
▲物流拠点の今後のあり方に関する検討会の第4回会合
ロジスティクス国土交通省は26日、「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」(座長:流通経済大学教授・大島弘明氏)の第4回会合を開催し、国の物流政策における新たな中心概念として「基幹物流拠点」を明確に位置付けた最終報告書案を示した。物流2024年問題が進行するなか、抜本的な構造改革を進める政府の方針に沿ったもので、今後は関係省庁や自治体、物流業界との緊密な連携を図り、具体策を速やかに推進する方針だ。

▲国土交通省物流・自動車局の鶴田浩久局長
会合冒頭、国土交通省物流・自動車局の鶴田浩久局長は「前回の検討会で事務局が示した方向性について活発な議論がなされた。今回報告書案という形で提示し、さらに具体的な検討を進めたい」と述べ、「検討会には関係省庁や企業など幅広い関係者が参加しており、単純な解決策ではなく慎重かつ現実的な方向性を見出す必要がある」と強調した。また、「拙速な判断を避け、関係者の立場を十分に考慮しながら、実現可能な総合的な解決策を目指したい」と述べ、限られた時間のなかでの率直な意見交換を呼びかけた。
「基幹物流拠点」設定の背景
「基幹物流拠点」を新たに定める背景には、物流業界が直面する深刻な人手不足や労働時間規制による輸送能力のひっ迫がある。特に「物流2024年問題」により、トラック運送の生産性向上や労働環境の改善が喫緊の課題となっており、これまで物流拠点の定義が曖昧で政策的な支援が限定的だったことから、明確な基準を設け積極的な支援を行う必要性が高まっている。
今後は、物流拠点の整備に関し、国が基本的な方針を策定すること、物流拠点が担うべき役割を明確にし、それらを備えた物流拠点の整備を促進すること、公共性の高い物流拠点の整備・再構築を推進することの3点を特に重視して取り組む。
「基幹物流拠点」の明確な定義を提示
報告書案で示された「基幹物流拠点」とは、これまで曖昧だった物流拠点政策における基幹施設を明確化するものであり、国として積極的な整備・支援を行う対象となる。具体的には以下の6つの要件が設定された。
(1)トラック輸送の変容に対応し、幹線輸送と地域配送を円滑につなぐ機能や長距離幹線輸送における中継機能、ドライバーの労働環境改善につながる機能を備えていること
(2)物資の効率的な集約と流通を促進する機能を備えていること
(3)地方公共団体が物流事業者等と共同で主体的に関与し、地域振興や産業創出を図る施設であること
(4)ダブル連結トラックや自動運転トラックが円滑に高速道路のICにアクセスできること、また貨物駅との結節機能を備え、モーダルシフトや輸送ネットワークの効率化に寄与する施設であること
(5)新技術の実装や物流DXを牽引する役割を担うこと、物流の脱炭素化に向け水素や再生可能エネルギーなどの充填・充電設備が設置されていること
(6)中小物流事業者を含む不特定多数への開放性を持ち、災害時には地域の緊急物資供給拠点として機能すること
これらの要件を満たす施設を「基幹物流拠点」と位置付け、今後は法的整備、税制優遇、補助金交付といった各種支援を通じて整備促進を図っていく。
公共性の高い物流拠点の整備・再構築も焦点に
報告書案では、公共性の高い営業倉庫や一般トラックターミナル等の老朽化施設について、単純な建て替えではなく、集約化、多機能化、協業化などの付加価値を伴う整備・再構築を推進し、地域の産業振興や活性化の観点から地方公共団体が主体的に関与した地域特性を踏まえた柔軟な整備・再構築施策を推進し、国が地方公共団体と連携して支援を行うべきとの方向性が示された。
特に都市沿岸部では用地不足が深刻であるため、地域全体の物流効率化を図る観点から物流拠点の適切な整備・再構築を検討することが求められている。
政策具体化へ、施策推進を加速
また、物流拠点の整備促進に際して、多額の整備費用や自治体の関与のあり方、適切な立地場所の選定など、多くの課題があることを指摘。その解決には税制措置、予算措置、規制的措置など、さまざまな政策ツールを駆使した整備促進が不可欠とし、具体的には物流拠点の整備・再構築を法的に明確化する仕組みを提言している。特に、現行の物流総合効率化法に基づく特定流通業務施設の整備に関する認定制度について、要件見直しなど制度のアップデートを行うとともに、必要な支援措置の充実を図るべきとしている。
報告書案では、本検討会における議論を踏まえ、さらに検討が必要な事項の探りを含め、事務局を中心に関係部局と連携しながら、施策の具体化を進めることへの期待が示された。
委員から自治体支援の重要性を指摘
会合では、国土交通省が示した政策の方向性について、委員から概ね賛同が得られたものの、いくつか重要な指摘も挙げられた。
特に自治体の積極的な関与を引き出すための支援強化が必要との声が挙がった。自治体により物流拠点整備に向けた体制や意欲に差があるため、国が自治体を後押しする具体的支援策を講じるべきだというものだ。これに関連し、「基幹物流拠点」をはじめとする公共性の高い物流拠点に対する自治体や物流事業者への周知の徹底が重要とされ、官民が共同で議論できる協議体やコンソーシアムの設置なども有意義だとの意見が示された。
また、省庁間の連携を強化することや、物流施設に関するデータの収集・把握体制を整備する必要性も指摘された。データ収集にあたっては、対象とすべき施設の範囲やデータ項目の共通定義を設けることが課題となるため、詳細な検討を進めるべきとの声が挙がった。
報告書案は今後、今回の検討内容を踏まえた正式な報告書として座長から国に提出され、政策検討に生かされる見通し。