ロジスティクス商船三井は19日、社長人事に関する記者会見を行った。同社は同日、来年4月の社長交代を発表していたが、橋本剛社長と田村城太郎・次期社長が登壇し、人事の背景や新たな経営体制の考え方について説明した。会見では、長期経営計画「BLUE ACTION 2035」のフェーズ2を見据え、経営体制を協調型マネジメントへ移行する方針が改めて示された。

橋本氏は、社長交代のタイミングについて、「BLUE ACTION 2035」のフェーズ1が今年度末で終了する節目にあたると説明した。その上で、「グループの規模が著しく拡大し、社長業務も増大した。一人でカバーできる範囲に、時間的、肉体的な限界を感じるようになった」と述べ、自身の年齢や業務負荷を踏まえた判断であることを明らかにした。橋本氏は来年4月から6月まで代表取締役として引き継ぎを行い、その後は代表権を持たない取締役会長として監督業務に専念する。
在任期間を振り返り、橋本氏は、業績面に加え、組織風土の変化を成果として挙げた。長期にわたる海運不況を背景に、同社ではリスク回避やコスト削減を重視する姿勢が強まっていたが、在任中は「守りから攻めへの転換」を意識し、人事制度や報酬制度の見直しなどを進めてきたと説明した。

▲橋本剛社長
一方で、今後の課題として、安定収益事業の収益化や人材育成を挙げた。ケミカルタンクターミナル、クルーズ船、洋上風力、FLNGなどへの投資は積み上がっているものの、「本格的な収益貢献にはなお時間を要する」とし、フェーズ2における継続的な取り組みが必要との認識を示した。
田村氏は、来年4月の社長執行役員就任に向け、「極めて大きな責任を感じている」と述べた。自身の経歴については、海外駐在やコンテナ船事業を中心にグローバルな組織運営に携わってきた点に触れ、フェーズ2では、これまでに実施した大規模投資を収益につなげる局面になるとの見方を示した。
今後の経営姿勢について田村氏は、「まずは社内外の意見を丁寧に聞きながら方向性を定める」と述べる一方、「聞くことに偏ると最大公約数的な判断になり、スピードや大胆さを欠くおそれがある」と指摘した。協調型マネジメントのもとでも、最終的な判断と責任は社長として担う考えを示した。

▲田村城太郎次期社長
今回の体制移行では、CEO、COO、CFOの三役による協調型マネジメントを採用する。橋本氏は、「エグゼクティブチームを組み、組織的に経営することが必要」と説明した。地政学リスクへの対応、脱炭素に向けた投資、巨額投資の回収、資本効率を巡る投資家の視線など、経営環境が複雑化するなか、一人に依存しない意思決定体制を構築する狙いがある。
質疑では、PBR(株価純資産倍率)を意識した資本政策についても質問が出た。橋本氏は、投資を先行させてきた結果、資産規模が拡大し、投資回収までに時間差が生じていると説明した上で、「短期的な株価対策よりも、中長期的な成長とキャッシュフローの改善を重視すべき」との考えを示した。田村氏も、投資の成果をいかに早期に利益へ結び付けるかがフェーズ2の重要課題になるとの認識を示した。
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