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EV電池需要にも対応、HAZMAT拠点として存在感

プロロジスが古河で示す、危険品・一般品の一体運用

2025年12月1日 (月)

話題茨城県古河市で展開が進む「プロロジスパーク古河」が、国内有数の危険物保管拠点として存在感を高めている。既存の「古河6」に続き、現在建設中の「古河7」では10棟のHAZMAT(ハズマット、危険物)倉庫が来年2月の完成を控える。プロロジスが次々に危険物倉庫を建設するのはそれ自体の需要が高いということもあるが、併設されている一般倉庫と一体運用できることにも大きな需要があるようだ。同社に開発の狙いを取材した。

プロロジス開発部の佐藤英征部長は、古河に危険物需要が集中する理由を「工業専用地域であることが最も大きい。ほかでは保管容量の規制が厳しく、これだけのHAZMAT棟をまとめて建てられる適地は非常に限られる」と説明する。準工業地域では危険物の保管容量が指定数量の50倍までに制限される一方、工業地域、工業専用地域では200倍を超える保管が可能なため、需要増に応えられる希少な“器”になっている。

▲プロロジス開発部の佐藤英征部長

工業専用地域という条件が特殊用途の集積を後押し

プロロジスパーク古河は、フェーズ1(古河1-古河3)、フェーズ2(古河4以降)で構成される。医薬品、化学品、危険物、温度管理など特殊用途の倉庫が開発初期から集まった背景について、佐藤氏は「希少な工業専用地域であり、危険物を扱うための立地条件が整っていた」と説明する。そのうえで、古河周辺には化学・エアゾール系を中心に工場が点在しており、「工場のそばに物流拠点を置きたいというニーズは実際に強い。茨城県八千代町や栃木の小山市、野木町などからも、既存工場に近い古河4へ移転・拡大移転したいという相談がある」と話す。

▲(右下)HAZMAT倉庫10棟からなる「古河7」(26年2月竣工予定)

製造地からの輸送距離を短くできる点に加え、製品を一旦大型倉庫に貯めて各拠点へ配送する運用が取りやすいことも理由で、「配送地に極端に近い必要はなく、むしろ工場隣接の大型倉庫を求める動きの方が強い」と佐藤氏は指摘する。こうした工場近接の利点と、工業専用地域ならではの危険物対応力が重なり、古河は特殊用途の需要を継続的に吸収してきた。

古河6では危険物を“一括吸収”、8棟すべてが一社利用に

古河6のHAZMAT倉庫(8棟)は竣工と同時に大手3PLが全棟を借り上げた。スプレー缶や化粧品など、完成品ながら危険物に該当する商材は需要の拡大とともに増え、従来は複数拠点に分散していたのを集約するためだ。

▲HAZMAT倉庫8棟からなる「古河6」

荷主企業が倉庫集約を打ち出した背景には、在庫が複数の危険物倉庫に分散し、管理が複雑化していた事情がある。佐藤氏は「在庫が散らばると管理が煩雑になり、拠点間横持ちも大きな負担になる。危険物をまとめて扱える場所が実質的に古河6しかなかった」と振り返る。危険物を大量かつ一体的に扱える物件は希少で、工業専用地域という立地条件も相まって、古河6は候補地として際立っていた。同案件では危険物と一緒に管理できることから、古河4の一般倉庫へも入居となった。

危険物と一般品を同一エリア内で組み合わせて運用するモデルは、ドライ倉庫に危険物倉庫を併設する古河4でも行われている。アース製薬は物流オペレーションを担うロジコア(物流事業者)を通じて古河4の一般品倉庫と危険物倉庫を併せて利用しており、佐藤氏は「ロジコアが古河4で行っているように、危険物と一般品の一体運営が現実的に成立している」と説明する。危険物倉庫だけでなく、天高のある一般倉庫を併設することで在庫の波動吸収や仕分けがしやすく、運用の幅がある点が評価されている。

▲大型マルチテナント型物流施設「古河4」、左下に見えるのが併設型HAZMAT倉庫

プロロジスはこうした実例を踏まえ、古河4と古河7を組み合わせて機能を統合させる提案を荷主企業に行っている。佐藤氏は「危険物だけでなく一般品まで一体で運用できるのが古河の特徴。拠点を再構築したい企業にとって、機能をまとめて移せる点は大きな利点になる」と語る。

こうした一体運用の強みと、危険物を大量に扱える工業専用地域という立地条件が重なり、荷主企業は危険物在庫を古河6へ集約する判断を下した。佐藤氏は「都心からの距離を踏まえても、在庫一元化の効果の方が大きいという判断だった」と振り返る。それまでの複数の拠点に分散していたときは、拠点ごとに各々のオペレーションを行っており、物流の管理が煩雑になっていた。さらに、横持ちでコストがかかるなどの課題もあったが、一般品、危険品を集約することで管理コストも輸送コストも軽減され、効率化されたのだという。

