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2030年売上高1.5兆円、アルプス物流とのシナジーが成長の鍵

ロジスティード、営利6%で27年度再上場へ海外伸長

2025年9月29日 (月)

調査・データロジスティードは26日、都内でメディア向けに事業説明会を開き、30日に公表する新中期経営計画「LOGISTEED 2027」の概要を明らかにした。米投資ファンドKKR傘下で非上場化してから3年目を迎え、来るべき再上場に向けた具体的な成長戦略を経営陣が詳述。日立物流時代から掲げる2030年度に売上高1兆5000億円という壮大な目標への道筋を堅持しつつ、新たに営業利益率6%以上という高い収益性目標を設定、再上場は27年度を目指す方針を明確に示した。その成長をけん引するスローガンが「日本で勝ち、世界で伸ばす」。国内3PL市場で圧倒的ナンバーワンの地位を固め、その強みをグローバルに展開する戦略の核心には、24年にグループ化したアルプス物流とのシナジー最大化が据えられている。中谷康夫会長兼社長執行役員(CEO)をはじめとする経営陣が語った、新生ロジスティードの成長方程式に迫る。

▲ロジスティードの中谷康夫会長兼社長執行役員(CEO)

説明会の冒頭、マイクを握った中谷CEOは、改めて30年度の売上高1兆5000億円という目標が、KKRとのパートナーシップを組む以前から見据えていた「あるべき姿」であることを強調した。「この2030年を我々と共に実現可能にしてくれるパートナーとしてKKRを選んだ」と語り、今回の新中計「LOGISTEED 2027」はその長期ビジョンを実現するための重要なマイルストーンであると位置付けた。その上で、再上場について「目標は27年度を視野に入れている。30年の1兆5000億円への道筋をつけることがなければ、27年の再上場はない」と述べ、中計期間中の着実な成長が再上場の絶対条件であるとの認識を示した。

再上場を成功させるためのハードルとして、中谷CEOが特に重要視するのが「海外投資家からの関心」だ。そのためには国内の同業他社ではなく、世界のトッププレーヤーをベンチマークとした経営指標が不可欠だとし、「営業利益率は直近5.6%だが、6%あるいはそれ以上を狙っていく必要がある」と、具体的な数値目標を掲げた。また、海外売上高比率を現在の46%前後から50%以上に引き上げることや、KKRのサポートのもとで進めてきた「アセットライト」戦略の徹底も、グローバル基準の財務体質を構築し、投資家の評価を得るための重要な布石となる。その成長戦略の2大柱となるのが、「日本で勝ち、世界で伸ばす」というスローガンに集約された国内・海外両事業の強化だ。

国内事業を担当する西川和宏副社長執行役員(CJBO)は、「日本で勝ち」抜くための最重要課題として、アルプス物流とのシナジー創出を挙げた。国内3PL市場が年率4.8%で成長を続けるなか、特に電子・精密機器分野の成長が見込まれることが、同社をグループに迎えた大きな理由の一つだ。西川氏は「アルプス物流の会社の強みであるケーパビリティーと当社を掛け合わせることで、調達から生産領域まで全てを担える体制が整った」と述べ、両社の事業領域が相互に補完し合うことで、シームレスな物流サービスを提供できると強調した。

▲西川和宏副社長執行役員(CJBO)

シナジー創出はすでに具体的な成果として表れている。西川氏の直下にはシナジーの刈り取りを目的としたチームが新設され、分科会形式で具体的なアクションを推進。その一例として、アルプス物流の既存顧客が扱う危険品を、ロジスティードが保有する京都府の危険物倉庫で8月から受け入れた案件を紹介。これは、これまでアルプス物流単体では手がけられなかった領域をロジスティードのケーパビリティーでカバーする典型的な「ホワイトスペースの獲得」例だ。また、福岡や西東京、神奈川地区では、両社の近隣拠点を同床化することでグループ外への支払いコストを抑制するなど、コスト面でのシナジーも着実に進んでいる。西川氏は、このシナジー効果を早期に刈り取ることが、トップラインの拡大と収益性向上に直結すると力を込めた。さらに、24年問題への対応として、輸送事業の強化も急ぐ。アルプス物流との輸送ネットワークの融合を軸に、ダブル連結トラックの活用やモーダルシフトを推進。長距離輸送能力を維持・強化するとともに、外国人ドライバーの採用も準備していることを明らかにし、国内事業の足場を盤石にする構えを示した。

