話題まるで、今の日本の夏は拷問のようだ。5月から30度を超える真夏日が珍しくなく、屋外の作業現場などでは「暑さから命を守る段取り」が急務。かつて熱中症対策は作業者の自己管理の範疇だった。

▲ファンが外気を取り組み、汗の蒸気が気化熱となって体温を引き下げる(出所:空調服)
いまや怠れば、企業の足元を揺るがす経営リスクになる。改正労働安全規則の施行により、熱中症対策は「努力目標」から実質的な責務へと移った。重症者が一人でも出れば法的責任は免れられない。信用は傷つき、現場は止まる。損失は連鎖し、経営判断の遅れがそのまま代償になってしまう。
こうして、暑さ対策が待ったなしとなった今、ファン付き作業着「空調服」を開発・製造・販売する専門メーカー、空調服(東京都板橋区)に視線が集まる。業界の草分けとして20年以上、建設や物流、警察、消防まで幅広い現場に企業導入を重ねてきた。
同社広報室課長の岩渕大征氏は市場の変化をこう読む。「昨年は法令化が大きな転換点でした。対策を講じねばという危機感から企業の導入が増え、売上高も前々年の53億円から86億円へ伸びた。熱中症対策が“義務として動き出した”証しです」(岩渕氏)
エアコン設置が困難な現場を救う合理的仕組み
こと物流の現場は、暑さ対策に手を尽くしたくても手が届きにくい。天井が高く広い倉庫、車両がひっきりなしに出入りする搬入口など、構造上、空調を行き渡らせるのが難しい。そんな“冷えない”現場で頼りになるのが「空調服」だ。涼しくなる仕組みは明快。ファンが外気を取り込み、服と肌のあいだに風の道をつくる。
汗の蒸発が気化熱となって体温を引き下げる。最初は「着込む分、余計に暑いのでは」と身構える人も、実際に着てみると数分で考えが変わるという。
では、「空調服」の効果はどれほどなのか。実際に袖を通すと、風が体の表面を駆け巡るうちに、体感温度が想像以上にぐんぐん下がっていくのが分かる。汗をかくほど効果は鮮明だという。「気化熱を使うので、汗をかく人ほど“効く”。近頃では『空調服』抜きの現場は考えられない、という声が多くなりました」と話すのは同社広報室の木内久美子氏だ。
労働災害リスクの回避と生産性向上の相関関係
熱中症対策の実施は単なるリスク回避にとどまらない。1件の労働災害が発生した際の治療費や休業補償、人員補充のコストを考慮すれば事前の投資は十分に回収可能だ。導入企業は重症者の減少だけでなく、疲労軽減による生産性向上を報告し続けている。
物流最大手のヤマト運輸をはじめ、名だたる企業が「空調服」を採用している。

▲「汗が減って体調を崩しにくい」という声が挙がるようになった(出所:空調服)
20年以上の歴史を持つ「空調服」の製品は建設や製造、警察、消防などエアコンが届かない現場で実績を積み重ねてきた。岩渕氏は現場から寄せられる具体的な効果を強調する。
「導入企業からは暑さによる体調不良で倒れる人が減ったという報告や、重症者が0人になったという報告が相次いでいます。1日に3リットル飲んでいた水が1リットルで済むようになったという声や、夕方の疲労感が全然違うという声も少なくありません。疲労の軽減は集中力の持続につながり、結果として生産性の向上に直結するはずです」(岩渕氏)
現場で熱中症が出る事態は現在の職場における最大のリスクだ。人が1人でも倒れればラインが止まる。熱中症を絶対に出さないという意識を、経営者層の強く持つ時代になった。「デバイスのタフさと企業導入の実績において、我々は圧倒的な自信を持っています」(岩渕氏)

▲ハンナでは熱中症気味の社員がゼロになった(出所:空調服)
奈良県を中心に運送業を営むハンナは、2025年7月に「空調服」を導入。導入責任者の山下義弘氏は「企業導入実績が豊富で品質の信頼性が高い点が決め手」と話す。猛暑だった25年でも、前年まで見られた熱中症気味の社員がゼロに。ドライバーからも「汗が減って体調を崩しにくい」「着替えが不要になり作業がスムーズ」といった声が上がっている。
採用戦略としての福利厚生と人手不足への対応
物流業界では人手不足が深刻化し、「空調服」の支給が採用・定着策として注目されている。福利厚生の充実は求職者の判断材料になりやすい。
一方で安価な類似品も多く、バッテリーの故障や発火など安全面のリスクがあるため、信頼できる製品選定が欠かせない。木内氏は採用現場での変化について次のように述べる。
「最近は求人票に『空調服』支給と明記する企業が増えています。求職者は『この会社は従業員の健康を守る福利厚生が整っている』との印象を受けます。「空調服」は人材を呼び込み、離職を防ぐための有効なツールとなってきています」(木内氏)
専門メーカーが追求するデバイスの信頼性と設計思想
一方、安価な類似品が市場に溢れる現状について、岩渕氏は「他社製品が壊れて弊社に問い合わせが来る事例もあります。我々は単に風を送るだけでなく、服の構造から風の通り道までをトータルで設計します。
このノウハウは一朝一夕に真似できません。専門メーカーとして厳格な基準を設けたバッテリーを使用します。毎日使う道具だからこそ、デバイスの信頼性は譲れないポイントです」と言葉に力を込める。
熱中症対策はもはや現場任せの「配慮」ではない。従業員の命を守り、生産性を維持し、企業の社会的責任を果たすための「経営判断」そのものだ。義務化対応、労働災害リスクの回避、生産性向上、採用競争力の強化。「空調服」の導入はこれらすべてに同時に応える施策だ。過酷な夏を現場に強いる前に、経営者が動く番だ。

▲空調服広報室課長の岩渕大征氏(左)、広報室の木内久美子氏(右)
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