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緊急オンラインイベント「物流、非常警戒時代――迫る火災とサイバーの脅威」

物流自動化に潜む火災とハッカー、リスクに備えよ

2025年12月19日 (金)

ロジスティクス人手不足にあえぐ物流業界が頼みの綱とする自動化ロボット。だが、その輝かしい技術革新の陰で、見過ごせないリスクが顕在化しつつある。ロボットが火災の引き金となる危険性、サプライチェーン全体を脅かすサイバー攻撃。こうした新たな脅威にどう向き合うべきか──本誌は19日、緊急オンラインイベント「物流、非常警戒時代──迫る火災とサイバーの脅威」を開催した。

ロボット開発の第一人者として知られるシリウスグループ創業者の蒋超(アダム)氏と、サイバーセキュリティーに詳しい東京海上日動火災保険火災・企業新種業務部サイバー室専門次長の教学大介氏が登壇。物流現場を取り巻く危機の実相を語り、現実的な対処法を示した。

▲LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長(左)とシリウスグループ創業者の蒋超(Adam Jiang)氏(右)

「わずか数秒で大火災」──リチウムイオン電池の恐怖

「リチウムイオン電池が出火すれば、数秒で大火災になる」というアダム氏の警告は明確だ。物流ロボットの心臓部であるこの電池は、高エネルギー密度ゆえに、ひとたび制御を失えば容赦なく炎を吐く。「火災が起きた時の速さは桁違い」とアダム氏。ネット上には、電動バイクが充電中に一瞬で火の玉と化す映像が溢れている。わずか数秒で倉庫全体が火の海、それは絵空事ではないという。

問題は炎の走る速さだけではない。スプリンクラーが水を吐くまで数十秒。だがリチウムイオン電池の火はその前に暴れ出す。「既存の消火設備では追いつかない」とアダム氏が警鐘を鳴らす。この致命的なタイムラグが、被害を決定的なものにすると指摘する。

リチウムイオン電池の火を前に、「既存の消火設備では追いつかない」と警鐘を鳴らすアダム氏

もっと厄介なのは、日本の安全基準の“抜け穴”だ。「PSEマークは充電器だけ。肝心のバッテリー本体は対象外」とアダム氏が盲点を突いた。欧米や中国が課すCE、CCC認証に比べ、日本は電池そのものやソフトウエアの検証を義務化していない。「やるかやらないかは、メーカー次第」と心もとない。この曖昧さが、現場にリスクを放置している。

また、バッテリーマネジメントシステム(BMS)という見張り役の良し悪しで、天国と地獄が分かれる。バッテリーの状態を見張り、異常の気配を察知すれば即座に充放電を止める。理屈は単純だが、肝心の中身はメーカー任せ。「基準なんてまだない。各社バラバラ」とアダム氏。要するに、導入時にBMSの仕様を自分の目で確かめなければ、安心など買えないということだ。

物流が狙われる理由、サプライチェーンの脆弱性

イベント後半、教学氏がサイバー攻撃の実相を語った。「ランサムウェアは、かつて『もしも』の話だった。今や『いつ来るか』の問題に変わった」

物流が狙われる理由は単純明快だ。「攻撃する側は、効率を考える」と教学氏。影響が大きければ身代金も取りやすい。物流拠点、とりわけ3PL企業は複数の荷主の荷を一手に扱う。1か所が止まれば、連鎖的に複数の企業が立ち往生する。この波及効果の大きさが、攻撃者には魅力的に映るという。

東京海上日動火災保険火災・企業新種業務部サイバー室専門次長の教学大介氏

「セキュリティー対策をコストと見るか投資と見るか、この認識の差が、企業の運命を分ける」という教学氏の言葉は核心を突く。「費用はコストになってしまい、投資にはならない。しかし、これを怠ると何倍もの損害を被ることになる」と懸念する。目先の出費を惜しめば、後日その何倍もの代償を払わされる。計算は明白だが、いざ決断となると二の足を踏むのが実情のようだ。

教学氏が切り札として挙げたのが、アタックサーフェイスマネジメント(ASM)だ。その仕組みは企業のサイバー防御の穴を合法的に外から測り、点数で示す。取引先の安全度を数字で見極められるこの道具は、欧米では既に実用化されている。米国の大手製造業では「スコアが低ければ取引お断り、ただし改善命令は出す」といった使い方が定着しつつあるという。

「対岸の火事」ではない、全て「自分ごと」

「うちは中小だから関係ない」「大規模な自動化はしていない」──そう考えるのは早計だ。サプライチェーンはつながっている。取引先の拠点が停止すれば、影響は瞬く間に波及する。火災もサイバー攻撃も、もはや「対岸の火事」ではない。すべての物流企業にとっての「自分ごと」なのだ。

経済産業省は2026年度末までに、サプライチェーンリスクの評価制度を開始する予定だ。「義務ではなく、あくまで推奨」としながらも、教学氏は「多くの業界で、この制度を使って川上企業から川下企業へ『こういう対策をとってほしい』という依頼が来るだろう」と予測する。

リスクは刻々と姿を変える。自社の物流をどう守るか。ロボット導入の際は、バッテリー安全基準の確認、BMS機能の検証、保険対応の確認を怠れない。サイバー対策も同様だ。今回のイベントを通じて、経営陣も現場も、危機は今そこにあると心得て、行動に移す時だと実感した。

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