
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「オートストア、『AutoCase』など秋の新製品発表」(10月23日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
◇
サービス・商品AutoStore System(オートストアシステム、東京都港区)は7日、2025年秋の新製品群についての会見を開催した。これは、すでにグローバルでは発表されたものを、あらためて日本市場での動向を交えてオートストアバイスプレジデントジャパン、安高真之氏が解説するもの。
新機能の中でも安高氏が特に注目してほしいと語るのは、ケース単位の自動入出庫を実現する「AutoCase」である。入荷時の正箱ケースをそのままグリッドに保管することが可能となり、入荷プロセスでこれまで必要だったケースからバラへの容器変換が必要なくなる。ケースのままバック在庫として保管しているような現場ではバラ在庫への移行プロセスも必要なくなり、ケース保管とバラ保管を同時に高密度で行うことができる。
「オートストアが他社の製品と比較してずっと弱点と言われていた、ケースを開梱してバラに容器変換をしなきゃいけない」(安高氏)という点を克服した新機能となる。出荷用の空箱も格納し、順立てと荷合わせを行うといった使い方など、ユーザーの利用法、応用も広がる。同社では、国内に流通する一般的な正箱ケースの70%には対応できると見込み、ケースでの流通が大部分を占める日本市場への親和性も高いとする。AutoCaseは日本国内では2026年後半ごろのリリースを見込む。

▲AutoCase
また、同一グリッド内で複数サイズのビンを扱える「FlexBins」にも力を入れる。これまでのオートストアでは、S、M、Lどれか1つのサイズのビンしか対応できなかったが、新機能では3つのサイズを同時に1つのシステム内で取り扱える。これまで、MやLサイズのビンに小物を保管するしかなかった現場などでは保管能力を高めることが可能となり、「保管密度は最大15%向上」(安高氏)すると試算。また、既存のシステムを全面入れ替えすることなく、更新するだけでこの機能を利用することも特徴である。FlexBinsは、26年1月に世界同時リリースを予定する。
そのほか、冷凍施設の需要増に対応し、既存のチルド・冷凍温度帯対応ソリューション「Multi-Temperature Solution」(MTS)を拡張して、冷凍保管に特化した「MTS:Frozen-Only Grid」も発表された。足がはやいチルド製品と保存期間の長い冷凍食品を同時運用するのは非効率という声、冷凍専用システムが欲しいとの要望に応えるものとして、現在、日本市場の規格に合わせた仕様変更を行っている段階だという。
さらに、ことし春に発表した自動ピッキングソリューション「CarouselAI」の改良のほか、オートストア導入や運用コストを抑えるための新機能も追加された。防火基準に対応するスプリンクラー設置コストの低減、設置床面の平坦性を確保するためのソリューションや、ソフトウエアの更新にかかるダウンタイムを最小限に抑えるシステムも発表し、新規導入や機能更新における利便性も向上させる。

▲オートストアバイスプレジデントジャパンの安高真之氏
会見ではグローバルでの経営動向についても解説。「グローバルで見ると製造業、アパレル業界での導入数がリードしているが、最近顕著なのはgrocery、食料品領域の伸び」(安高氏)と語る。今回の冷凍専用システムの投入などにより、日本市場での成長も期待され、AutoCaseとの併用などが実装されれば、「オートストアは冷凍領域で一番効果があるシステム」(安高氏)との未来像も実現可能となる。
一方、世界規模ではリピート率50%を超えるが、日本市場だけを見ると、導入規模の小さな事例が多いことなどから世界平均に届かない実情も明かす。欧米との賃金格差や円安なども影響し、グローバルで見るとまだ日本市場への導入比率は低い現状にある。中国製など「10年前にはなかった新規参入」による自動倉庫市場の競争も激化しているが、まずは保管効率の高さでの優位性、さらに10年以上にわたって運用され続けてきた実績、ハードやソフトウエアの進化を長年続けてきたことこそ、新規参入との最大の違いと指摘する。「FlexBinsの機能追加も、実はソフトウエアの改良だけ。複雑さを排除し、シンプルで故障しないシステム」(安高氏)にこだわって、ユーザーの声に応えていくという。
同社では来年度を最後に、国内外含めて大型物流展示会への出展を行わないという方向性も示された。すでに物流分野では十分に認知されているだけに、今後は協力パートナー会社への後押しに注力し、日本市場にマッチする進化の訴求でユーザーの共感を獲得していく。
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。















