イベント九州エリア初の物流専門展示会「[九州]次世代物流展」が、8、9日の2日間にわたり、マリンメッセ福岡A・B館(福岡市博多区)で開催された。初開催ながら出展は140社を超え、最新の物流課題解決策を披露。同時開催の「第2回[九州]半導体産業展」と合わせて、九州が強みとする半導体関連産業や、アジアの玄関口としての地理的優位性を意識した提案型の展示が多く見られた。来場者は開催2日間で1万人を超える見込みだ。

▲2階まで展示ブースを広げるほどの大盛況。会場を背景に、[九州]次世代物流展事務局長 森嶋勝利氏
同展示会の森嶋勝利事務局長に、開催の手応えと今後の展望について話を聞いた。森嶋氏は「物流そのものが企業戦略の中心にあることを改めて実感した」と語る。九州は陸・海・空の交通結節点としてのポテンシャルが高く、「出展者の多くが、東京や大阪では得られない“顔の見える商談”や実感を持てたと話していた。

▲開会式テープカットの様子(出所:イノベント)
土地柄もあり、来場者が一つ一つのブースで熱心に耳を傾けてくれた」と振り返る。次回は2027年2月、工場やロボット技術をテーマとした展示会と併催する形で開催予定だ。「物流と製造、ロボットはもはや切り離せない関係。現場のリアルを体感できる展示会として、より広い産業との連携を図りたい」と展望を語るとともに、「九州の産業や物流の動きを全国に伝えたい。九州で物流展が盛り上がることで、地方から日本全体の物流を変える動きにつながれば」と話し、地域発の展示会としての意義を強調した。
北九州、陸海空が結節する拠点に
2024年問題の影響が特に大きく現れている九州では、政府試算で全国平均14%に対し19%の輸送力不足が懸念されている。物流の担い手確保が難しく、長距離輸送の制約が直撃するなか、幹線輸送の再設計と中継拠点の再配置が喫緊の課題だ。
そうしたなかで北九州は、陸・海・空を結ぶモーダルミックス拠点として脚光を浴びている。海上輸送の起点となる北九州港は、フェリー・RORO航路が充実し、アジア航路を含む国際コンテナの取扱量が堅調に拡大。2024年のコンテナ貨物は52万TEUで前年比2.3%増と伸び、フェリー貨物量も過去最高を更新するなど、西日本最大級の内航拠点として成長している。東京・阪神方面への航路では大型船投入や所要時間の短縮など、輸送力の強化も進む。

▲マリンメッセ福岡周辺には、住友倉庫九州など港湾物流を支える主要拠点が立ち並ぶ
北九州空港は九州で唯一の24時間運用空港として貨物取扱量を伸ばし、滑走路延伸工事が進行中。鉄道貨物では九州貨物ターミナル駅が要となり、陸海空の結節点としての優位性を示す。こうした立地とインフラ環境が、同展の開催地としての説得力を高めている。
北九州市は「物流拠点構想」を掲げ、港湾・空港・高速道の強みを生かした産業誘致や新たな物流不動産の整備を進めている。今後も拠点開発は加速する見込みであり、次世代エネルギーや半導体、青果物流通など多様な分野で物流再構築の動きが広がっていく。人口減少や高齢化といった地方共通の課題も抱えつつ、九州は“日本の縮図”としての役割を担うようになるのではないか。
出展企業、九州市場への期待語る
会場では、省人化・効率化を実現するソリューションが並び、各社のブースには具体的な導入相談や意見交換の姿が見られた。そうした現場の熱気の中で、出展企業に、九州の来場者に訴求したい内容や、初の本展示会へ出展しての感触などを聞いた。
三井倉庫ホールディングス・サステナビリティ営業部シニアマネージャーの林剛氏は「企業間の協調や連携を促す“つなぎ役”として、優良企業同士を結ぶ提案を伝えたい」と語る。「物流コストの可視化やCO2算定など、単一のソリューションではなく最適な組み合わせを提供できるのが当社の強み」とし、異業種・異分野を横断した連携の重要性を強調した。
オプティマインド・マーケティング統括責任者の齋藤貴也氏はセミナー講演で「委託任せにされがちな物流を見直し、発荷主企業側で可視化と改善を主導していこう」と述べ、大手コンビニエンスストアや飲食チェーンなどの最新事例を紹介。「荷主主導の取り組みを広めたい」と語った。
シーネット・事業推進部マーケティング・広報部長代理の櫻井麻衣子氏は「来場者の関心が高い点として、出展してよかった。東京や大阪と比べても説明を聞く姿勢が熱心で、次回以降への期待が持てた」と九州エリアの初出展で手応えを語ってくれた。
“次世代物流モデル”を九州から
24年問題を超え、陸・海・空・人をつなぐ物流再構築の実証地として、九州が全国から注目を集める。その可能性を示した2日間となった。
北九州をはじめとする九州各地で進むモーダルミックスの動きは、今後の物流最適化の方向性を占う試金石となる。地方発のモデルが全国標準へと発展していく可能性もあり、九州の挑戦は次世代物流の現実解を示すものとして、さらなる注目を集めそうだ。
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