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政府「輸送分担率10年で倍増」背景に、荷主・物流事業者の「分からない」に応える

内航シフト促進へ「検討ガイド」「航路一覧」を公表

2025年5月28日 (水)

環境・CSR国土交通省は28日、「物流革新に向けた政策パッケージ」で掲げられた「鉄道・内航の輸送分担率を今後10年間で倍増する」という野心的な目標の実現に向け、内航海運へのモーダルシフトを後押しする新たな情報提供ツールとして、「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」と「航路情報一覧」を公表した。

▲(左)内航海運へのモーダルシフト 利用検討ガイド(右)航路一覧情報のイメージ(出所:国交省)

昨秋実施した「モーダルシフトに関する内航海運の新規需要調査」で明らかになった、「内航船の利用方法がわからない」「どこに相談すればよいかわからない」といった荷主企業や物流事業者の声に応えるもので、具体的な検討手順やメリット、実際の航路情報などを分かりやすく提示。併せて、モーダルシフトを資金面で支援する3つの補助金制度の活用も呼びかけており、情報不足の解消と具体的なアクションを促すことで、停滞気味だった内航海運モーダルシフトの本格的な進展を目指す。

進まぬモーダルシフト、「情報不足」が大きな壁

国内の物流におけるCO2排出量削減や、「2024年問題」に代表されるトラックドライバー不足への対応として、長距離幹線輸送をトラックから鉄道や船舶に転換するモーダルシフトの重要性はますます高まっている。政府は「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、鉄道・内航海運の輸送分担率を今後10年間で倍増するという高い目標を設定。この達成には、特に輸送ロットの大きい貨物や、長距離・中距離輸送における内航海運の活用が不可欠だ。

しかし、国土交通省海事局が継続的に調査・公表している中・長距離フェリー、RORO船、内航コンテナ船のトラック輸送に係る積載率動向(直近では2025年1~3月実績を公表)を見ても、航路や時期によってばらつきはあるものの、依然として多くの航路で輸送力に余裕がある状況がうかがえる。また、モーダルシフト推進・標準化分科会の調査報告では、国内幹線輸送に海上輸送の利用を拡大したいと考える荷主・物流事業者が8割を占める一方で、実際の利用割合は10%未満にとどまっている実態が明らかになっている。その最大の理由の一つが、「内航船のサービス内容や利用方法、メリットに関する情報が不足しており、検討の進め方が分からない」というものだ。

▲RORO船のトラック輸送に係る積載率動向(2025年1月〜3月、アンケート調査に応じた一部事業者数値をもとにした概算値 出所:国交省)

「利用検討ガイド」と「航路一覧」で具体的な検討を支援

今回、国土交通省が新たに公表した「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」は、この「情報不足」という課題の解消を目的としている。ガイドでは、フェリー、RORO船、コンテナ船という3つの主要な船種ごとに、それぞれのサービスの特徴、メリット・デメリット、利用に適した貨物の種類、輸送ロット、リードタイムの考え方などを具体的に解説。さらに、内航海運利用を検討する際の、情報収集、船会社・利用運送事業者への相談、見積もり取得、契約、実輸送といった、具体的なステップを分かりやすく示している。

▲利用検討ガイド内で内航船の種類を解説するページ(出所:国交省)

特に、「海運モーダルシフトの事例」では、「内航船利用を5つの視点で検討する荷主企業、利用運送事業者が増えている」とし、社内物流、BCP対応、小口混載輸送(ロット数確保)、コスト削減、大型トラックの無人航送の具体的な事例を紹介。荷主や物流事業者が自社の状況に合わせてモーダルシフトのメリット・デメリットを総合的に評価し、具体的な検討を進める上での羅針盤となることが期待される。

併せて公表された「航路情報一覧」は、現在各船会社が提供しているフェリー、RORO船、コンテナ船の航路情報を集約したものだ。発着港、運航頻度、主要な寄港地、船会社の連絡先などが一覧化されており、荷主や物流事業者は、自社の輸送ニーズに合致する航路を効率的に検索し、船会社へ直接問い合わせるための一助となる。この一覧は今後も順次追加・更新される予定だという。

3つの補助金制度でモーダルシフトを後押し

国土交通省は、これらの情報提供に加え、モーダルシフトの初期投資や運行経費の一部を支援する3つの補助金制度を用意し、積極的な活用を呼びかけている。

1つ目は国土交通省物流・自動車局物流政策課が所管する「モーダルシフト等推進事業」。2つ目は「モーダルシフト加速化事業費補助金」。そして3つ目が「地域連携モーダルシフト等促進事業」だ。それぞれ対象事業や補助率、申請期間などが異なるため、詳細は各ホームページで確認する必要があるが、これらの制度を活用することで、モーダルシフト導入に伴う経済的なハードルを下げることができる。

国土交通省海事局内航課は、「本ガイドや航路情報一覧が、各企業の経済活動を支える持続可能なサプライチェーンを構築する一助になれば幸い」としており、今回の情報拡充と支援策の周知を通じて、内航海運モーダルシフトの停滞状況を打破し、「輸送分担率倍増」という目標の達成に向けた動きを加速させたい考えだ。

■内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001891014.pdf

■「航路情報一覧」ダウンロードページ
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk3_000104.html

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