日常的に扱われており、従来型のシステムではデータを統合するのに多くの手作業を要していた。これに対して、SALESGRAMはデータ形式を自動変換し、システム内で一元管理できる機能を持つ。顧客コードを設定すれば、システムが自動的に荷主ごとにデータを分割し、適切に処理してくれるため、作業スピードは飛躍的に向上する。

▲「SALESGRAM」のシステム連携フロー(クリックで拡大)

「DXで社会基盤であるインフラを最適化したい」

コマースロボティクスの代表取締役である伊藤氏は、物流業界に新たな価値を提供することを目指して同社を設立した。経営ビジョンとして、単なる部分的な改善にとどまらず、物流という社会インフラの全体を最適化することを挙げる。「全体最適化」は、サプライチェーンマネジメント(SCM)を展開する上で極めて重要な概念であり、物流現場での豊富な実務経験を持つ同氏の経営哲学の基盤となっている。

▲コマースロボティクス代表取締役の伊藤彰弘氏

同氏は物流業界でのキャリアをスタートさせるまで、製造業などで経験を積んだ。その後、物流センター長として現場に立ち、現場の実態を理解した。そこでの経験を通じて、「物流業務の最適化には、現場の知識と理論的アプローチの双方が必要だと痛感した」(伊藤氏)という。実際、物流の理論を習得するため、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)のロジスティクス経営士資格を取得しており、社員にも同様の資格取得を推奨している。

同氏は「今後の物流業界の最優先課題はロボットの最適化と紙利用の廃止だ」と力説する。EC分野ではDXが進展し、現場にはロボットが導入され始めているが、きちんとノウハウを蓄積できている企業は数える程度にすぎない。コマースロボティクスは、WMSを通じてロボットに最適化されたデータを提供することで、生産性をさらに高めることを目指している。

物流現場での紙の使用は、情報伝達や保管の面で非効率であり、DX化の妨げとなっている。SALESGRAMの開発もDXの一環として進められており、請求作業の自動化を通じて、紙使用の削減を目指している。

伊藤氏は物流業界の全体最適化と社会インフラのDXを進化させることを重要視する。彼のリーダーシップのもと、コマースロボティクスは今後も物流業界に新たな価値を提供し続けるはずだ。

一問一答

Q. スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?

A. N-1フェーズです。24年5月にはシリーズCで4億円、累計6億円の資金調達を実施しています。

Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。

A.26年にIPO(新規上場)を目指しています。またインド工科大学から新卒者を積極的に採用するなどプロの人材を増員することで、事業領域の拡大を図っていきます。

「コマースロボティクス」ホームページ