ロジスティクス本誌編集部の記者たちが今週注目した物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。週末に気軽に読みながら、1週間のトピックを整理してみましょう。
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アマゾン、名古屋港に巨大FC開業
アマゾンジャパンは名古屋港近くに延べ床面積12万5000平方メートルのフルフィルメントセンター(FC)を開業した。国内有数の規模で、最大1900万点の商品を保管し、1日あたり60万点の出荷能力を備える。東海エリアを中心に当日配送の強化を狙うもので、全国的な配送網の中核拠点となることが期待される。施設には作業者の疲労軽減マットや高性能空調を導入し、労働環境の改善を図るとともに、地中熱利用や壁面型太陽光発電など先進的な環境技術を採用した。物流業界では近年、環境対応と人材確保の両立が課題となっており、同施設はその一つのモデルケースとなり得る。ただし、巨大投資による競争環境の変化で、中小物流倉庫の立場が相対的に弱まる懸念もある。
記者A「今回の一番のビッグニュースといえば、アマゾンの名古屋港フルフィルメントセンターが8月から動き出して、お披露目があったことだよね」
記者B「見てきたよ。商品在庫数が1900万個以上、1日の入出荷数が60万個以上っていう大規模な施設だった。延床面積12万5200平方メートルで、数1000人が働くっていう規模だからね」
記者A「アマゾンは以前から多治見に大きなセンターを持ってたけど、今回さらに超大規模な拠点を作ったよね。これは朝注文したら夕方には届くという当日配送体制を実現するための強力なバックボーンになるという、アマゾンの本気度が感じられたな」
記者B「施設内で働く人の労働環境への配慮がすごく印象的だったよ。室温管理のための空調設備や疲労軽減マットの設置など、あちこちに工夫が見られて、アマゾンが従業員の労働環境を大事にする姿勢がはっきり感じられたね」
記者C「アマゾンの当日配送って、一時期積極的に展開してたけど、現場の負担が大きくなって一旦縮小したんだよね。確かエリア限定にしたんじゃなかったっけ」
記者B「そうそう。アマゾンは当日配送にこだわり続けてるんだよね。どれだけのニーズがあって、どんな商品が当日配送を求められるのかという点だけど、やっぱり日用品じゃないかな。消耗品に近いものが中心だろうね」
記者A「アマゾンはまず東海地方を中心にサービスを始めて、将来的には日本全国に展開していきたいって言ってたよね。ところで、施設内でロボットとか見る機会はあったの?」
記者B「アマゾンロボティクスも見てきたよ。衝突を避けながら安全に動き回る様子が印象的だった。それから環境配慮もすごくて、地中熱を利用した空調システムを導入してるんだ。太陽光発電パネルも面白くて、普通の屋上設置じゃなくて南側の壁面に取り付けてあるから、太陽光をダイレクトに受けて効率よく発電できるんだって。本当に何から何まで画期的な施設だったよ」
国際誘致でインドに商機、物流インフラ整備を加速
インド政府は製造業の誘致を支える国家的物流インフラ整備を加速しており、日本企業との連携を強化する姿勢を示した。国家産業回廊開発プログラムでは、未開発地をスマートシティ化し、産業拠点と物流拠点を一体整備する計画が進行中だ。複合モーダル物流ハブの構築や、プラグ&プレイ型の産業インフラ導入も柱に据えられている。投資許認可の簡素化や税制優遇の仕組みも提示され、今後10年の投資目標や人的交流強化も打ち出された。急成長する国内市場を背景に、インドはアジアにおけるサプライチェーン再編の受け皿となる可能性を秘めており、日本の物流企業にとって大きな商機となり得る。
記者A「インド大使館でイベントがあったね」
記者C「インド大使館に行ったんだけど、まさにミニシアターみたいな空間で、100席くらい座れるステージがあって講演会を開催したんだ。インド自体は今、経済発展が進んでいて、モディ首相が日本を訪問した際にも、経済官僚の代表団が一緒に来日して講演したんだよ」
記者A「物流インフラの整備って観点で見ると、どのくらい進んできたの?俺、18年くらい前にインド取材に行ったんだけど、その時頭に残ってるインドの道路とか含めたイメージと、今の状況って比較できなくて」
記者C「実は昨日、インドの超巨大コングロマリットの日本法人の人と話したんだけど、インフラはまだまだ全然追いついてないね。特に道路について言うと、日本の常識と全く違って、民間の有料道路がすごく多いんだよ。A地点からB地点への便利な道路があったとしても、通行料が取られるんだけど、それが完全に個人というか企業が運営していたりして」
記者A「俺が行った頃は、牛が神聖視されてるから、道路を歩く野生の牛がいると大渋滞が起きてたんだよ。みんな牛を避けなきゃいけないし、牛が道路の上に座り込んじゃったりすると対処のしようがなくて、迂回したり片側通行になったりで、ひどい渋滞が発生してたんだ」
記者C「モディ首相が関所問題を全廃したんだよ。20年前と比べると物流インフラは飛躍的に進歩してる。日本が当時10だったとしたら、インドは1くらいだったけど、今は5くらいまできてるんじゃないかな。インフラの効率の悪さは依然として課題だけど、それを変えなきゃいけないという意識が非常に強くなってて、2047年には先進国入りするって目標を掲げてるんだ」
記者B「毎年2500万人も人口が増えてるんだからね。今や世界一の人口国家でしょ、中国を超えたし」
