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海外子会社で「不適切会計」増加、TDB調べ

2013年4月19日 (金)

財務・人事帝国データバンクは19日、「不適切な会計・経理を開示した上場企業」の調査結果を発表した。2012年度不適切会計・経理で過年度決算に影響が出たか今後影響が出る可能性を開示した上場企業は26社だった。

11年度(32社)より6社減少したが、過去5年間では3番目に多かった。不適切な会計・経理は、会計監査人などの審査がより厳格化し、財務や会計を厳しく見直す動きが強まり減少したとみられるが、前年度はゼロだった海外子会社や海外事業での不適切会計が5社発生。目が届きにくい海外子会社での内部管理体制の不徹底が顕在化した格好となった。

08年度以降の5年間で、不適切会計・経理を開示した企業数の最多は、11年度の32社。12年度は年度上半期が11社(前年同期9社)だったが、下半期は12月の開示数が前年度の12社から2社に大幅に減少し、年度では26社(前年度32社)にとどまった。

12年度を内容別にみると、「その他」11社、「子会社によるもの」10社、「架空・水増売上」5社の順。最多の「その他」は、「適切でなかった会計処理」のほか、「社員による架空外注費請求による金員騙取」「有価証券報告書の虚偽記載」などが目立った。

増加したのは「子会社によるもの」(5社→10社)、「架空・水増売上」(3社→5社)など。2011年度は「売上の前倒計上」など、厳しい経営環境のもとで粉飾決算の不適切な行為が多かったが、12年度は「着服横領」などの個人に起因する不正行為が目立った。

5年間の累計では「子会社によるもの」が43社(構成比33%)で最多。次いで「その他」41社(31.5%)、「循環取引」20社(15.3%)と続き、上場企業の子会社でもコンプライアンス規範の浸透が遅れている一方で、不適切会計の手口が多化していることがわかった。

産業別では、製造業が8社で最も多かった。次いで、卸売業6社、サービス業ほか5社、情報通信業3社と続く。製造業は前年度から2社増加したが、「海外子会社や海外事業による不正経理」など、経済のグローバル化を背景に、海外関連会社などで増えている。5年間の累計では、最多はサービス業他35社、製造業29社、卸売業20社と続く。

市場別では、JASDAQが10社、東証1部9社の順だった。以下、東証2部、大証2部・名証2部が各2社、大証1部1社だった。新興市場では東証マザーズ、名証セントレックスは前年度はそれぞれ4社、アンビシャスが3社だったが、2012年度は3市場ともゼロに終わった。

全体で前年度から6社減少するなか、JASDAQは前年度の9社から10社に増加した。5年間の累計では、上場企業数が多い東証1部が46社で最多。上場企業とは言え、オーナー色の強い企業が多い新興市場のJASDAQが39社、東証マザーズが14社と続く。

帝国データバンクでは「グローバル化の名のもと、企業が海外で活躍する場が増えているが、その分、今後も予期せぬ不正行為の温床が増えてくることが予想される」と指摘。

不正事例のケーススタディの積み上げにより社内チェック体制の強化を図るほか、全役職員に対するコンプライアンス研修の徹底、監査法人の責任強化など、抜本的に不正行為を排除する動きを進めることが求められている、とした。