ロジスティクス本誌編集部の記者たちが今週注目した物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。12月13日から19日までのトピックを整理してみましょう。
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JR貨物、3月ダイヤ改正で主要幹線の輸送力拡大
日本貨物鉄道(JR貨物)は2026年3月のダイヤ改正で、主要幹線の輸送力を大幅に拡大する。東京貨物ターミナル発・大阪貨物ターミナル着の列車では、12フィートコンテナ換算で輸送力を従来の95個から220個へと引き上げ、倍以上とする。東海道・山陽幹線を中心に編成両数の増加や輸送枠の拡充を進め、モーダルシフトの受け皿としての機能強化を図る。トラックドライバー不足や環境負荷低減といった課題を背景に、鉄道貨物の利用拡大につなげたい考えだ。
記者A「3月のダイヤ改正で輸送力をかなり増やすという話だけど、どう思った?」
記者C「数字を見て、これはかなり思い切ったなと感じた。東京-大阪の主要区間で、12フィートコンテナ換算が95個から220個になる。単純に倍以上なので、まずは運べる量を一気に増やすというメッセージははっきりしていると思う」
記者B「モーダルシフトがなかなか進まないと言われ続けてきたなかで、物理的な制約を一つ外しにきた、という見方はできそうだよね」
記者A「鉄道は本来、日本の国土構造には合っている輸送手段だと思う。ただ、現場からは使いにくいという声もよく聞く」
記者B「環境面では優位性があるし、縦に長い国土という点でも向いている。ただ、発着地のインフラや前後の集配を含めたトータルの使い勝手は、まだ課題が残っていると思う」
記者C「トラックのように、今すぐここからここへという使い方は難しい。ただ、定期便としてしっかり組み込む前提で考えれば、利用が広がる余地はあるとも感じる」
記者B「これまでJR貨物は、営業はフォワーダー任せだったけど、それが鉄道利用の広がりを阻んできた一因だと思う」
記者A「私も展示会でJR貨物のブースに行ったことがあるけど、利用方法を聞こうとすると、そのままNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)の担当者に引き渡される、という場面があった」
記者C「ただ最近は、JR貨物自身が直接営業を強化しようという動きも見え始めているし、今回の輸送力拡大も、そうした危機感の表れなのかもしれないね」
記者B「国鉄分割民営化の経緯を考えると、貨物は人材や商売の面で不利な立場からスタートしたのは事実だ。その意味では、今回のダイヤ改正は、改めて自分たちで需要を取りにいこうとする姿勢とも読める」
記者A「輸送力を増やすだけで終わるのか、その先でどう需要を掘り起こせるのか。そこまで踏み込めるかどうかが、今回の改正の評価を分けそうだね」
長瀬産業と日本通運、インドで半導体関連物流を強化
記者A「次はインドの記事だね。長瀬産業と日通が組んで、インドで半導体関連を強化するという話」
記者B「インドの話題がここまで続くということは、やはりそれだけ注目度が高いということなのだと思う」
記者A「インド進出の話は、ここ数年ずっと続いている感じがあるよね」
記者B「そう。いわゆるインドブームという言い方もあるけど、今回の記事を読んで、改めてこの流れはまだ続いていると感じた。しかも今回は半導体関連という点が大きい」
記者A「半導体だと、物流に求められるレベルもかなり高いよね」
記者B「その通りで、半導体は危険物とは違うけれど、温度や湿度、クリーン環境など、かなり繊細な管理が求められる。長瀬は化学品や危険物も扱ってきた会社だし、そのノウハウをどう生かすのかは気になるところだ」
記者C「個人的には、そうした品質管理を本当にインドで回し切れるのか、という点が一番気になった。もちろん、できる前提で進めているのだろうけど、現場でどう担保するのかは簡単ではない」
記者A「日通と長瀬の組み合わせについては、どう?」
記者B「日通が入ることで、輸送だけでなく現地調達やSC全体の組み立てまで視野に入ってくる。そのなかで、インドの現地企業をどう巻き込んでいくのかは見どころだね」
記者A「経済安全保障の文脈でインドが語られることも多いけど、その点はどうかな」
記者B「政治的な意味合いは確かにあるけど、最終的には経済活動だと思う。拠点を動かすにしても、採算が合わなければ続かない。どのくらいの期間で回収を見込んでいるのか、そのあたりは取材で確認したいね」
記者C「中国での事業経験も長い企業だからこそ、インドで何をどう変えるのかは注目したい。単なる拠点分散なのか、それとも本気で腰を据えていくのかで、意味合いはかなり変わってくる」
記者A「インド進出という言葉だけを見ると既視感もあるけれど、中身を見ると難易度はかなり高い。だからこそ、今後の動きは継続して追っていきたいテーマだね」
ゆうパック、チルド商品の温度帯を見直し、既存商品は当面据え置き
記者A「次は、ゆうパックの記事だね。チルド商品の温度帯を見直すという話があったけど、一部は以前の温度帯で対応しますという話」
記者C「率直に言うと、かなり驚いた。0-5度帯から0-10度帯に変えるというのは、商品によっては影響が大きい。そこを一律で変えるのは、なかなか思い切った判断ではあったけれど、やっぱり一部は引き続き0-5度対応します、というのはどうなんだろうね」
記者C「新規は0-10度、既存は0-5度を維持するというのは、正直かなり分かりにくい」
記者B「背景を聞くと、相当な綱引きがあったのだと思う。地域によっては扱っている品目により反発が強くて、簡単には切り替えられなかったという話もある」
記者A「全国のカタログ商品を扱っているだけに、調整は大変そうだよね」
記者B「そう。ふるさと納税や地域産品も含めて、温度管理にシビアな商品が多い。結果として、全体としては少し曖昧な落としどころになってしまった印象はある」
記者C「一方で、0-10度にすることでコスト面は楽になるはずだし、他社と足並みをそろえるという考え方も分かる」
記者A「ただ、0-5度帯を維持できるなら、それを強みにするという選択肢もありそうだよね」
記者C「他社では運べない商品を運べる、という打ち出し方はできると思う。そこをセールスポイントにするという考え方も、なくはない」
記者B「ただ、日本郵便は冷凍分野が強いわけではなく、これまで外部委託に頼ってきた部分もある。その制約の中で考えると、今回の判断は現実的という面もあるんだよね」
記者A「ニュースとして見ると、かなり正直に事情を出してきた印象もある」
記者C「確かに、個別対応で静かにやることもできたはずなのに、あえて表に出した。その意味では、業界の事情が透けて見える記事だったと思う」
記者A「温度帯の変更そのもの以上に、全国一律サービスをどう維持するのか、採算と品質をどう両立させるのか。そうした日本郵便の悩みが見える話だったね」
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