話題ノンデスク領域向けDX・人材サービスを手がけるX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)は、2025年9月開催の「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」へ出展する。ブースでは、トラック運送業界の喫緊の課題に対応する各種サービスのほか、新たに開発したシフト管理機能を披露する予定で、来場者に対して“物流現場の働き方を変える提案”を直接訴える構えだ。

▲X Mile、DXソリューション事業本部物流DX事業部カスタマーサクセスユニットの戸井田花奈氏
X Mileが展開する「ロジポケ」は、運送事業者に向けた配車・労務管理クラウドであり、運行管理の効率化や法令対応、人材紹介や定着支援などを通じて、ドライバー不足や働き方改革に直面する物流業界を後押ししてきた。同社DXソリューション事業本部物流DX事業部カスタマーサクセスユニットの戸井田花奈氏によると「ロジポケやクロスワークなど、物流事業者の現場を支える機能を広く展示する」と話す。
今回の展示では、2024年問題を背景に成立した「トラック新法」で導入される事業許可更新制度、トラックドライバーの待遇改善に対応するための、具体的な課題解決手段を示す。戸井田氏は「事業許可更新制により、法で定められた記録やその保管のより厳密な実施の重要性が上がった」と説明し、「人手をかけずに効率的に記録・保管ができるデジタルツールの必要性もますます上がってきている」と強調した。
同社ブースではロジポケのほか、クロスワークなどのHRサービス、各種作業を動画で教育できる「マニュアル管理」なども紹介。「弊社が手がける物流業界向けのサービス全般をご覧いただける構成になる」と戸井田氏は語る。

▲展示ブースイメージ
こうした展示のなかでも注目されるのが、25年8月にリリースされたばかりの新機能「シフト管理」だ。これは、ドライバーの勤務予定をカード形式でクラウド上に表示し、受付から承認、さらには配車まで一気通貫で管理できる機能で、ロジポケの配車機能などと連携する。戸井田氏によると「人・車・案件」ベースの配車業務に、未来のシフト情報を加味できるようになったことで「より正確で柔軟な配車が可能になる」という。
運送業の現場では、Excel(エクセル)で作成したシフト表を手作業で配車表に転記し、その後さらに再調整を行うという非効率な運用がいまだに行われている。戸井田氏は「中小の運送会社では、シフト管理と配車表を別々に扱っており、作業が非効率な上にヒューマンエラーも発生している。これをクラウド上で一括で処理できるようにするのが今回の機能だ」と述べた。
さらにこの機能は、配車以外の業務にも波及効果をもたらす。たとえば教育スケジュールの最適化だ。戸井田氏によれば「ドライバーのシフトが可視化されていないが故に、全ドライバーの業務がない休日の土曜に一括で研修を実施するといった企業が多いが、シフトが可視化されれば、平日の業務時間中に調整して実施できる。負担軽減と教育の質向上の両立が見込める」という。またロジポケは、教育の計画・実施だけでなく、出退勤・労務・評価制度といった人材マネジメント全般と密接に連携しており、シフト管理機能との組み合わせによって多面的な活用が可能だ。
加えて、クロスワークを通じた人材紹介においても、トラック新法が掲げる「ドライバーを守る」という理念に則り、紹介後の定着率向上や評価制度の導入など、持続可能な人材活用を視野に入れ提案。戸井田氏は「デジタルツールだけでなく人材サービスも行っている強みを生かし、採用した人材の定着だけでなく、その後の育成やキャリアアップ、評価制度の策定など、人事関連をトータルで支援する」と話す。
「こうした展示会で、弊社のブースを訪れる企業として製造業が増えている」──そう語るのは同社執行役員(DX事業管掌)の安藤雄真氏だ。これまでは運送事業者が主な対象だったが、近年では製造業や荷主企業からの相談が明確に増えてきたという。特に、自社でトラックを保有し輸送業務を内製化する動きに対応したいというニーズが見られる。
安藤氏は「これまでは物流を外注していた企業が、コストや納期管理の観点から内製化に踏み切るケースが出てきている」と指摘し、「ドライバーのシフト管理や労務管理といった運送事業者と同様の課題が発生するため、ロジポケやクロスワークのようなツールに関心を持っていただいている」と述べた。24年問題で輸送力の不足が注目を浴びたが、自社の製品を輸送しなくてはならない製造業にとって、物流の確保は生命線でもある。また、法改正により物流統括管理者(CLO)の選任が荷主企業に求められるようになった今、製造業も「餅は餅屋」と物流企業に丸投げはできない。輸送力の確保とサプライチェーンの維持のためにも、自社で車両・ドライバーを持ち、それを運用していくための体制は急務と言える。

▲シフト管理画面イメージ
また、製造業においても、安全対策や作業ルールの可視化といった現場管理の必要性が増しており、ロジポケの動画マニュアル作成機能などはニーズのあるツールだ。属人化の解消や教育工数の削減といった観点からも、X Mileのサービス群は製造業の現場にもフィットしつつある。
物流関連企業はもちろん、物流が主戦場ではない製造業の担当者も、新たな制度や法律について漠然とした課題感を抱えながらブースを訪れることも多く、安藤氏は「制度に関する基本的な情報を知りたい、今後の対応の方向性を考えるヒントが欲しいといった声をよくいただく」と語る。X Mileのブースでは、単なるサービス紹介ブースではなく、顧客の悩みをヒアリングした上で解決方針や情報を提供するといった運営を方針としている。安藤氏は「むしろ、明確な課題がなくても気軽に立ち寄っていただきたい」と語る。
会場では、同社の製品・サービスの紹介をするだけではなく、ドライバーの労務管理や働き方の変化に関する知見を提供。「この制度が始まることで、何が起きるのか」「どこまで対応していれば問題ないのか」といった疑問を持つ事業者に向け、現場で実際に起きている事例を紹介しながら具体的にどのような変化が起きているのかの情報を共有していく。安藤氏は「新しい制度や法律を知らないことが原因で、違反になってしまうこともある。そうしたことがないよう、今後何に気をつければよいのかを一緒に整理していくような対話の場にしていきたいと考えている」と話す。来場者と対話を通じて制度改正や現場の変化を紹介することで、「これまで気づいていなかった課題に気づき、何らかのヒントや知見を持ち帰ってもらえるような機会を提供していきたい」と意欲を見せた。
安藤氏は、物流業界の人材流出について「このままでは本当に業界が立ち行かなくなる」と強い危機感を示す。人材が業界を離れることで、ドライバー不足がさらに深刻化し、それに伴って輸送力の低下を招く。この影響は物流業界内にとどまらず、あらゆる産業に波及し、国内経済全体にも悪影響を及ぼしかねないという。
そうした事態を防ぐには、まず待遇の改善が不可欠だと安藤氏は指摘する。「長時間労働や低賃金といった業界のイメージを払拭しなければ、人は定着しない」。さらに、「物流業界自体を“働きたくなる業界”に変えていく必要がある」と強調し、制度や環境の整備が急務であると訴える。
そうした課題に応えるためにも、現場の効率化やデータによる見える化は欠かせない。安藤氏は「私たちとしても、テクノロジーと現場支援を組み合わせることで、次代の物流を支える仕組みを構築していきたい」と語り、変革への意欲をにじませた。