記者C「超えたね。プロジェクトは本当に壮大だよ。国家レベルの取り組みで、各州にかなり大規模な産業都市を建設する計画なんだ。でも産業都市だけじゃ不十分だから、物流の輸送インフラ拠点も整備していく。具体的には巨大なトラックターミナル、日本のものを何倍も大きくしたような施設を作っていくっていう計画がかなり進展してるみたいだよ」
記者A「電力が4倍必要になるっていう話もあったよね。ITも、AIも、本当に実現できるのかなって疑問があるし、工場から冷凍設備までってなると、すごい投資額になるよな。そもそもそんな資金があるのかっていう問題も大きいと思うんだよね」
記者C「10月23日にうちでイベントやるじゃん、大使館との共催で。そこで登壇予定の会社が今月上旬にインドで講演してきてるんだよ。日本の物流ニーズやクオリティーについて話したり、日本企業が求めるレベルはこんなものだとか、基本的なおもてなしの精神なんかを向こうで伝えてきたんだ」
センコー不正事件、業界浄化の転換点か
大手物流会社のセンコーで、協力会社への支払い請求を巡る不正が明らかになった。支店長クラスの幹部社員が協力会社と結託し、水増し請求により不正利益を得ていた疑いが浮上。会社側は速やかに第三者委員会を設置し、事実関係の調査に乗り出した。物流業界では過去にも同様の事例が繰り返されており、内部統制や監査体制の脆弱さが課題として指摘されてきた。とくに大規模なM&Aが進むなかで、買収先企業の内部不正リスクをどう管理するかは業界全体の共通課題となっている。DX化による経理処理の透明化やAIによる異常検知の導入が求められる一方、現場の慣行や人間関係に根差す不正の構造は根深い。今回の事案が再発防止策の強化につながるか注目が集まる。
記者A「次のネタだけど、センコーの不正の記事について話したいんだ。トラック運送業界でよくある社内不正といえば、ある程度の規模の会社が下請けの運送会社を「協力会社」として使う時に起きるんだよね。支店長みたいな役職の人間が下請け会社と結託して水増し請求をさせて、その浮いた分を自分のポケットに入れちゃうっていうケースが結構あるんだ」
記者B「これはもう昔からある、トラック運送業界の典型的な不正パターンなんだよね。定期的に大手を中心に年に何回かこういう事件が明るみに出て、第三者委員会が立ち上がって、会社側も関与した人間を訴えるって流れになる。でもこれがなかなか減らないのは、やっぱり構造的な問題もあるんじゃないかって気がするんだよね」
記者C「確かにずっとある問題だよね。でももうこういうのが許される時代じゃなくなってきてるんだよ。コンプライアンスの基準はどんどん厳しくなってるし、その意識を高めていくことは、上場企業にとっては本当に大きな課題になってるよね」
記者B「これからM&Aなんかもどんどん活発になってくるから、グループ入りする会社ってどんどん増えてくると思うんだよね。買う前にどんだけ調査できるのかってことと、買った後のどれだけ教育を徹底できるかってこと、本当そこに尽きるんじゃないかなと思う」
記者A「昔からの古い慣習、いわゆる“昔からこうだから”っていう考えが通用しなくなってきてる。その現れとして不正事例が表面化してるんだよね。これって実はいい傾向なんじゃないかな。要するに膿を出すようなもので、昭和の悪習をここで噴出させて、クリーンにしていこうっていう流れだから、俺はむしろいい方向に向かってると思うんだよ」
記者C「不正絡みでいうと、ロジスティクス業界ではあまり大きく取り上げられてなかったけど、個人的には公正取引委員会が架装メーカーのカルテルに課徴金を科したニュースはかなり重要だと思ってるんだ。極東開発工業と日本トレクスが課徴金を科されて、新明和工業と東邦車輛は事前に違反を申告してたから命令は免れたものの、実際は関与してたってことだよね」
記者A「これはかなり悪質なケースだよね。ダンプや車両を購入する物流会社や建設会社からすれば、こういうカルテルをやられたらもう手の打ちようがないんだよ」
記者C「これって物流会社側がどれだけ頑張っても削減できない領域なんだよね。燃料費も、車両価格も見積もりを取ったところで、裏で業者同士が示し合わせてるなら手も足も出ないじゃん」
記者B「いわゆる車両費と燃料費の部分は、昔からずっと自助努力でどうにもならない領域って言われてたんだよね。だから物流会社は人件費や高速代など、できるところでコスト削減を頑張ってきた。なのに、どうしようもない領域でそういうことをされちゃったら、単純にコストが上がるだけの話だからね」
記者C「だってドライバーの給料を少しでも上げようって、赤字経営の中でも必死に切り詰めてやりくりしてるのに、裏側でこんな不正やられてたら、本当になえるよね。課徴金だけで済ませていいのかって疑問に思うよ」
記者A「これは物流業界が変革しようとしてる最中に水を差す動きだよね。同じ物流に関わる業界として、もう少し共通の姿勢で改善に取り組んでほしいって思うんだよな」
記者B「車両そのものやタイヤとか、プレーヤーの数が少ない業界は、こういうことが起こりやすいんだよね。タイヤメーカーって日本だと数社しかないし、トラック車両だって外資含めても10社にも満たないだろ。そういう状況を見て、公取委もようやくメスを入れ始めたのかもね。これって物流業界にとっては追い風になると思うんだよな」
記者C「公正取引委員会にはもっと期待したいよね。こういう不正行為をどんどん摘発してほしいっていうか。業界の健全化のためにも必要だと思うんだよ」
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