この国内での「勝ち」を確固たるものにする一方で、成長のもう一方のエンジンとなるのが、「世界で伸ばす」を体現する海外事業だ。海外事業を率いるクリストファー・ローガン副社長執行役員(CIBO)は、「我々の目標は、日本企業と比較されるのではなく、ワールドクラスの物流企業としての財務パフォーマンスを提供することだ」と、グローバル市場での高い目標を掲げた。

▲クリストファー・ローガン副社長執行役員(CIBO)

その戦略は4つの柱から成る。第1に、日本で培った強みであるコントラクトロジスティクス(3PL)を、東南アジアやインドに加え、欧米の非日系顧客へとさらに拡大する。第2に、航空・海上フォワーディング事業において、日本・東南アジアを起点とする東西の主要トレードレーンでの物量拡大に注力する。第3に、欧州では道路・鉄道・船舶を組み合わせた「マルチモーダル輸送」、北米ではカナダからメキシコまでを網羅する自動車産業向けの「ミルクラン輸送」といった、他社にはないユニークな輸送ソリューションをさらに伸長させる。そして第4に、ITシステムや企業文化、目標を統一し、アルプス物流の海外拠点も完全に統合することで、真の「ワン・ロジスティード」を実現することだ。ローガン氏は「競合他社と差別化するポイントは、高品質なサービスに対する献身だ。我々はこのサービスに誇りを持たねばならない」と述べ、日本品質のサービスをグローバルに展開していくことが最大の競争優位性になるとの考えを示した。

こうした国内・海外事業の成長を営業面からけん引するのが、川北剛史執行役員(CMO)が率いる営業部門だ。ことし4月にCMOに就任した川北氏は、国内・海外・フォワーディングという地域軸とプロダクト軸を横断的につなぎ、グループ全体の営業力を最大化する役割を担う。その中核となる施策が「グローバルアカウントプログラム」(GAP)の強化だ。重要顧客に対し、プロダクトや地域を横断した専任のキーアカウント・マネージャーを設置することで、顧客との関係強化を深め、統合的なソリューション提案を加速させる。また、家電業界や化粧品業界ですでに実績のある「共同物流プラットフォーム事業」も強化。フロントラインでは競合となる企業同士の荷物を相積みすることで、荷主にはコストメリットを、ロジスティードには物量増をもたらし、ウィンウィンの関係を構築していく。

▲川北剛史執行役員(CMO)

そして、これらの事業戦略を根底から支え、他社との差別化を決定づけるのが、芳賀寛執行役員(CDXO兼CTO)が推進するDX・テクノロジー戦略だ。芳賀氏は、荷主企業がDXの知見を十分に蓄積できていない現状を指摘し、「物流をやっている私たちだからこそ、技術とノウハウを生かしたサポートが行える」と述べ、顧客のサプライチェーン全体最適を支援する「エクスターナルDX」と、自社のオペレーションを高度化する「インターナルDX」の両輪でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する方針を示した。特に「エクスターナルDX」の中核をなすのが、サプライチェーン最適化サービス「SCDOS」(サプライチェーンデザインアンドオプティマイゼーションサービス)だ。このサービスは、デジタルツインを活用したシミュレーションによる拠点再編などの「戦略立案」から、CO2排出量を可視化する「エコロジポータル」などを活用した「モニタリング」までをカバーし、サプライチェーンコストを10-20%削減した実績を持つ。中谷CEOも、こうした独自のDXソリューションが「同業他社にはないもの。これをどれだけお客様に説明し、納得してもらえるかが、新たな顧客を獲得する上で重要になる」と大きな期待を寄せる。

▲芳賀寛執行役員(CDXO兼CTO)

30年の売上高1兆5000億円、そして27年度の再上場へ。ロジスティードが描く成長へのロードマップは明確だ。アルプス物流とのシナジーを起爆剤に国内での圧倒的な地位を築き、その実力と日本品質のサービス、そして独自のDXソリューションを武器に世界市場を攻める。KKRという強力なパートナーを得て、グローバル基準の経営体質への変革を急ぐ新生ロジスティード。その挑戦は、日本の物流業界の未来を占う上でも、大きな意味を持つことになりそうだ。(鶴岡昇平、菊地靖)

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