行政・団体国土交通省海事局は26日、海事分野を取り巻く動向や同局の取り組みをまとめたことしの「海事レポート」を公表した。巻頭記事では、海運事業者と船員養成機関や銀行・保険業などの幅広い関連産業が発注・受注などで有機的な循環を持ちながら集積する「海事クラスター」を取り上げ、海に囲まれた日本が海事クラスターの強靭化に取り組む重要性を訴えた。
レポートによると、日本が実質的に保有する船腹量は、ギリシャ、中国に次ぐ世界3位で世界シェアの10%を占める。また、日本船主が保有する船隊の資産価値は、2025年に中国にわずかに抜かれたものの、22年と24年は世界1位だった。
外航海運事業者は、株式時価総額の世界トップ10に大手3社が含まれていると言われているほか、全船種の船隊規模の世界トップ5に日本企業2社がランクインし、自動車専用船隊ランキング(隻数)のトップ10にも日本企業4社が含まれている。また、造船技術でも中国や韓国と並ぶ造船大国で、建造船の燃費評価では中・韓を上回る。世界初の商用アンモニア燃料船(タグボート)を就航させるなど、世界に先駆けてゼロエミッション船の開発・建造を行っているほか、レーダーやプロペラ、エンジンなどの舶用機器でも世界最大手のメーカーが多数存在している。
こうした背景を踏まえ、「世界的な脱炭素化の潮流や船員労働環境の改善への期待の高まりをチャンスと捉え、環境技術・自動運航技術といった新技術を新たな競争力の源泉とし、海事クラスターの強靭化を図る必要がある」と指摘した。
海事クラスターの強靭化に向けた国の主な取り組みとしては、税制措置や長期低利融資などの支援措置を講じて、外航海運事業者の国際競争力強化を図るとともに、国内海運事業者による新造船発注を促している。さらに安定的に船舶の機器を調達できるよう、生産途絶のおそれが顕在化しているエンジンやプロペラ、ソナーを特定重要物資として指定し、設備投資支援を行っている。
また、自動運航船の本格的な商用運航の実現を目指して国内制度の検討・整備を進めるとともに、国際海事機関での国際ルール策定作業を主導している。海技教育機構など船員養成ルートの強化や、多様な働き方の促進と職場環境の改善などを通じた海事人材の確保・育成にも引き続き取り組むとし、これらの取り組みなどを詳しく紹介している。
このほか、ことしは1995年に「海の日」が国民の祝日として制定されてから30年目を迎えることから、海の日の行事などを紹介する特集も組まれている。
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