調査・データ東京商工リサーチは24日、今年上半期(1-6月)に「不適切な会計・経理」(不適切会計)を開示した上場企業は28社で29件だったとするレポートを公表した。2008年に同社が集計を開始して以降、上半期はピークだった22年の38社38件から減少が続いている。
上半期の不適切会計は昨年上半期に比べ、5社4件減少した。上半期としては3年連続の減少となる。
不適切会計29件の内訳は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が16件で半数を超えた。次いで、子会社・関係会社の役員、従業員の「着服横領」が9件で、架空売上の計上や水増し発注などの「粉飾」は4件(同13.8%)だった。
業種別では、製造業の7社が最も多く、次いで建設業と運輸・情報通信業、サービス業の3業種の各5社が続いた。製造業は、従業員による架空取引や不正行為などの着服横領が増えた。建設業は、架空発注や架空取引などの着服横領、勘定科目の誤りや工事原価の過少計上などの誤りが目立った。
市場別では、東証プライムが12社で最も多く、東証スタンダードが10社、東証グロースが5社だった。13年までは新興市場が目立ったが、15年以降は国内外に子会社や関連会社を展開する旧東証1部が増加した。
主な不適切会計の事案としては、受託開発ソフトウエア業のクシム(東京都港区、東証スタンダード)で、旧経営陣による子会社譲渡で未回収債権が発生。経営交代の過程で実施された株式譲渡や貸付などの一連の取引で、25年10月期第2四半期に臨時損失7億1645万円を計上した。
ことし2月には、証券取引等監視委員会が受託開発ソフトウエア業のピクセルカンパニーズ(同、同)に対し、有価証券報告書の虚偽記載などがあったとして、課徴金6億2984万円の納付命令を出すよう金融庁に勧告した。連結子会社が、実体のない前渡金を計上し、売り上げを前倒しにすることで損失を計上しなかった。
同委員会は3月にも情報提供サービス業のイメージワン(品川区、同)に対し、有価証券報告書に虚偽記載があったとして、6507万円の納付命令を勧告した。減損損失の不計上や売上げの過大計上などがあった。
また、金融庁は1月にアスカ監査法人(港区)に対し、業務管理や品質管理態勢などに重要な不備があるとして、業務改善命令を出すとともに、新たな契約締結を6か月禁じる一部業務停止命令を出した。金融庁がアスカ監査法人に業務改善命令を出したのは、17年9月に続き2度目で、監査法人のあり方も問われている。
TSRは「グローバル化が進み、海外子会社や国際取引を利用した不適切会計も発生するなど不適切会計は複雑化している。上場企業はコンプライアンス(法令順守)やコーポレートガバナンス(企業統治)の徹底など倫理観や誠実な企業文化が、社会から求められていることを認識すべきだ」としている。
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