古河7ではHAZMAT倉庫10棟を建設

2026年2月に完成予定の古河7は、平屋10棟の大型HAZMAT倉庫群で、数量規制や需要変動に応じて柔軟にレイアウトを組める構造になっている。古河6で顕在化した需要を受けての建設だが、現時点ではプロロジスパーク古河7のHAZMAT倉庫棟のみでの賃貸は行っていない。

佐藤氏は「古河4のドライ倉庫と一体で使ってもらうことに価値がある。危険物と一般品を近接運用できることで、オペレーション効率が大きく変わる」と述べる。古河4は梁下6.3メートルから最高8.6メートルという高天井区画が特徴だ。既存テナントはラック4段を組んで天高を使い切っており、高さを生かせば収納効率は高い。佐藤氏も「想定以上に天高が効いた」と評価する。

▲(右下)HAZMAT倉庫10棟からなる「古河7」(26年2月竣工予定)

危険物需要の将来を見据える古河の強み

消防法改正でリチウムイオン電池(LiB)の保管方法が拡張され、倉庫の対応力が問われるなか、プロロジスは古河4の高天井を生かした運用に早くから着目していた。新基準では、専用容器に格納する方式に加え、遮蔽板や通路幅、天井との離隔を確保した一般倉庫での保管も認められた。古河4では天高が6.3メートルから8.6メートルまで確保されており、佐藤氏は「LiBを一般倉庫で保管する際は、天井との間に2メートルのスペースが必要だが、この天高なら対応は容易。従来想定していなかった用途にも広がっている」と説明する。

プロロジスはロジスティードが開発したLIB保管容器「LIB-CON」(リブコン)を取り扱っており、古河消防署と実機を用いた適合確認まで進めている。こうした対応により、古河ではHAZMAT倉庫で扱う方法だけでなく、一般倉庫でリブコンを用いたり天高を生かした管理など、複数の運用方式を荷主が選択できる環境が整っている。

古河7に続く古河8は平面区画の自由度が高い2万9700平方メートルのBTS用地。荷主の要望に応じた拠点づくりの余地が大きい。天井高をさらに高めてLiB向けの仕様にすることもでき、ドライ棟とHAZMAT棟を同一敷地内でセット化するプランも可能だ。佐藤氏は「危険物と一般品を同じ敷地で完結できるような複合拠点も、古河なら十分実現できる」と語り、さらに三和建設の危険物建築の実績が拠点設計の幅を広げていると評価する。医薬品、危険物、一般品、温度管理、大型自動倉庫など、多用途を一地区で組み合わせられる開発地は国内でも稀少だ。

しかし一方で、物流を専門としない荷主企業にとっては、拠点構成をどう最適化すべきか判断が難しい面がある。BTSの自由度が高いと言っても、ではどのような拠点として設計するのかの判断は迷わざるを得ない。そうした企業に対してプロロジスが提供しているのは、設計段階からの支援だ。佐藤氏は「古河4と古河7をどう組み合わせるべきか、あるいはBTSで建てるべきか、荷主企業では判断できないケースは非常に多いはず」と話す。そのため、プロロジス内のコンサルティング部門や外部パートナーと連携し、輸送費・保管費・人的負荷などを総合的に試算し、最適な配置モデルを提示するのだという。

「今の拠点からどう変えたらトータルで物流がどう改善するか。物流のプロではない荷主企業だけで試算するのは難しい。データを預けてもらえれば、物流再構築の可能性を一緒に検証できる」と佐藤氏は説明する。こうした“定量的な根拠をもとにした再配置提案”は、これまでバラバラに管理されていた危険物と一般品を集約できる古河だからこそ大きな効果が望めるし、CLO制度を見据えた拠点再編の動きにも合致している。また、こうしたコンサルティングは、プロロジスパーク入居カスタマーにはもちろん、入居していない企業にも提供可能だという。

プロロジスパーク古河は、危険物・一般品・EV電池・医薬品といった多様な荷姿に同一エリアで応えられる、国内でも稀少な総合ロジスティクス拠点へと進化している。工業専用地域という立地条件により大容量の危険物を扱える点に加え、古河4のドライ倉庫、古河6・7のHAZMAT棟、BTS対応の古河8を組み合わせた設計自由度が、荷主に“拠点の丸ごと再構築”という選択肢を与えている。

さらに、プロロジス自身が拠点配置やコスト試算まで踏み込むコンサルティングを行うことで、CLO制度施行後に想定されるネットワーク再編ニーズとも合致し、単なる倉庫群を超えた価値を形成している。危険物と一般品を敷地単位で統合運用できるプロロジスパーク古河は、新しい物流拠点のあり方を示す存在として、今後さらに重要度を増していくはずだ。

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