拠点・施設プロロジスは4月2日、東京都墨田区の都市型物流施設「プロロジスアーバン東京押上1」内に新設したインキュベーション施設「inno-base(イノベース)TOKYO-OSHIAGE」のオープニングイベントを開催した。同社のインキュベーション施設としては、茨城県つくば市の「inno-base TSUKUBA」に続く2拠点目。物流企業や荷主企業、スタートアップ企業の間に出会いを生み、検証の場を提供しながら協業を促すことで、新たな価値の創出を目指す。

▲プロロジスの山田御酒CEO
イベントは午前10時にスタート。最初に登壇したのは、プロロジスの山田御酒CEO(最高経営責任者)。山田氏は「プロロジスは、スペースプロバイダーからソリューションプロバイダーへと進化している。これまで顧客の課題解決のために何ができるかを考え続け、ハード(物流施設・設備)は、ほぼやりきった。今まで以上に物流の中身に踏み込んで、オペレーションの課題にも顧客と一緒に取り組み、ソリューションを提供していく。その取り組みの一環が『inno-base』」と語り、インキュベーション施設の開設意義を強調した。

▲ハクオウロボティクスの塩原努COO
続いてプレゼンテーションを行ったのは、インキュベーション施設への入居をきっかけに、プロロジスと資本業務提携を締結したハクオウロボティクス(東京都荒川区)。inno-base TSUKUBAに初期から入居し、自動フォークリフトの開発・検証を進めてきた同社は、プロロジスのネットワークと実証実験環境を活用して事業を加速。塩原努COO(最高執行責任者)は、「物流現場に即した実証環境があることで、机上の構想をすぐに試すことができ、非常に価値のある拠点だ。また、プロロジス主催の内覧会などでPRの機会があるため、それまで200件営業しても反応がなかったのに、その場ですぐに実証実験の話がまとまったりして、ソフトの支援も心強い。入居企業同士の連携で新たな技術も生まれている」と語った。
イベント後半には施設の内覧が行われた。「inno-base TOKYO-OSHIAGE」を開設した区画は、もともと配送スタッフ向けの大浴場として使われていたスペースをリノベーションしており、浴槽のフォルムを活かしたユニークなワークブースなどが並ぶ。シェアオフィスエリアは12席を有し、契約企業専用の個別ブースも9席設置。20〜30社ほどの共同利用を想定する。
▲浴槽のリノベーション前(左)、リノベーション後(右)
本施設の最大の特徴は、つくば拠点との連携によって、物流ロボットなどの実証実験環境を利用できる点だ。プロロジスの開発部物流コンサルティングチームの本庄哲太氏は、「オフィススペースだけでなく、『実際に試せる場』を提供することで、物流の課題解決に寄与するスタートアップを一気通貫で支援する」と語る。また、施設の運営は、スタートアップ支援に豊富な実績を持つツクリエ(東京都千代田区)とプロロジスが共同で担う。物流分野に限らず、人材確保や資金調達など、スタートアップ特有の課題解決を支援する体制が整う。

▲プロロジス開発部物流コンサルティングチームの本庄哲太氏
「inno-base」シリーズの第1号拠点である「TSUKUBA」では、すでに10社のスタートアップが入居し、その中にはプロロジスとの協業・出資に至ったケースもある。これらの経験を踏まえ、押上拠点では首都圏の枠を超え、全国の成長企業とのネットワーク構築を目指すという。
今回の施設開設は、単なるスペース提供にとどまらない。大型・多機能物流施設の草分け的存在であるプロロジスが、「ソリューションプロバイダー」としての価値提供を加速しようという挑戦でもある。物流不動産に新たな「共創」の機能を持たせる──その最前線が、東京スカイツリーの足元で動き出す。
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