ロジスティクス物流業界のデジタル化が加速するなか、安全管理の領域でAI(人工知能)技術の活用が注目を集めている。7日に開催した弊社主催のイベント「LOGI NEXT 25 Day1」のセッション「すべての業務車両に、AI革命を──事故ゼロ経営、今がその分岐点」では、AIドライブレコーダー(ドラレコ)の導入事例を通じて、現場の安全管理がどう変わりつつあるのかが議論された。
登壇したのは、Nauto Japan社長の赤井祐記氏、SBSロジコム常務執行役員の中藤和生氏、丸全昭和運輸理事の飯岡剛氏の3人。赤井氏は外資系IT企業で30年近く最先端テクノロジーに携わってきた経歴を持つ。同氏は「従来のドライブレコーダーは事後確認用だが、AIドラレコは脇見運転やスマートフォン操作、居眠りをリアルタイムで検知し、アラートを出す」と説明。事故を未然に防ぐ点が、従来機器との大きな違いだと強調した。

▲左からモデレーターの赤澤社長、赤井氏、中藤氏、飯岡氏
SBSロジコムは800台にAIドラレコを導入した。中藤氏は導入の背景について「事故件数が減っていなかった」と明かし、支店長から「パンドラの箱を開けるんですね」と返されたというエピソードを紹介。「ドライバーが運転中に何をしているか、ある程度分かっていた。それをあえて可視化する決断だった」と語った。会場には現場の覚悟を感じさせる緊張感が漂った。
丸全昭和運輸はトラック700台、社用車500台を運用する。飯岡氏は「スマートフォンの中毒性が高く、従来型の指導では限界があった」と語る。SNSへの投稿リスクも深刻だ。同社は2024年1月から導入を開始し、25年8月に全車両への展開を完了した。
AIドラレコは単なる監視装置ではない。飯岡氏は乗務員に「しゃべってくれるお守りだ」と説明したという。危険な運転をした時だけ画像がアップされる仕組みだ。当初は否定的だったドライバーも、今では理解を示している。
導入効果は多岐にわたる。中藤氏は「管理者が一日中カメラを見る必要がなくなった。危険な行動だけを抽出してくれるので、むしろ楽になった」と話す。飯岡氏は「過失割合が不明確な事故で、警察に動画を見せたら被害事故と判断された」と証拠としての活用例を挙げた。
丸全昭和運輸ではすでに、グループ会社や協力会社の一部でスコアを賞与に反映させている。優秀なドライバーを表彰する仕組みも始まった。SBSロジコムも将来的な人事評価への組み入れを検討中だ。
日本郵便の点呼不備問題で業界が震撼した記憶は新しい。荷主企業もCLO(物流統括管理者)選任義務化を控え、安全管理への関心を高めている。セッションの最後、飯岡氏は「運行代わりにリアルタイムでアラートが出る機能に大いに助かっている。今後も積極的に活用したい」と語った。赤井氏は「人とAIが補完し合い、安全を担保する。AIを活用した安全管理で新しいサービスも始まっている。事故ゼロ経営の第一歩が、まさに今始まっている」と力強く締めくくった。
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。















