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静神運輸と柳川合同、配車DXツール定着の軌跡共有

2025年9月26日 (金)

ロジスティクス物流業向けデジタルシステム開発のアセンド(東京都新宿区)は25日、同社が提供する物流向けシステム「ロジックス」のユーザー会を開催した。ユーザー会ではロジックスを導入し業務の改善を進めている静神運輸(静岡県沼津市)と柳川合同(福岡県柳川市)が登壇し、同システムを現場に浸透させるまでの取り組みを語った。

▲会場の様子

静神運輸は従来、配車や請求業務を紙やExcel(エクセル)で処理していた。配車を担当する小川朱音氏は「最初からすべてをシステム化するのは難しく、紙書類のアナログとロジックスのデジタルが共存する環境で導入。操作に慣れたところで一本化した」と導入期を振り返った。請求・労務業務を担当する冨永菜緒佳氏も「請求業務ではエクセルを併用しながら、徐々にロジックスに寄せていった」と補足した。

同社はシステムの導入により、配車担当・請求担当・給与計算担当が同一基盤で業務を共有できるように。小川氏は「案件を入力した後の給与計算や請求処理は、それぞれの担当に任せられる。負担はむしろ軽くなった」と語った。冨永氏も「配車が入力しやすいように設計し、不足分を請求側で補った」と述べ、部門間の補完関係が定着の鍵だったことを強調した。

同社ではドライバーには同一仕様のタブレットを配布し、アプリで配車情報や指示書を共有。小川氏は「以前はホワイトボードや電話を使って予定を管理、伝達していたが、どうしても漏れや行き違いがあった。アプリならどこにいても予定が分かる」と説明。冨永氏も「若手が年配のドライバーに使い方を教える場面もあり、世代間のやり取りが自然に生まれた」と効果を実感した。

▲左から静神運輸の小川朱音氏、冨永菜緒佳氏

「誰でも配車状況が分かるようになり、全員が“配車係”になれる」と冨永氏。属人化を防ぎ、情報の透明化につながったと説明。一方、請求書のフォーマットについては荷主と調整を重ねた。「出力結果を一度落として要望に応じて項目を加えるなど、社内外で折り合いをつけた」と外部との折衝も必要だったケースを紹介した。小川氏は「慣れたら一本化する勇気が必要」と強調し、冨永氏も「お互いの業務を見合い、補い合う姿勢が大切」と締めくくった。

続いて柳川合同トランスポート(福岡県柳川市)で配車を担当する椛島智宏執行役員が登壇。同社がロジックス導入を決めた理由は明快だった。「紙やエクセルで何度も同じ入力を繰り返し、請求漏れが多かった。社長から『ワンクリックで請求まで正確に』という目標を託された」と椛島氏。最初は単発案件が多い平ボディ車両から導入を始め、シンプルな業務でシステム化を進めていった。

2022年9月の本社導入を皮切りに、1年間で全国11拠点にシステムを展開。「各営業所に自ら足を運び、配車や使い方を直接伝えた。大阪や埼玉、平塚には2回ずつ行った」(椛島氏)。さらに毎朝8時に行うオンライン会議では、システムの使いこなしをテーマに取り上げ、日々の業務の中で定着を図った。同氏は「最初は独自のやり方を残す現場もあったが、訪問して『ロジックス一本でやる』と繰り返し伝え続け、定着につなげた」と粘り強く取り組んだことを強調した。

ロジックスの全国展開がスムーズに進んだ背景には社風もある。「社長の決断と行動がとにかく早い。現場もその姿勢を見て動く」と同氏は語る。導入当初から「反対よりも早く全員でやろう」という意識が強く、プロジェクトは大きな遅れもなく進んだという。

導入後もシステムはアップデートが続けられているが、これについて同氏は「改善が随時加えられるのはありがたい。今は荷主から直接案件をスプレッドシートに入力してもらい、それをロジックスに取り込める仕組みの実装を求めている。いずれは顧客まで巻き込んでいきたい」と語り、API連携など外部接続の拡充に期待を示した。

▲柳川合同トランスポートの椛島智宏執行役員

質疑応答では営業所ごとの損益管理や、配車漏れ防止の工夫について質問が寄せられた。大阪営業所では案件を色分けして視覚的に管理していることや、「案件はすぐに入力すること」を徹底していると同氏は説明。また「帰り便は必ず営業所がつける」という社内ルールにより、車両を優先的に返却する体制が徹底されている点も共有された。

椛島氏は最後に「毎日の会議の議題に組み込み、継続的に話題にし続けることが浸透の鍵だった」と振り返る。システム導入は一度教えて終わりではなく、日常の業務の中で根付かせる──その実践例として参加者の関心を集めた。

2つの講演を受け、アセンドの日下瑞貴社長は「アナログもデジタルも共存させ続けてしまうと、やることが増えてしまい逆効果。どこかで見切りを付けて、デジタル一本にしてしまう思い切りが、DX(デジタルトランスフォーメーション)定着の近道だ」と総括した。

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