ロジスティクス公正取引委員会が軽油価格カルテルの疑いで石油製品販売会社8社に対して強制調査を実施したことを受け、全日本トラック協会は11日、「誠に遺憾」との声明を発表した。全ト協は公取委に対し、徹底的な事実解明と法令に基づく厳正な対応を求めている。
公取委は犯則調査権限を行使し、ENEOS系のENEOSウイング(名古屋市)、東日本宇佐美(東京都)、太陽鉱油(同)、共栄石油(同)、エネクスフリート(大阪市)、キタセキ(宮城県)、吉田石油店(香川県)、新出光(福岡市)の8社の本社などを捜索した。公取委の強制調査は2022年11月の東京五輪・パラリンピック談合事件以来3年ぶり。
8社は東京都内の運送業者らに法人契約で軽油を販売していた際、担当者の会合などを通じて価格を調整していた疑いがもたれている。価格調整は長期間にわたって行われていた可能性があり、公取委は刑事告発も視野に入れて調査を進めているとみられる。
この強制調査の発端は、5月下旬に公取委が実施した神奈川県内の軽油販売に関するカルテル疑惑の立ち入り検査にある。この時は新出光と共栄石油を除く6社が対象となり、その後の調査で東京都内でも同様の疑いが浮上したとみられる。神奈川県の案件では、販売対象の業者数は数千社に上り、市場規模は1000億円に達するとの試算もある。
軽油は主にトラックや建設機械などの燃料として使用され、物流や建設業界など社会インフラを支える重要な役割を担っている。近年の原油価格高騰を受け、政府は燃料費高騰対策として補助金を投入しているなかでの価格カルテルであり、公取委は悪質性が高いと判断した模様だ。
全ト協の声明では、容疑が事実であれば「国民の暮らしと経済活動を支える公共的使命を担い、物流の2024年問題やさまざまなコスト増に苦しむトラック運送業界が不当な価格でトラックの主な燃料である軽油を購入していたことになる」と強い憤りを示した。
トラック運送業界では長時間労働の是正に伴う収益減少に加え、燃料費や人件費の上昇により経営環境が厳しさを増している。軽油は物流コストの重要な構成要素であり、価格の不当な操作は最終的に荷主企業や消費者の負担増加につながる可能性がある。
報道によると、強制調査を受けた各社は調査への協力を表明している。今回の事件は、エネルギー価格の高騰が続くなかで浮上した大規模なカルテル疑惑として注目を集めている。公取委は物流コスト上昇の一因となった可能性があるとして、厳正な調査を継続する方針だ。
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