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「物流は経営の血流だ」、大手荷主が語るSCの本質

2025年11月7日 (金)

イベントLOGISTICS TODAYが7日に開催したイベント「LOGI NEXT 25 Day1」では、荷主企業3社が登壇し、物流部門が直面する課題とサプライチェーン戦略の要点を語った。

登壇したのは、トリドールホールディングスグローバルSCM本部本部長代行の梶野透氏、スギ薬局ロジスティクス統括部統括部長の北川信之氏、日清食品常務取締役事業統括本部長・ウェルビーイング推進部長の深井雅裕氏。業種は異なるものの、3氏に共通していたのは「物流はコストではなく企業価値を支える基盤」という認識だった。

梶野氏は、自社の物流の特徴として“鮮度と温度管理”を挙げた。麺やだしの品質は温度に左右されるため、「外食は物流意識が低いと思われがちだが、実際は物流品質が店舗体験を左右する」と述べた。海外展開が進むほど、国ごとに異なる規制やインフラに合わせた再設計が必要になるとし、「拡大と標準化の両立が難しくなる」と課題感を示した。

▲トリドールホールディングスグローバルSCM本部本部長代行の梶野透氏

北川氏は、ドラッグストア物流の難しさを「品目特性の幅広さ」にあると説明した。医薬品、食品、日用品が同じラインに流れ、納品精度が売上と顧客体験に直結する。店舗作業の負荷軽減も大きなテーマで、「物流の乱れは店頭の混乱につながり、クレームにも直結する」と語った。発注精度や荷姿改善など、川上から川下までの一体管理が欠かせないとした。

深井氏は、日清食品が抱える物流課題を「多様性」と表現した。需要変動が大きい即席麺市場では、効率だけを追うとリスクが増すという。「メーカーは決めすぎてしまいがちだが、不確実性が高いほど柔軟性が重要になる」と述べ、冗長性の確保と働きやすさの改善を同時に進める必要があると語った。

▲スギ薬局 ロジスティクス統括部 統括部長の北川信之氏

3氏が共通して強調したのは、物流を経営の意思決定と結びつける重要性だ。梶野氏は「オペレーション改善だけでは限界がある。SCM全体のボトルネックを把握し、投資の優先順位を明確にすべき」と指摘。北川氏は「物流KPIを経営層が理解し、現場と同じ目線で会話できる文化が必要」と述べた。深井氏も「サプライチェーンは縦につながる組織。部門横断で課題を共有し、同じ言語で議論できる状態を作らなければ全体は変わらない」と語った。

▲日清食品常務取締役事業統括本部長・ウェルビーイング推進部長の深井雅裕氏

人材面の課題も3氏に共通していた。北川氏は「物流は人手不足の影響が最も直撃する。現場の魅力をどう伝えるかが問われる」と述べ、教育やテクノロジーによる支援の必要性を示した。梶野氏は「外食の若手社員は物流の重要性を知らないことが多い。採用・研修段階から組み込むべき」と話し、深井氏も「食品の安定供給は物流ありき。現場理解が追いついていない」と部門の地位向上を訴えた。

最後に、CLO義務化が話題に上った。梶野氏は「制度ができること自体が大きな前進で、経営が物流を守るべき機能として認識する契機になる」と述べた。北川氏は、役割分担の明確化が改善を進めやすくするとし、深井氏は「制度が目的化してはいけない。現場負荷と品質のバランスをどう取るかが本質だ」と締めくくった。

物流を“経営そのもの”として捉え直す視点が3社に共通しており、サプライチェーン変革の方向性は一致していた。

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