調査・データインドの市場調査会社アステュート・アナリティカは22日、世界のコールドチェーン物流市場は2023年から32年までの間に4倍近い成長を遂げ、1兆2625億米ドルの規模に達するとの予測を公表した。特に医薬品の輸送が市場の拡大をけん引する。
レポートによると、23年の同市場の規模は3221億米ドルで、今後32年まで年平均16.39%の成長を続ける。
市場の成長を牽引するのは製薬業界で、適切な温度管理で迅速に輸送できるシステムが求められている。特に新型コロナウイルスのパンデミックでは、ワクチン流通の課題が浮き彫りにし、製薬分野での同市場の重要性が明らかになった。
現在、温度の異常によって使用できなくなった医薬品などによって、年間350億米ドルの損失が出ていると推定されており、信頼性の高いシステムへのニーズが高まっている。また、航空貨物と冷蔵倉庫への依存度が高く、大量の電力を消費することも課題となっている。
食品分野でも、冷凍ベーカリー製品や食肉輸送といった市場は、コールドチェーンシステムに依存しており、安定した成長が見込まれている。30年までに、世界の冷凍食品市場は5044億米ドルを超えると予想されている。
技術の進歩では、IoT技術によってリアルタイムの温度追跡が可能になり、リスクを大幅に軽減している。ブロックチェーンも透明性とトレーサビリティの確保に貢献し、AIは保管と物流の最適化に役立っている。AIを活用したコールドチェーン事業への投資は、21年には世界で5億ドルを突破した。
一方で、環境への影響が同市場への懸念となっている。22年、同市場の二酸化炭素排出量は世界全体の3.5%に達したが、主に冷蔵倉庫と冷蔵輸送のエネルギー需要の高さが要因となっている。冷蔵倉庫による世界の電力使用量は、20年には314テラワット時に達した。
温度管理が欠かせない製品の中には、コールドチェーン物流コストが物流費全体の50%を占めるものもあり、持続可能性目標とコスト効率との両立は重要な課題となっている。
世界市場のシェアを見ると、人口の60%以上を占めるアジア太平洋地域が伸びつつあるが、米国が最大規模となっている。米国の総冷蔵能力は22年に37億立方フィートに達したに対し、インドは3200万トンにとどまった。現在、世界では60万台以上の冷蔵トレーラーが稼働しており、生鮮品の需要増加を支えている。
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