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「第2回CLOサロン×第7回物流議論」開催、サプライチェーンの変革がテーマ

CLO体制の進展で変わる“発・着荷主”の概念

2025年11月13日 (木)

▲物流議論の様子。(手前)LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長

イベント物流課題の解決へ各領域のキーパーソンを招いて議論する「第7回 物流議論」が13日に開催された。今回はCLO(物流統括管理者)体制を支援する勉強・交流会「CLOサロン」第2回目も同時開催された。

経済産業省から平林孝之氏(商務情報政策局 商務・サービスグループ 流通政策課長兼物流企画室長)、日清食品から深井雅裕氏(常務取締役 事業統括本部長 兼 Well-being推進部長)、三菱食品から田村幸士氏(取締役常務執行役員 兼 SCM統括 兼 CLO)、イオン東北(秋田市)から波多野豊氏(経営企画本部 物流改革部部長)が登壇。野村不動産の宮地伸史郎氏(都市開発第二事業本部 物流事業部 副部長)と、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介社長兼編集長がモデレーターを務めた。

▲経産省の平林孝之氏

CLOの選任義務化が迫るなか、発荷主・着荷主という従来の役割観が大きく揺れ動いている。サプライチェーン全体を俯瞰し、垂直統合型の最適化を進める動きが広がるなかで、物流機能の再定義が避けられなくなっている。物流議論では、行政・メーカー・卸・小売、さらにデベロッパーの各立場から、サプライチェーン最適化にCLOが果たすべき役割や今後の方向性が議論された。

平林氏は、物流問題はもはや個社や単一省庁では解決できないとして、経産省、国土交通省、農林水産省の3省合同で議論を進めてきた経緯を紹介。「発荷主・着荷主の双方の立場を理解し、サプライチェーン全域を視野に入れる存在こそCLO」と強調した。

▲日清食品の深井雅裕氏

メーカー側の変化を示したのが、深井氏だ。同社はこれまで製品物流と資材物流が部門ごとに分断されていたが、調達物流リスクの顕在化を機に、全工程の可視化と統合に乗り出した。「CLOの入り口は可視化。点在していた情報をつなぎ、全体最適へ向けた対話を進める役割が必要」と述べ、垂直統合の重要性を指摘した。

小売の立場からは、イオン東北の波多野氏が東北物流の厳しい現状を語った。各社が個社最適を追求した結果、需要予測が難しく、物流の標準化も進まない現状があるという。課題解決に向けて小売事業者間の水平連携による共同物流、共同倉庫などに取り組み、互いの困りごとを可視化する環境作りに取り組む。川上に対しては、リードタイムの延長など持続可能な地方物流のあり方について検証を進める。

▲三菱食品の田村幸士氏

発・着をつなぐ卸としての立場からの取り組みを語ったのは田村氏だ。物流は品目・荷姿・運賃負担力などが業界ごとに大きく異なるとした上で、「フラグメンタルに分断されてきた物流をまとめ、つなぎ直すことがCLOの役割」と説明。これまでは“発”にばかり注目してきたが、着荷主としての立場から地方の中小メーカーの課題解決に対峙。中小メーカーのための在庫拠点を用意し、そこへ取りに行くといった物流を開始するなど、川上への働きかけを進めていることにも触れた。

デベロッパーの視点では、宮地氏が、見える化を起点とした施設開発の可能性を強調した。「1社では持てない大型投資をシェアリングする役割を果たせる」と述べ、波動吸収型倉庫や共同保管拠点の開発などによるサプライチェーン課題解決に意欲を示す。

▲野村不動産の宮地伸史郎氏

「早くからCLOとしての役割に取り組み企業ほど、サプライチェーン全体という視点を持っている」と赤澤編集長は指摘する。ますますCLO像のハードルは高くなっているとも思えるが、「あまりCLOのハードルを上げるべきではない。コツコツと積み上げていくタイプなど多様なCLO像があっていい」(深井氏)との意見も出た。

議論を通じて共有されたのは、「誰もが発荷主であり着荷主である」という視点である。着荷主として課題が見えてくると、発荷主としての顔も変わってくる。三菱食品によるメーカーの在庫拠点に取りに行く物流など、ますますこれまでの発荷主・着荷主の境界は曖昧になりつつある。サプライチェーン全体で、消費者に対してどんな価値を創造できるかが要点となり、需要予測・在庫・リスク吸収を垂直統合により一体で設計する重要性が浮き彫りになる。

イオン東北は、小売が持つ販売データに基づいたAI(人工知能)需要予測を、川上と共有していく構想も視野に入れる。地域課題に直面する東北エリアで「垂直統合のモデルを積み上げていく」(波多野氏)という。

平林氏は、こうした議論や実際の取り組みについて「フィジカルインターネットの実践的な第一歩」と評価。情報共有と全体平準化により生産性を高め、物流への投資を企業価値向上に結びつける発想への転換が必要だと述べた。

田村氏も「水平連携、垂直統合を掛け算することで、その先にあるフィジカルインターネットにつながる」と指摘する。まずCLOは、どうやってその入り口に立てばいいのか。深井氏は、「まず入り口は可視化、そこからの相互理解がすべて」と明示した。

また、後半の「第2回 CLOサロン」では、参加者・視聴者自身が議論に加わった。シグマクシスが主催するフィジカルインターネット実現に向けたコミュニティー「エコオケの会」運営により、サプライチェーンの垂直統合をテーマに分科会で議論を深めた。標準化実装への課題や、物流費の分離、共同化といったテーマに関して、参加者それぞれの実体験に基づく課題感や疑問、提案など活発な議論が行われた。今回リアル参加だけではなく、オンライン参加者のためのディスカッションルームも用意され、改正物効法やトラック新法の影響を議題に意見を交わすなど、CLOに必要な相互理解の下地が醸成される機会となった。

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